130312_ 「Secret Identity」LIPHLICH@高田馬場AREA(その2)
熱が引き、しんと静まりかえった会場。
その中で、久我さんが言葉を選びながら、そして真っ直ぐに前を見据えながら、一つ一つ口にしたこと。
その概要をまとめてみました。
震災から二年が経ちました。
忘れるな、人はそう言います。
風化させてはいけない、決して忘れてはいけない。
そういう意味を込めて、人は忘れるなと言います。
震災を忘れるな。戦争を忘れるな。
でも、僕らは戦争を経験していません。
忘れるな、忘れるなと言われても、僕ら人間は忘れてしまう生き物です。
皆さんも日々の生活の中で、辛いことや気の滅入るようなことがあるかと思います。
でも、そういう時こそ自分を愛してあげてください。
自分を愛せない人は、人を愛せません。
人を愛せない人は、人から愛されません。
人から愛されない人は、人に優しくすることができません。
だからどうか、自分を愛してあげて下さい。
それが、一番の近道だから。
言葉の一つ一つが突き刺さって、人目も気にせずその場でぼろぼろと泣いてしまいました。
現に、私は「愛されたい、でも、誰も愛してなんかくれない」と嘆いてばかりでした。
それは何故か。きっと、私が自分を愛していなかったから。
自分なんて、愛する価値のない人間だと考えていたから。
求めるばかりで、与えることを放棄していたから。
そんな単純なことに、私はずっと気付かない振りをしていたのです。
久我さんがおっしゃっていた言葉は、常套句かもしれません。聞き飽きた言葉かもしれません。
人によっては、救いようのない、とても酷な言葉かもしれません。
でも、それを敢えて口にされたことに意義があると思うのです。
慌ただしく流れる日々の喧騒の中で失ってしまいがちなこと。
けれど、とても大切なこと。
生きる上で、決して忘れてはならないこと。
ラストに演奏されたのは「VESSEL」。
あのMCの後に、この選曲。もう、反則ですよね。
この曲は私にとって、「楽しい」でも「感動した」でもなく「愛おしさ」で胸がいっぱいになる楽曲です。
自分に与えられた愛の大きさは、きっと誰かを愛する時になって初めて気付くもの。
銃弾で穴だらけになった恋人の体から流れるものは、血液ではなく愛情だったのでしょう。
人間という脆い器に抱え込んだ、沢山の愛情。
新井さんが加入されてからの「VESSEL」は未だに聴き慣れないのですが、今後披露される機会がもっと増えて、新井さんの奏でる「VESSEL」を、もっともっと好きになれたら良いなぁと思いました。
最後の「with the dreaming」という部分はアカペラで。
力強さと儚さの入り混じった伸びやかな歌声に胸をぐっと締め付けられました。
最後の一音まで聴き終えた後、涙で化粧はぐちゃぐちゃな状態でしたが、何故だか心は晴れやかで。
終演後に客席から響き渡った沢山の温かな拍手は、ステージ上のメンバーさんの心にも届いたでしょうか。
ステージから捌ける際に、久我さんは下手、上手、センターの順に投げキッスを飛ばしていらっしゃいました。
新井さんはオフマイクでありがとうと叫び、例の大切なピックを客席へ。
渉さんは背中の入れ墨を見せつけるかのようにステージ上をくるりと一周してから、センターで深くお辞儀を。
英紀さんもセンターへ出てきて、投げキッスを飛ばしていました。
この日のライブについて、渉さんは「最近のLIPHLICHとは少し違う締め方でした。こういう日もあります」と表現されていましたが、私はこのようなライブの展開が好きです。
この日のライブには、LIPHLICHさんにしか出来ないステージングやLIPHLICHさんにしか出来ないMCなど、バンドとしての魅力が沢山詰まっていたように思います。
良いライブとは、必ずしも客席の盛り上がりや挙げられた拳の数に比例する訳ではないと私は考えています。
沢山の歓声を集めることも、振り乱される頭の数を増やすことも、大きな会場を埋めることも勿論素晴らしいことですが、例え30分のステージであっても、見る人の心に訴えかけ、そしてその心に留まり続けるライブを行う方がずっと意味があるように思うのです。
また、そのようなライブを展開できるバンドであれば、きっといつか大きな会場を埋められるだけの存在になることができるでしょうしね。
足を運んで良かった、この場に居ることができて良かったと、心からそう思えるような素敵なライブでした。
お疲れ様でした♪