そもそも正気の沙汰ではない作戦計画だったので、実行自体が無理だったとは思いますけど
マッカーサーの構想していた計画というのは、よく言われているような『中国東北部(に原爆を投下する』という単純なものではありませんでした。
原爆投下そのものを計画していたというより、
「原爆の戦術的使用を含めた全力攻撃」
を主張していたんです。
具体的にいうと、まず北朝鮮及び中国東北部に50個もの原子爆弾を投下して中国軍、北朝鮮軍に一定の打撃を与えた後に、放射能廃棄物の障害物を敷設して北朝鮮に侵攻するというのが、そのプランでした。
出典:マイケル・シャラー『マッカーサーの時代』P343~344
また、鴨緑江に沿って核廃棄物を空中から散布し、中国と北朝鮮の連絡路を遮断し、しかるのちに北朝鮮内に孤立した共産軍30万人を国連軍・韓国軍と蒋介石の中華民国軍で包囲殲滅するという構想も持っていたようです。
しかし、だとするとマッカーサーは放射能廃棄物とやらを航空機で散布できると思っていたということになるわけですけど、そんなことが、そもそも可能だったのでしょうか?
仮に散布できたとしても、その被害にあうのは中国軍と北朝鮮軍だけではなく、同じ戦場で戦う「国連軍」などにも当然及んだわけですから、真面目に考えても正気の沙汰ではないとしか思えません。
なお、マッカーサーは(おそらく李承晩も)中国軍が朝鮮戦争に介入して来るなどということは予想すらしていませんでした。
また、後にマッカーサーがあまりにソ連の参戦の可能性を否定する証言を繰り返していたために、アメリカ本国でも民主党のブライアン・マクマーン上院議員(民主党)が
「あなたにはそう信じる権利があるが、もし間違っていたらどうするのか。あなたは中共も参戦しないと確信していたのではないのか」
とたたみかけると、マッカーサーは
「わたしは「中国の参戦は」ないと思った」
と、その甘い見通しを認めざるを得ませんでした。
さらにマクマーンが
「将軍はアメリカと連合国が西ヨーロッパでソ連軍の攻撃に耐えられると思うか」
と質問すると
マッカーサーは「わたしの責任地域以外のことにわたしを巻き込まないように、グローバルな防衛に関するわたしの見解はここで証言すべきことではない」
と述べるにとどまりました。
さらに同じ民主党の後年大統領にもなったリンドン・ジョンソン上院議員が
「中国軍が鴨緑江の北へ追いやられた場合、彼らは再び攻撃してくるだろうか?」
と追及した際にも
マッカーサーは「中国軍が再び朝鮮にはいるとは思わない」
と答えるのがやっとでした。
出典:デイヴイット・ハルバ―スタム著『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争(下)』P480~481
マッカーサーが、いかにいい加減な見通しだったのか、よくわかると思います。
ちなみにホワイトハウスもペンタゴンも今までの実績から、例え満州や中国の工業地帯を空爆しようが、空爆だけで中国を屈服させることはできないと確信しており、また、空軍参謀総長ホイト・ヴァンデンバーグも、もし満州や中国本土への空爆を行えば、戦闘損失や自然損失で膨大な航空機を喪失する事は確実であり、その後空軍力を回復するのに2年を要するが、その間ヨーロッパの制空権はソ連に奪われてしまうと進言しています。
それに中国の工場をいくら破壊しても、ソ連が生き残っていれば、中国は鉄道でソ連から援助物資を受け取る事ができるとも分析していました。
出典:マシュー・リッジウェイ著『朝鮮戦争』P175
なおネットでは
