定款の定め方~計算・附則~ | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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「士業・法務担当者のための会社法入門」


第6回である今回も、会社の根本規則である「定款の定め方」です。

第3回以降、連続で解説してきた「定款の定め方」も今回で最終回となります。

前回の告知通り、今回は、「計算附則」について詳細を説明します。


計算にもいろいろ重要な条項はありますが、設立時に一番気になるのは、「事業年度」ですかね。

後述の通り、会社の業務繁忙期と決算申告の時期が近くなると、毎年かなりの負担になりますし、依頼している税理士さんにも迷惑をかけることになります。

また、この事業年度の時期によって、最初の事業年度期間が決まりますが、これが設立日と近くなりすぎると、最初の事業年度の到来が近くなり、決算申告をすぐしなければいけません。それだけならいいかもしれませんが、消費税の免除期間も短くなるわけですから、注意が必要です。

他社が3月や12月だからと、安易に自社も3月・12月を決算期とするのは、避けた方がいいでしょう

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1.「計算」とは

定款の「計算」の章には、会社の事業年度や剰余金の配当に関する事項などを記載します。

この章は、事業年度をいつにするかということ以外、定型のものが多く、実際に配当を行わない中小企業では、定期的に見直しをする必要性は低いです。上場等により企業規模が大きくなると、株主に対し剰余金の配当を行うことになりますので、その際に配当の決定機関等を検討すればよろしいでしょう。

会社法施行後、一度も定款変更をしていない会社であれば、「営業年度」→「事業年度」など、会社法の施行によって、形式的に文言が変更された部分のみ、変更すれば足ります。

事業年度の始期と終期は、1年内であれば会社で自由に定めて構いません。通常、3月、6月、9月、12月のいずれかを決算期(事業年度の末日)としている会社が多いですが、4月や8月を決算期とすることも可能です。

但し、決算期から2ヶ月以内(延期しても3ヶ月以内)に定時株主総会をし、かつ税務申告をしなくてはなりません。

したがって、通常業務の繁忙期に、総会時期や税務申告時期が来るように設定すると、日常業務に支障が出ますので、決算期は、そこから逆算して設定するといいでしょう。

また、事業年度も事後的に変更は可能ですが、変更をすると役員の任期や税務申告に影響が出ますので、頻繁に変更することは避けるべきです。


2. 「附則」とは

定款の「附則」の章には、一時的な規定や、他の章の変更により影響が出た事項についての経過措置的な規定を定めます。

したがって、既存の株式会社は、現行定款に定める必要がある事項は特にありません。

事業年度の変更により、変更後、最初の事業年度が1年未満であるときは、それを「附則」で明示する程度です。

他方で、会社設立時に作成する原始定款には、以下の事項を少なくとも「附則」に記載する必要があります。
  

  1.  設立に際して出資する財産の価額又は最低額

  2.  発起人の氏名及び住所


その他にも、最初の事業年度や発起人の引受株式数などを記載するのが一般的です。


3. 定款変更の方法

現在の定款を変更するには、どのような規模の会社であっても、原則として株主総会の特別決議が必要です。

しかし、株主総会の開催が、容易であるかは、企業の規模や機関設計によって異なります。

そのメルクマールの1つとなるのが、株主の数とその構成です。

株主が1人であるとか、役員のみという会社の場合には、全員の意思確認が簡便でしょうから、招集手続を省略し、1日で定款変更手続をすることも可能です。

他方で、外部株主が多いなど、議案によっては反対意見の可能性があり、全株主の同意が容易に取れない場合には、招集手続を省略せずに、期間を要してでも、法令の手続通りに株主総会を開催すべきでしょう。

このような会社で株主総会を実際に開催せず、書面だけ整えることは、事後的に株主に争われた場合に無効となりますので、絶対に避けてください。

招集手続に不備があっても、一定期間は総会決議が取り消される恐れがありますので、注意が必要です。


4. まとめ

いずれにしても、変更を考えるときは、なるべく早い段階で専門家である司法書士に相談することをお勧めします。

また、緊急のときであっても、コンプライアンスに違反しない手続が可能かどうか、専門家である司法書士に意見を聞くべきでしょう。

次回は、「特例有限会社とは?」を予定しています。