小生今日は一日中図面を折っていた。
 
 
各工事の竣工が押し迫った為、大量の竣工図面が生産されたのだ。
 
 
図面折りなどといった雑用は
会社という生態系の最下層、
つまりは食物連鎖の原点にあたる小生の仕事である。
 
 
昼になっても、
 
夕方になっても、
 
残業になっても、
 
時には自分の信念すら折り曲げて
 
ひたすらストイックに図面を折り続ける小生。
 
その枚数は約70枚
 
総距離150m以上である。
 
 
剥き甘栗を剥いている女性達はこんな気持ちなのだと身を持って体験しながらも内職を続ける。
 
 
指紋が薄くなるまで折り続けた結果、ついには小生職人の域にまで達する。
 
 
もしもTVチャンピオンに図面折り対決があるならば優勝して
 
『図面折りは小生の人生です!』
 
と喋ってしまいそうな勢いである。
 
 
 
今ならカンヌ映画祭の赤絨毯ですら綺麗に折り畳めそうである。
小生今朝も夜間作業であった。
 
 
しかし工程が遅れ、今晩も同じ現場で作業する事になった。
 
 
そこで急遽“夜間作業のお知らせ”を配る事にした。
 
 
しかしながら小生、作業服でヘルメットにキャップランプ、さらにネックウォーマーで口元を隠しているという服装。
 
 
目玉のつながっている警官に見つかろうものなら即射殺されてもおかしくない格好である。
 
 
 
お知らせを各家庭に配る為、深夜の街を徘徊する小生。
 
 
これではまるで
 
『闇に紛れて生きるナントカ人間』
 
のようである。
 
 
無事任務を終えた小生。
 
今日の作業はパンチングという機械を使っての鋼材加工を行なった。
 
 
このパンチング、鋼材に穴を開ける際激しい金属音がする。
 
知らない人が聞いたら銃声音だと思うだろう。
 
 
 
今日の現場付近にはとてもカタギとは思えないような豪邸がある。
 
 
いつ
 
『きさんら何処の鉄砲玉じゃー!』
 
とドスを持った鉄砲玉に襲われるかとヒヤヒヤだった。
 
 
そして件の家の前での鋼材加工。
 
 
『パーン!!』
 
加工時の金属音が辺りに響く。
 
 
突如家に明かりが灯る。
 
 
全員に緊張が走る。
 
しばしの静寂。
 
 
……どうやら小生九死に一生を得たようだ。
 
 
しかし一瞬浮かんだあのシルエット。
 
短く刈った頭に長いモミアゲ、太い眉、そしてスナイパーライフルに葉巻……
 
 
 
ひょっとしたらそこにはあの暗殺者がいたのかも知れない……
小生昔母に“ドクダミ茶”なる液体を飲まされていた。
 
 
味はというと、まさに“毒”である。
 
 
草本来の灰汁、臭味、苦味等、短所だけを押し固め液化したような味である。
 
何より匂いが強烈である。
 
この匂いを嗅いだ後なら青汁ですらフルーティーに感じるだろう。
 
 
そもそもこの草本当に“ドクダミ草”かすら危うい。
 
母が実家の前の空き家からかってに採取してきたものである。
 
 
しかもその空き家、住民はいないくせに猫がたくさん潜んでおり、いわくつきの場所である。
 
 
そんな場所から密猟してきた草がまともなはずが無い。
 
 
きっと魔女の薬草なのだろう。
 
まさにエリクサーとでも言うべき液体。
 
 
 
小生一度膝の靱帯を切った事が有る。
 
 
膝に血が溜まって当社比1.5倍程まで膨れ上がってしまった。
 
 
血が抜けたら手術をするという事で二、三週間様子を見る事に。
 
いざ手術をしようとしてみたら、何と靱帯が繋がりかけていたという。
 
 
医者もビックリの超再生である。
 
 
しかし魔女の秘薬にはそれなりの代償があるはず。
 
 
きっと小生の体液はピッコロさんの血のような色であろう。
 
 
 
小生“早く人間になりたい”ので、少しでも血が赤く近づくように今日からトマトジュースを飲もうと思う。