>ソ連崩壊後の情報公開で当時ソ連政府は朝鮮戦争に参戦しないと決めていた事が判明、
→という自分に都合がいい部分だけを切り取って発言している方がいますが、正確には
【『本格的な』介入をする予定がなかった】
です。
逆にソ連は介入は既に行っていました。
http://www.asahi.com/sp/topics/word/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%88%A6%E4%BA%89.html
>旧ソ連公文書の各種の分析によると、ソ連軍は朝鮮戦争の全期間中に計12航空師団、約7万2千人を投入。最大時で約2万5千〜2万6千人のソ連兵が参戦した。ソ連人パイロットは計約6万3千回出撃、空中戦は約1400回に及び、敵機約1100機を撃墜。ソ連人パイロットの航空機は335機が撃墜された。ソ連兵らは、中国人や北朝鮮人のパイロットの教育や通信機器の操作法なども支援した。
→このソ連空軍がいなかったら、朝鮮戦争において北朝鮮側は容易く制空権を国連軍側に制されてしまったはずです。
なお『ソ連空軍、極秘の参戦 朝鮮戦争60年、隠された真実』(朝日新聞SELECT)によると、ソ連空軍は朝鮮戦争参戦の全期間中に述べ12飛行団、72,000名、ピーク時で26,000名が戦争に参加しており、合計63,000回出撃し1,400回の空戦をこなしたそうです。
この状態でもし、米軍による満州空爆があったなら、秘密裏に参加していたソ連空軍にも大量の死者が出ていたことは確実。
そしてソ連が無傷でいる以上、中国が朝鮮半島から手を引くことは事実上できませんでしたから、間違いなく戦線は膠着状態に陥りますし
多数の原爆を投下された中国側は、逆に北朝鮮になだれ込みゲリラ化した可能性もあります。
そして、ソ連側としては、アメリカの原爆投下により自国の空軍兵士たちに多大な犠牲を強いられて黙っているわけにはいきません。
結局のところ、アメリカ本国が危惧していた通りヨーロッパ戦線でもソ連軍が行動に出た可能性は高く
否応なしに第三次世界大戦後に突入していったでしょう。
そもそも仮に北朝鮮、中国が壊滅したとしたら、大量の武装難民が日本に向けて押し寄せます。
あと、当時のソ連は原爆も実用化していましたし、日本は朝鮮戦争における国連軍(実質的にはアメリカ主導の多国籍軍)の補給基地が日本である、ということも熟知していました。
全面戦争になったとしたら、日本へ向けた核ミサイルが飛んでこない方が不思議でしょう。
マッカーサーの構想していた計画というのは、よく言われているような『中国東北部(に原爆を投下する』という単純なものではありませんでした。
原爆投下そのものを計画していたというより、
「原爆の戦術的使用を含めた全力攻撃」
を主張していたんです。
具体的にいうと、まず北朝鮮及び中国東北部に50個もの原子爆弾を投下して中国軍、北朝鮮軍に一定の打撃を与えた後に、放射能廃棄物の障害物を敷設して北朝鮮に侵攻するというのが、そのプランでした。
出典:マイケル・シャラー『マッカーサーの時代』P343~344
また、鴨緑江に沿って核廃棄物を空中から散布し、中国と北朝鮮の連絡路を遮断し、しかるのちに北朝鮮内に孤立した共産軍30万人を国連軍・韓国軍と蒋介石の中華民国軍で包囲殲滅するという構想も持っていたようです。
しかし、だとするとマッカーサーは放射能廃棄物とやらを航空機で散布できると思っていたということになるわけですけど、そんなことが、そもそも可能だったのでしょうか?
