『やさしい魚』(やさしいうお)の4曲目は1983年のNHK合唱
コンクールの課題曲にもなった「鳥が」です。
コンクール向けということで非常になじみやすく、また歌い易い
曲になっています。8分の6拍子による流れるような心地よい
旋律はいかにも王道的な合唱曲、という感じでこの曲を愛唱歌
にしている団も多いかもしれませんね。
私はこの曲だけは殆ど何も考えずに曲全体の流れに心と体を
預けて歌えていたので4曲目のこの曲になると3曲目の苦しさ
から開放されたこともあって凄くほっとしたものです。
(けっこう声を抜いて歌ってもばれない・・・いやアラが出ない
ような気がします。)
一部リズムパートでの拍子の刻みが不規則なところもありますが
大きな流れの中で拍を取っていければそれほど難しくもなく、
テナーパートもベースパートもそれぞれ主旋律をmf以上の音量で
歌えば良いので、歌う側からしたらかなり気持ちのいい曲です。
基本的に大きな展開をしない曲ですが、ダレないようにはじめの
イ長調からハ長調→変イ長調→ホ長調、途中にテンポの緩急・
ハーモニーの重軽をつけつつ、最後にまたイ長調とパートの節目
節目ではそれなりの転調で色を変えて安易になり過ぎないよう
な配慮もしてあります。
音楽の教科書に載せてもいいような優等生的な曲で、マニアックな
指向の合唱ファンからしたらややつまらないと考える人もいるで
しょうね。
私もこの曲は好きですがこういった曲調ばかりだと組曲としての
『やさしい魚』はそこまで印象に残らなかったかと思います。
2曲目が男声向けならこの4曲目は非常に混声・女声向けといえる
でしょうか。
時に最近の音楽の教科書はポップスの曲を合唱に編曲したものが
載るのが当たり前になってるようで、それはそれで生徒の音楽的
興味を引けば結果的に良いと思いますが、アカデミックなプロの
作曲家によって作られた緻密で高度な合唱曲にも少しは光をあてて
もらいたいと個人的には思います。
かくいう私も合唱を始めた最初の2年間は”合唱曲を聴く”ことに
物凄い拒絶反応がありましたが・・・・
ポップスの「判りやすさ」「耳なじみの良さ」がある意味異常すぎる
ので、それに慣れた耳だと最初はほんとに何が何だかさっぱりの
世界でした。(合唱曲に限らずクラシックの曲は自分から曲に歩み
寄る、若しくは真剣勝負で向き合わないとはね返されような気が
します。)
次でやっと終わりです・・・