五反田団「偉大なる生活の冒険」@こまばアゴラ劇場

作・演出/前田司郎

出演/男:前田司郎、女:内田慈、妹:石橋亜希子(青年団)、田辺:安倍健太郎(青年団)、彼女:中川幸子


【評価】★★★~★★★★

五反田団、という劇団名をたまに耳にしていて、

どんな芝居をするのか気になっていた劇団。

知人に誘われて観にいく。

こまばアゴラに、お客さんがぎゅうぎゅう。かなりの大入り。

ひさしぶりに小劇場っぽい小劇場に入った。


モト彼女の家に転がり込んで、拾ったファミコンでゲーム&ゴロ寝生活を送る30男(カメラマン志望)と

スーパーの惣菜売り場で働く彼女(スーパーの上司と不倫中)の物語。


んもう、とにかく男がダメダメでまずイラッとする(笑)

仕事をがっつりはじめてから、ますますこういう手合いの「自分で自分の面倒を見れない人」に

苛立ちを覚えてしまう私。

「仕事しないの?」と尋ね「早く出て行って!」と怒る彼女をのらりくらりとかわし

「なんかさぁ……このままなんとかなるんじゃないかなぁって思うんだよねー」とのたまう。

男と女の会話に、冒頭から結構客席に笑いが起こっているのにビックリ。

なんだろう、彼の発言がいちいちダメダメすぎて、

もはや面白いって感じなのかな。

私も途中からは笑えたけど。

隣人や、彼の死んでしまった妹との会話も

最後まで淡々と進む。

ラスト、表情だけでオチを作った男と女に、底力を感じた。


とことん、会話劇。

役者が激しく動くこともなければ、ドラマチックな台詞回しがあるわけでもない。

見せ場が「ない」のに、それでも観客をちゃんとひきつけられるのは、

間違いなく役者の力量があるからだと思う。

会話が生むドラマ。

日常生活を切り取る演劇。

こういうアプローチはキライじゃない。


でも、お金を払って毎回行くか、と言われたら微妙だな……(私的な意見です)。

1500円というチケット代は、ちょうどいい感じ。

たまに観にいきたくなる、のかもしれない。

ゆる~い感じ。

「観客に何も与えない芝居」っていうのかな。

客層は若い人が多い。固定ファンはそれなりにいる様子。

万人受けはしにくいような気がする。

真剣に必死に生きてる人が観ると、「男」役のダメダメさにキレそうになると思うもん(笑)

