昭和100物語(Rの雑記帳)

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私が生まれた昭和の時代の昔話を中心に、時には平成の話も
書いていきます。時系列やジャンルを問わず完成したもの
からアップしていきますので、まさに雑記帳ということに
なります。

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 チャコと私(パート③)   

チャコと私の冬の助け合い運動

 

昔、山形のわが家では雌犬のペス(多分コリーの雑種、顔が細くて長かった)と、雌猫のチャコ(完璧な雑種!)を飼っていた。さてどちらが冬の寒さに強かっただろうか? 間違いなくペスの圧勝だったと記憶している。

 

一見して同じような毛皮をまとっているのにどうしてあんなにも寒さに対する耐性が違ったのだろうか? 

 

少々の吹雪などものともせず元気一杯外を駆け回るペスに比べ、チャコは見ていて情けなくなるほどストーブの前やこたつの中で丸くなりだらけきっていた。

 

◇チャコが今夜もやってきた

 

深々と雪が降り続く冬の夜、私もそろそろ寝ようかとする深夜12時頃、階段をトントンとのぼってくる微かな足音が聞こえてくる。

 

チャコが今夜も私の部屋の前にやってきた。

 

戸を早く開けてくれとチャコがニャーニャーと鳴いている。開けるやいなや待ってましたとばかりに部屋に飛び込み、頭からグイグイと私の布団の中に潜り込む。

 

私のわき腹と右腕の間に自分の身体を押し込みポジションをしっかりと確保する。私の腕が不自然な形に曲がって煩わしいが仕方がない。

 

自分の寝場所を確保すると早速就寝前の毛づくろいが始まる。

 

多少は私にも申し訳ないと思っているのか、時々私のパジャマや手も申し訳程度に舐めてくれる。素肌にチャコの舌が当たるとザラザラしていてちょっと痛い。同じ舐められるのでも猫と犬の舌は全く違う。犬はツルツルしていて全く痛くない。

 

そうこうしているうちに私もチャコもほぼ同じタイミングで深い眠りに落ちる。豆炭アンカの人工的な暖かさとは違う、生き物の自然な温もりが心地よい。特に猫の体温は人間よりちょっぴり高いから私にとっては

有り難い。多分チャコも同じように思っているのだろう。お互いが適温のアンカのような感じだったのだと思う。猫も結構いびきをかくからちょっとうるさいが仕方がない。

 

これは間違いなくチャコと私の冬の助け合い運動のようなものだなあと思いながら二匹(?)は眠りに就く。

 

そろそろ夜も明けはじめる5時頃になると大体チャコが先に目覚める。ここからが私には理解できない猫の習性だった。

 

こうして毎晩私と体を密着させて寝ているのだからいわば家族、または仲間意識のような連帯感が芽生えていると私は勝手に思っていたのだが、どうやらチャコはそんなことは微塵も思っていないようだ。

 

さっさと布団を出て、今度は部屋から出してくれと鳴く。こんな朝早くから一体何の用事があるというのだろう? もしかしてトイレだったのかな?

 

日中はまるで昨晩は何事もなかったかのように素っ気ない。私に尻を向けてストーブの前に座っているチャコに声をかけると、チャコの尻尾がパタッと一回動く。それが毎晩一緒に寝ている人への返事のつもりか。何度「チャコ!」と呼びかけてもパタッと一回だけ。そのうちに段々腹が立ってくるほどの冷たいあしらわれ方だ。

 

思えばチャコには他にも奇妙な習性があった。私がチャコをギュッと抱きしめて顔を近づけると、私の鼻をペロペロと舐め始める。以前、猫が人間を舐めるのは単に塩分補給しているのだという身も蓋もない話を聞いたことがあるが、私は絶対愛情表現だったと思うのだが。

 

まあそこまではいいのだが、その後必ず仕上げとばかりに鋭い牙を鼻の中に突っ込んでガブッと噛じってくれる、これが涙が出るほど痛かった! 何回叱っても必ず噛じる。最後は私も諦めて囓らせてあげた。

 

もしチャコが今でも生きていたら、私は同じように布団に入れて一緒に朝まで寝るだろう。日中、どんなに冷たくあしらわれようと・・・。