仮に散布できたとしても、その被害にあうのは中国軍と北朝鮮軍だけではなく、同じ戦場で戦う「国連軍」などにも当然及んだわけですから、真面目に考えても正気の沙汰ではないとしか思えません。
なお、マッカーサーは(おそらく李承晩も)中国軍が朝鮮戦争に介入して来るなどということは予想すらしていませんでした。
また、後にマッカーサーがあまりにソ連の参戦の可能性を否定する証言を繰り返していたために、アメリカ本国でも民主党のブライアン・マクマーン上院議員(民主党)が
「あなたにはそう信じる権利があるが、もし間違っていたらどうするのか。あなたは中共も参戦しないと確信していたのではないのか」
とたたみかけると、マッカーサーは
「わたしは「中国の参戦は」ないと思った」
と、その甘い見通しを認めざるを得ませんでした。
さらにマクマーンが
「将軍はアメリカと連合国が西ヨーロッパでソ連軍の攻撃に耐えられると思うか」
と質問すると
マッカーサーは「わたしの責任地域以外のことにわたしを巻き込まないように、グローバルな防衛に関するわたしの見解はここで証言すべきことではない」
と述べるにとどまりました。
さらに同じ民主党の後年大統領にもなったリンドン・ジョンソン上院議員が
「中国軍が鴨緑江の北へ追いやられた場合、彼らは再び攻撃してくるだろうか?」
と追及した際にも
マッカーサーは「中国軍が再び朝鮮にはいるとは思わない」
と答えるのがやっとでした。
出典:デイヴイット・ハルバ―スタム著『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争(下)』P480~481
マッカーサーが、いかにいい加減な見通しだったのか、よくわかると思います。
ちなみにホワイトハウスもペンタゴンも今までの実績から、例え満州や中国の工業地帯を空爆しようが、空爆だけで中国を屈服させることはできないと確信しており、また、空軍参謀総長ホイト・ヴァンデンバーグも、もし満州や中国本土への空爆を行えば、戦闘損失や自然損失で膨大な航空機を喪失する事は確実であり、その後空軍力を回復するのに2年を要するが、その間ヨーロッパの制空権はソ連に奪われてしまうと進言しています。
それに中国の工場をいくら破壊しても、ソ連が生き残っていれば、中国は鉄道でソ連から援助物資を受け取る事ができるとも分析していました。
出典:マシュー・リッジウェイ著『朝鮮戦争』P175
なおネットでは
>ソ連崩壊後の情報公開で当時ソ連政府は朝鮮戦争に参戦しないと決めていた事が判明、
→という自分に都合がいい部分だけを切り取って発言している方がいますが、正確には
【『本格的な』介入をする予定がなかった】
です。
逆にソ連は介入は既に行っていました。
http://www.asahi.com/sp/topics/word/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%88%A6%E4%BA%89.html
>旧ソ連公文書の各種の分析によると、ソ連軍は朝鮮戦争の全期間中に計12航空師団、約7万2千人を投入。最大時で約2万5千〜2万6千人のソ連兵が参戦した。ソ連人パイロットは計約6万3千回出撃、空中戦は約1400回に及び、敵機約1100機を撃墜。ソ連人パイロットの航空機は335機が撃墜された。ソ連兵らは、中国人や北朝鮮人のパイロットの教育や通信機器の操作法なども支援した。
→このソ連空軍がいなかったら、朝鮮戦争において北朝鮮側は容易く制空権を国連軍側に制されてしまったはずです。
なお『ソ連空軍、極秘の参戦 朝鮮戦争60年、隠された真実』(朝日新聞SELECT)によると、ソ連空軍は朝鮮戦争参戦の全期間中に述べ12飛行団、72,000名、ピーク時で26,000名が戦争に参加しており、合計63,000回出撃し1,400回の空戦をこなしたそうです。
この状態でもし、米軍による満州空爆があったなら、秘密裏に参加していたソ連空軍にも大量の死者が出ていたことは確実。
そしてソ連が無傷でいる以上、中国が朝鮮半島から手を引くことは事実上できませんでしたから、間違いなく戦線は膠着状態に陥りますし
多数の原爆を投下された中国側は、逆に北朝鮮になだれ込みゲリラ化した可能性もあります。
そして、ソ連側としては、アメリカの原爆投下により自国の空軍兵士たちに多大な犠牲を強いられて黙っているわけにはいきません。
結局のところ、アメリカ本国が危惧していた通りヨーロッパ戦線でもソ連軍が行動に出た可能性は高く
否応なしに第三次世界大戦後に突入していったでしょう。
そもそも仮に北朝鮮、中国が壊滅したとしたら、大量の武装難民が日本に向けて押し寄せます。
あと、当時のソ連は原爆も実用化していましたし、日本は朝鮮戦争における国連軍(実質的にはアメリカ主導の多国籍軍)の補給基地が日本である、ということも熟知していました。
全面戦争になったとしたら、日本へ向けた核ミサイルが飛んでこない方が不思議でしょう。