「身毒丸 復活」@さいたま彩の国芸術劇場

作/寺山修司、岸田理生

演出/蜷川幸雄

出演/身毒丸:藤原竜也、撫子:白石加代子、父親:品川徹、小間使い:蘭妖子、仮面売り:石井愃一、せんさく:中曽根康太


【評価】★★★★★

大学時代、一時期寺山修司にハマっていたことがある。

もともと卒論を坂口安吾で書いていて、その関係で確か読み始めたのだったけれど、

阿部公房、夢野久作なんかも並行して読んでいて、

あの当時の精神状態はなかなかイッていたような気がする。今となっては。

あの生々しい重たい空気が、魅力的。精神的にくるけどね。


なにかと話題になっていた「身毒丸」、ようやく観れた。

蜷川さんの演出には、毎回ハッとさせられる。息を潜めて観てしまう。

暗闇の中で突如鳴り出す、グラインダーの唸り声。

金属がこすれて、火花を散らす。

ゆっくりと明るくなる舞台で、有象無象の白い顔のにんげんがゆっくりと舞台奥から歩いてくる。

まるで物の怪のような妖しさ。

心の奥に潜む、いけないものをむりやり表にさらされるような苦しさが迫ってくる。


幼いころに、自分を産んで命を落とした母を慕い続ける身毒丸。

彼の父は、「家にはお父さんがいる。家にはお母さんがいる。家には子供がいる。それが家というもの」

その定理に従い、母を売る店で新しい母・撫子を買う。

馴染まない身毒、憧れていた「家」というハコの中で、世間体を守るための“母”しか求められないことに

撫子は、次第に追い詰められていく。


「家にはお父さんがいる。家にはお母さんがいる。家には子供がいる。それが家というもの」

ひと昔は当たり前だった定理。

今はあっけなく崩壊していることに、気づかされる。

当たり前が当たり前でなくなったとき、人は自由になるのか。

自由とは幸福なのか。それとも不幸になるのか。

撫子から折檻を受け逃げ出した身毒は、不思議な仮面売りに出会い

死んだ母と会える不思議な“穴”をもらう。

地の果てで出会った母は、撫子の顔をしていた。


「お前のその眼が私を追い詰める」と

撫子は激しい感情からワラ人形を使って身毒丸の眼を潰す。

その激情は憎悪か、恐怖か。

苦しみながら身毒はそのまま、姿をどこかへくらましてしまう。

真紅の照明の中、舞台中央に浮かび上がる不気味なほど大きな満月。

鬼女たちが卒塔婆に向かい、一斉に木槌を撃ち振るう様は圧巻。


数年後、父、撫子、連れ子のせんさくの3人家族が成立したころ、

突如身毒丸が姿を現し、せんさくを汚す。

家族は崩壊し、父は狂う。


そして身毒と撫子は、再び出会う。

お互いを男、女として認め合い、

新たな道行を探り始める……。


「体の芯の、昏い闇だまりに、炎。

その色は、あせてもなお

華やかな酔いを残して男……」

なんて奇麗な日本語なんだろう。

まるで詩のような。

古めかしい丁寧なセリフは、節度があって美しい。

書き留めておきたい言葉の数々に酔いしれた。


色鮮やかな着物を纏った夢幻の生き物がゆらゆらと立ち動く。

その禍々しさ、生々しさに、触れられたくないところがざわざわと音を立てる。

見たくないけれど見たい。

「KATAN DOLL」という人形を思い出した。


舞台装置が素晴らしかった! 後期寺山修司作品の舞台美術を手がけた小竹信節さんという

方の作品らしい。

ほんの50年前に、こんなすごい作品があったのか。。。



ぜひともまた再演して欲しい作品。


イキウメ「眠りのともだち」@赤坂RED/THEATER

作・演出/前川知大

出演/浜田信也、盛隆二、森下創、緒方健児、宇井タカシ、岩本幸子、日下部そう、奥瀬繁、小島聖


【評価】★★★~★★★★

イキウメは、結構初期のころから観ている劇団。

特に作・演出の前川さんは最近演劇界でも注目の人材らしくて、

ここ数回は積極的に大きめの劇場で公演を打っている。

彼自身も劇団も勝負どころ、なのかな。


不思議な人間たちが繰り広げる会話を通して描いていく、

ありえなさそうでありえそうな、「常識」からズレた世界を見せてくれるのが

面白くて好きなのだけど

今回は「眠り」のお話。

眠りというのは「層(Layer)」になっていて、そのLayerの段階が上がれば上がるほど

どんどん死に近い状態になっていくという設定。

ほんと毎回、よくこういう設定を思いつくなぁと思う。

たまたま眠りのLayer1に落ち込んでしまった女性と、その夫を軸に話が展開していく。

小島聖は、イキウメっぽい役者さんではないので最初ちょっと違和感を感じたけれど、

新鮮な空気を入れる存在になっていたと思う。

ただ、全体的に登場人物が今までになく存在感が希薄。

なんだろう、「ちょっと怖いかも、コイツ」と思わせるような

常軌を逸したぶっとんだキャラがいなくて、

物語全体にもゾクゾクするような緊迫感がないなと思った。

眠り続ける女と、彼女が目覚めるのを待ち続ける男。

それに監禁事件をからめて……っていう設定自体が、今までになく普通な感じだから

そう思えてしまうのは仕方ないのかもしれないけど。

それと、やっぱり「Layer」に関する設定がちょっと難しくて、

概要は分かるんだけど細かいところまできちんと理解できないまま

話が進んでいくのが……置いていかれる私に問題があるのか?


いつもだと前川さんの描く世界にただただ圧倒されて、引きずり込まれて、

「どうなっちゃうんだtろう」「どう終結するんだろう」ってドキドキしながら観て

観劇後は「常識ってなんなんだろう」って立ち返りたくなるような

そういう感想を持つんだけど、

今回はいつもよりアッサリとしたストーリー展開。

予想外の大どんでん返し!みたいなモノもなくて、

先を読むのがニガテな私ですら、ちょっと先のストーリー展開が読めてしまって、

肝心のラストでイマイチ盛り上がれず。

浜田信也演じる夫に共感するような終わり方だったのも新鮮だった。

共感する部分ができて、トンがった部分が少なくなったという変化が

いいことなのか悪いことなのかは分からないけれど。

個人的にはイキウメらしい「ヒリヒリするような」感覚が

観劇後に今回はあまり得られなかったのが残念。


次回は紀伊国屋ホールらしい。

どう変化していくのか、これからも見守っていこうと思う。