昔の名前で出ています・・Faron's Flamingos | 洋楽と脳の不思議ワールド

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マイナーな60年代ビートミュージック。駄洒落小話。写真と読書感想がメインのブログです。

10年以上もブログを続けていると、取り上げる音楽ジャンルは変わらないが、ブログの性格はたびたび変わる。

そもそもはマニア相手の音楽ブログだったんだよ~と何度か口にしてるので、その当時の記事を採録しよう。

2009年12月の記事だ。

日本の音楽マスコミがこうしたマイナーな世界まで取り上げるようになったのは2010年代半ば頃(多分・・推測)からなので、この当時のマニアたちとはリアルな友人関係にまで発展したケースも多い。

ただ、ほぼ全員がブログから離れてしまった。

 

いま、こうした記事を書いたところで訪ねてくる人は皆無だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マージー・シーンで一番好きなバンドはファロンズ・フラミンゴスだと何度か言及しているが、Rさんから素晴らしいクリスマス・プレゼントを頂いたのだ。
彼らが63年8月にリリースしたデビュー・シングルのオリジナル盤だ。
狂気乱舞。
心より御礼申し上げます。

 

彼らのことは1度まとめておいたので、再録しておく。
せっかく再録するのだから、もう少し詳しく書き込んでおいた。
シングルレコードを2枚しか残さなかったので、日本の音楽雑誌が触れることはないと思うからだ。
多分、まとまった形で日本語で書かれた記事もほとんどないかもしれない。彼らに関心のある方、これから関心を寄せようと思う方の参考になれば幸いだ。
まずはUの映像をご覧ください。
有名バンドなんか吹っ飛ばして彼らのファンになること間違いなしだ。

 

 

 

「再録記事」

 


リヴァプールの音楽シーンを記録した63年放映のTV番組 Beat City の映像から。

 

http://www.youtube.com/watch?v=D4yz7rsv-Gs

 

モータウン・グループ The Contours の ヒット曲 Do You Love Me をビート・サウンドにアレンジし、マージー・サイドで最初にカヴァーしたのは彼らだ。
レコード会社の意向で、デビュー・シングルB面の扱いだった。
それが彼らの不運。
同じステージでこの曲を聴いたブライアン・プール&トレメローズが、自分たちにも演らせてくれと、ライヴ終了後スコッチを一杯おごってくれたので、気前よく、歌詞とスコアを提供したところ、数週間後にはファロンズ・フラミンゴス・ヴァーションを演ったB・P&Tのレコードが大ヒット。全英1位になってしまったのだ。ついでデイヴ・クラーク・ファイヴも多少アレンジを変えてレコーディングし、さらなる大ヒット。
この曲はDC5の歌ということになってしまった。
本家のファロンズ・フラミンゴスはといえば、全く売れず、たった2枚のシングルだけで解散してしまったのだ。
結局は宣伝力のない弱小の Oriole に属したバンド(Faron's Flamingos)と、大手のレコード会社に属したバンド(Brian Pool & Tremoloes, DC5)との差といってしまえばそれだけなんだけど・・。

 

メンバーは、

 

William 'Faron' Ruffley (b/v)
Trevor Morais(ds)
Nicky Crouch(l.g/v)
Paddy Chambers(g)

 

の4人で、バンドの名付け親はキャヴァーンのD・J、 Bob Wooler 。
出発点は59年にさかのぼる。
ニッキーとトレヴァーのいたスキッフル・グループ The Hi-Hats に Mike (Robin) McPhilips という人物が加わって The Robin and The Ravens というバンドが誕生する。
61年、彼らはフランスの米軍キャンプを巡業するのだが、彼の地でヴォーカルのロビンが抜け、The Tempest Tornades(The T'Ts)というバンドにいたファロンが加わり Faron and The Crossfires と名乗る。帰国後、前述のようにボブ・ウーラーのサジェスチョンで Faron's Flamingos と改名した。61年9月のことだ。
(この T'Ts はのちに Earl Preston & The T'Ts と名乗ることになる)。
62年、再度フランスへ行き、帰国後パディ・チェンバースが加わり、63年にはベースメンバーが抜けて上記のメンバー構成になる。
ファロンがベースを弾くようになったのはこのときからだ。

 

映像でお分かりのように、ファロンは非常にエキサイティングでダイナミックなステージを展開し、聴衆の度肝を抜いている。
当時、誰も思いつかなかったサングラスにT-シャツという格好でステージに上がり、強烈なインパクトを与えたりしたそうだ。
演奏も非常にパワフルでビートがはじけている。
最初のレコーディングは Oriole のコンピ盤、This is mersey beat(スタジオじゃなく、ライヴで録音)。
で、このあと弱小の Oriole と契約し、2枚のシングルを残すことになるわけだが、ディスコグラフィーを記しておくと、

