小説【十味十話】 第二話 おむすび
青春とか反抗期って”はしか”みたいなもんだと人は言う。
なんか甘酸っぱくて、気恥ずかしくて思い出したくない・・・。
なんて。
僕の”はしかの思い出”はおむすびだった。
「いいって!もう行くから!」
「ご飯、食べてきなさい!!」
「間に合わないから!!」
「まったく!!!」
我が家の朝はいつもこんな調子だ。
早く起きろ・・・・って、言ったって無理な話だ。
PCの向こう側には興味のあることだらけ。
無駄にエネルギーを放電している。
「健太さぁ、あれ見た?」
「あれって何よ?」
「アレだよ。あの無修正のさ~。」
「あれ?見た見た!!すげぇのな~。たまんねぇ~。」
「な?」
悪友の聡とは幼稚園の頃からのダチだ。
クラスの片隅でそんな話をこそこそしていた。
「お前、どうすんの?大学行くのかよ?」
「はぁ?今頃になって勉強したって無駄でしょうよ。」
「まぁ、そうだけどね。専門?」
「う~ん・・・・・。」
18歳なら大人・・・なんて言うが、
進路を決めろなんて言われてもなーんにも考えてない。
決められる訳がない。
「健太ー、ここにおむすび置いとくわよ-。」
「はいよー。」
夜になると勉強をしてると思った母がおむすびを置いてくれる。
”受験のお夜食”みたいなもんだ。
でも、バカ息子はエロサイトに夢中なのだ♪
「えーと・・・・・・、健太君なんですけどね・・・・・。
このままだと志望校にはちょっと厳しいかな・・と。
お母さんからも少しはっぱを掛けてもらえますかね。」
「・・・・そうですか。はい。申し訳ありません・・・・。」
「いえいえ・・・。謝ってもらうことではないんですが・・・。
まだ、時間は・・・なんて言ってるとすぐですからね。よろしくお願いします。」
「はい・・・・。」
「健太ー!!あんたなにやってるの!!先生に散々言われていい恥かいちゃったわよ!!!」
「うるせーなー!!大学なんていかねーよ!」
「そんなこと言って、どうするの!!中途半端なままで!!」
「高卒の何が悪いんだ!!」
「・・・・健太・・・・・。」
保護者面談に行っていた母と大喧嘩になってしまった。
腹が立って、腹が立って、そのまま飛び出してしまった。
「あなた、育て方が間違ってましたかね・・・。」
「母さん、今はそういう時期なんだよ。男だからな。
ほっとけよ。」
「そんなこと言うけど・・・・。どうしたらいいの・・・・。」
「泣くなって。若いっていうのはそれだけでバカなんだよ。」
父は寡黙で普段は何事かないと口を開かない。
鉄工所に中卒で入って苦労したらしい。
今日もその太い腕で一生懸命、働いている。
戻ってきた僕に母は
「お父さんが呼んでるよ。」
「・・・何。」
ふてくされたままで、居間に行くと新聞を見ながら
晩酌していた父がいきなりすくっと立ち上がると
”ぼぐっ”
と、顔を殴った。
「いいつつう・・・。何すんだよ!」
「何すんだ?お前、母さん泣かせただろう。そんなのは許さんからな。」
「泣かせた?しらねーよ!泣きたきゃ泣けよ!!」
「なんだとぉ~!!」
と今度は脇腹に一発もらってしまった。
鉄筋じゃないのだから・・・と言いつつ、
うずくまる。
毎日、鉄と格闘しているその太い腕から繰り出されるパンチは
強烈だ。
「お父さん!もういいから!やめて!!」
「このバカに判らせてるんだ。自分のバカさ加減をな。判るまでぶっ飛ばしてやる。」
「健太も謝りなさい!!ほら!健太!!!」
無言で部屋に帰って閉じこもっている。
ぶっ飛ばされた顔がひりひりと痛む。
「健太・・・・。入るわよ。」
「・・・・・。」
「こんな真っ暗にして・・・・。灯り着けなさい。」
「父さんはね、中卒っていうことで沢山苦労したの。
あんたも知ってると思うけど、兄弟が沢山いてとても高校に行ける訳なかった。都会に一人で出てきて一生懸命働いてきた。だから、あんたにはそんな苦労をさせたくなかったのよ。」
「・・・・・・。」
「それにほら。見てみなさい。」
びっくりした。
母から手渡された銀行の通帳には普段見ないような
数字が書き込まれていたのだ。
「・・・・これ・・・・・。」
「アンタが大学に行くときの為に・・・ってお父さんがこつこつ貯めてたのよね。これも無駄なのかしらね。」
「・・・・・。」
「あんたがね、中途半端ななのが我慢出来ないのよ。お父さんは。もっとしっかりしなさい。どんな道に進むにしても。」
「すいません・・・・・。」
「これ置いておくから、食べなさい。」
年も明けて春になった。
「もしもし!受かったよ!合格しました!!」
「やった~!!!今日はご馳走にするから真っ直ぐ帰って来なさいね!!」
「おう!!」
あれから始めた受験勉強だったが、なんとか滑り込めた。
自分でも大学に受かるなんて信じられなかった。
でも。
あの時に泣きながら食べた涙味のおむすびは一生忘れない。
これで”はしか”は治るのだろうか。
