ほぼ2年お休みしたこのブログですがしつこく?というか根強くアクセスが

有ったのが実は「やさしい魚」の楽曲レビューで、なんとグーグルの検索

では“やさしい魚”で検索するとその時の楽曲レビューがトップにきます。

勿論とても有り難いことですが、しかし個人的な感想過ぎて今読むと

気恥ずかしい記事でもあります。


さて誰も知らない楽曲レビュー第2弾は本当は実は一番初めに書きた

かったこの「月下の一群」シリーズについて書こうと思います。

本記事でのタイトルは「月下の一群第1集」と書いてますが正式には

「フランスの詩による男声合唱曲集 月下の一群 第1集」です。

この南弘明氏による作曲の月下の一群シリーズは例によって男声合唱版と

混声合唱版が有りますが元々は男声合唱用に書かれたもので、私の手持ちの

楽譜も男声版のみのため、以下全て男声四部合唱版で話を進めさせて

頂きます。


まずこの月下の一群第1集は昭和52年に広島崇徳高校から委嘱を受けて

作られたものですが、この曲集の作曲者南弘明氏はまず堀口大学が訳詩

した大元の“月下の一群”という大正時代に発表された詩集について


「書店でこの訳詩集を手にし、立ち読みをはじめた瞬間から

作曲をしたい欲望を募るのを覚えた」


と述べています。そしてその作曲の欲望は“月下の一群シリーズ”として結果

第3集まで作ることに至ったことを考えると、如何に南弘明氏の作曲欲を

刺激した詩達であることが判るかと思います。


さて前置きが長くなりましたが早速第1集の1曲目、私のアメブロのハンドル

ネームでも有る“小曲”について述べていきます。


冒頭の美しいGメジャー7の和音から入る静かなピアノ伴奏、その2小節目

にはこの曲集を支配する和声のモチーフである減5度の響きが早くも現れ

ます。

この和音はこの曲集全体を通じて旋律・和声を月下の一群たらしめている

大きな要素ですが半音の動きでのメロディーの切なさを本当に上手く南弘明

は生かしてると思います。

静かで瞑想的なピアノ伴奏は合唱のハミングパートに引き継がれ、8小節の

ハミングの後にようやくトップテナーパートによるソロの旋律が入ります。

その後再びピアノ伴奏→4パートハミング→テナーパート合唱が繰り返された

あとピアノがこの曲を静寂を閉じていきます。

陳腐な言い方になりますがこの曲は本当にただひたすら「美しい」としか

言いようが無い曲です。

(果たしてこの世の中の合唱曲でこれ以上に美しい曲があるのか・・・とも

思っています)


歌詞は

「目を開くと 私には景色が見える 目を閉ざすと 私にはおまえの顔が見える」


書いてしまえばほんの1行ですがこの歌詞を補ってもなお余りある情感の至上の

美しい曲が生まれたことを考えるとまさにこの堀口大学氏の訳詩集と作曲家

南弘明氏は運命の出会いをしたのだと思えてなりません。


この月下の一群はまさに南弘明氏が運命として作曲するべくして作曲した曲、

おおげさでも何でもなくそう思わせるこの1曲目の“小曲”です。


2曲目に続く。