 

See If She Cares c/w Do You love Me ? Oriole 45-cb 1834 8/63
Shake Sherry c/w Give Me Time Oriole 45-CB 1867 10/63

 

ボクがマージーやモッド・サウンドに熱中していた80年代には、日本でこの時代のオリジナル盤が手に入るなんて考えられもしなかったので、オリジナル盤コレクターにはならなかったし、いまさらコレクターの仲間入りをするつもりもないが、彼らのシングル盤だけは欲しいと思っている。

 

彼らの音源はもう4曲あって、レッズさん所有の This Is Merseybeat vol. 1 に Let's Stomp と Talkin' 'Bout You, Vol.2に So Fine と Shake Sherry(シングルとは別ヴァージョンだそうだ)が収録されていて、レッズさんの記事「V.A. 解体宣言 This Is Merseybeat vol. 1」で聴けるのでぜひ聴いてみてください。
Let's Stomp は Bobby Comstock の63年の曲で、マージー・サイドでは Lee Curtis & The All Stars が63年6月にデッカから2枚目のシングルとしてリリースし、大ヒットした。
(このときのドラーマーはもちろんビートルズをクビになったピート・ベストです)。・・・興味のある方は過去記事を。
Talkin' 'Bout You はレイ・チャールズの曲で、アニマルズのヴァージョンが一番有名だと思うんだけど、ここで聴けるのはチャック・ベリーの I'm Talking About You の方。正式にはこう書くが、Talkin' 'bout you とはしょって書くこともあるので、音を聴かないとレイ・チャールスの方と勘違いしてしまう。
こちらはビートルズやストーンズもカバーしている。
ボクはレッズさんのご好意で(Uチューヴに投稿してくれたので)、ようやくフラミンゴス・ヴァアージョンを聴くことができた。この1曲だけ聴いたことがなかったので感謝である。
この曲のヴォーカルは、ファロンでなく Nicky Crouch だ。

 

http://www.youtube.com/watch?v=1xu0Nmfh5aw

 

彼らの運命を決定付けた Do You Love Me ? のA面、See If She Cares も聴けるので下記よりどうぞ。

 

http://www.youtube.com/watch?v=NjypcZ9yVII

 

ビートの利いたとてもいい曲で、レコード会社がA面にしたのもうなづける。
この曲は The Mojos が The Nomads と名乗っていた時代にメンバーの Stu James と Adrian Wilkinson
の2人によって書かれたオリジナル曲で、Mojos は半回りほど下の世代、つまりマージー第2世代だけど、Nicky Crouch はバンド解散後(バンドの解散は63年11月)、エイドリアン・ウィルキンソンの代わりにモジョズに加わっている。・・・(このバンドのことも過去に記事にしたので興味のある方はお読みください。)その後は音楽界から引退し、コンピューター・プログラマーに転身している。

 

エキサイティングでパワフルなステージといえば、マージー・サイドでは The Big Three が一番有名なんだけど、Faron と Paddy Chambers の2人は、Brian Griffiths と Johnny Gustafson が抜けたあとのビッグ・スリーにしばらく加わった。
このメンバーでシングルを1枚だけ残していて、下記。

 

Bring It On Home To Me c/o You've Got To Keep Her Under Hand Decca Dee 8552 6/64

 

Bring It On Home To Me は、デッカのコンピアルバム(64年) At The Cavern にライヴでも収録されている(このアルバムについては過去記事を参照ください)

 

パディはこのあとクラウス・ヴアマン、ギブソン・ケンプの3人で Paddy, Klaus and Gibson というバンドをつくり、パイからシングルを1枚だけ出している。下記。

 

I Wanna Know c/w I Tried Pye 7N 15906 7/65

 

一方、ファロンの方はこのあと恋人を追ってフランスへ渡り、70年代に帰国。現在もリヴァプールで音楽活動をしている。

 

Trevor Morais は The Peddlers というモッド・ジャズ系の3ピース・バンドに加わった(このバンドも素晴らしいのでUでお聴きください)。このあと、70年代はセッション・ドラマーとして活躍している。

 

 

 

この当時のマニアックなブロ友さんからの書き込み。

 

「showhannさんの書いた、マージービートに関連する詳細なストーリーがもっともっと読みたいです。

確かに関心のない方からすれば、うんざりな内容でしょうね。
関心が大有りなボクには最高の内容の記事です!」

 

「let's stompのフラミンゴズ・ヴァージョンを聴いて、The Mosquitosのライヴを連想しました。(Youtube The Mosquitos live again!-Let's Stomp!参照)

80年代のNew yorkバンドですが、ミニアルバム一枚しか出さなかったので、埋もれています。しかし、60年代の熱狂を感じさせてくれる貴重なグループでした。

いつの時代でも、マイナーな、しかし優れたバンドはいるものです。」