しょっぱかった。
青春とか反抗期って”はしか”みたいなもんだと人は言う。
なんか甘酸っぱくて、気恥ずかしくて思い出したくない・・・。
なんて。
僕の”はしかの思い出”はおむすびだった。
「いいって!もう行くから!」
「ご飯、食べてきなさい!!」
「間に合わないから!!」
「まったく!!!」
我が家の朝はいつもこんな調子だ。
早く起きろ・・・・って、言ったって無理な話だ。
PCの向こう側には興味のあることだらけ。
無駄にエネルギーを放電している。
「健太さぁ、あれ見た?」
「あれって何よ?」
「アレだよ。あの無修正のさ~。」
「あれ?見た見た!!すげぇのな~。たまんねぇ~。」
「な?」
悪友の聡とは幼稚園の頃からのダチだ。
クラスの片隅でそんな話をこそこそしていた。
「お前、どうすんの?大学行くのかよ?」
「はぁ?今頃になって勉強したって無駄でしょうよ。」
「まぁ、そうだけどね。専門?」
「う~ん・・・・・。」
18歳なら大人・・・なんて言うが、
進路を決めろなんて言われてもなーんにも考えてない。
決められる訳がない。
「健太ー、ここにおむすび置いとくわよ-。」
「はいよー。」
夜になると勉強をしてると思った母がおむすびを置いてくれる。
”受験のお夜食”みたいなもんだ。
でも、バカ息子はエロサイトに夢中なのだ♪
「えーと・・・・・・、健太君なんですけどね・・・・・。
このままだと志望校にはちょっと厳しいかな・・と。
お母さんからも少しはっぱを掛けてもらえますかね。」
「・・・・そうですか。はい。申し訳ありません・・・・。」
「いえいえ・・・。謝ってもらうことではないんですが・・・。
まだ、時間は・・・なんて言ってるとすぐですからね。よろしくお願いします。」
「はい・・・・。」
「健太ー!!あんたなにやってるの!!先生に散々言われていい恥かいちゃったわよ!!!」
「うるせーなー!!大学なんていかねーよ!」
「そんなこと言って、どうするの!!中途半端なままで!!」
「高卒の何が悪いんだ!!」
「・・・・健太・・・・・。」
保護者面談に行っていた母と大喧嘩になってしまった。
腹が立って、腹が立って、そのまま飛び出してしまった。
「あなた、育て方が間違ってましたかね・・・。」
「母さん、今はそういう時期なんだよ。男だからな。
ほっとけよ。」
「そんなこと言うけど・・・・。どうしたらいいの・・・・。」
「泣くなって。若いっていうのはそれだけでバカなんだよ。」
父は寡黙で普段は何事かないと口を開かない。
鉄工所に中卒で入って苦労したらしい。
今日もその太い腕で一生懸命、働いている。
戻ってきた僕に母は
「お父さんが呼んでるよ。」
「・・・何。」
ふてくされたままで、居間に行くと新聞を見ながら
晩酌していた父がいきなりすくっと立ち上がると
”ぼぐっ”
と、顔を殴った。
「いいつつう・・・。何すんだよ!」
「何すんだ?お前、母さん泣かせただろう。そんなのは許さんからな。」
「泣かせた?しらねーよ!泣きたきゃ泣けよ!!」
「なんだとぉ~!!」
と今度は脇腹に一発もらってしまった。
鉄筋じゃないのだから・・・と言いつつ、
うずくまる。
毎日、鉄と格闘しているその太い腕から繰り出されるパンチは
強烈だ。
「お父さん!もういいから!やめて!!」
「このバカに判らせてるんだ。自分のバカさ加減をな。判るまでぶっ飛ばしてやる。」
「健太も謝りなさい!!ほら!健太!!!」
無言で部屋に帰って閉じこもっている。
ぶっ飛ばされた顔がひりひりと痛む。
「健太・・・・。入るわよ。」
「・・・・・。」
「こんな真っ暗にして・・・・。灯り着けなさい。」
「父さんはね、中卒っていうことで沢山苦労したの。
あんたも知ってると思うけど、兄弟が沢山いてとても高校に行ける訳なかった。都会に一人で出てきて一生懸命働いてきた。だから、あんたにはそんな苦労をさせたくなかったのよ。」
「・・・・・・。」
「それにほら。見てみなさい。」
びっくりした。
母から手渡された銀行の通帳には普段見ないような
数字が書き込まれていたのだ。
「・・・・これ・・・・・。」
「アンタが大学に行くときの為に・・・ってお父さんがこつこつ貯めてたのよね。これも無駄なのかしらね。」
「・・・・・。」
「あんたがね、中途半端ななのが我慢出来ないのよ。お父さんは。もっとしっかりしなさい。どんな道に進むにしても。」
「すいません・・・・・。」
「これ置いておくから、食べなさい。」
年も明けて春になった。
「もしもし!受かったよ!合格しました!!」
「やった~!!!今日はご馳走にするから真っ直ぐ帰って来なさいね!!」
「おう!!」
あれから始めた受験勉強だったが、なんとか滑り込めた。
自分でも大学に受かるなんて信じられなかった。
でも。
あの時に泣きながら食べた涙味のおむすびは一生忘れない。
これで”はしか”は治るのだろうか。
しょっぱかった。