定款の定め方~総則~ | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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「士業・法務担当者のための会社法入門」


第3回である今回は、

定款といっても、総則・株式・機関・計算・附則と多岐に及ぶので、今回はその中でも、「総則」について詳細を説明します。

その他の規定については、次回以降に解説します。

定款って、歴史が古い会社ですと、何処にあるっけ?という会社が、少なくないのでは?( ´艸`)

つい、先日もそのような相談を受けました。

対処方法はいろいろありますが、基本的には以下の3つ。詳細が知りたい方は、ご相談ください~。


<定款を紛失した場合の対処方法>

1.公証役場にて、設立時の定款の謄本を再度取得申請する。

  設立時の定款は、公証役場で認証を受けていますので、20年間保存されています。この期間内であれば、再度取得申請が可能です。

  でも、これはあくまで設立時の定款!その後株主総会で変更決議をしている場合には、該当しません。


2.今までの株主総会議事録を全て精査し、変更を反映した定款を作成する。

  会社は、設立後、株主総会の決議で定款変更が可能ですが、変更後の定款は公証役場での認証が不要です。したがって、変更後の定款は、自社で適宜アップデートして保管する必要があります。


3.今までどのように変更したかも不明な場合は、改めて定款を作成し、株主総会での承認を得る。

  もう、何もわからないという会社は、この手法で対応します。平成18年5月施行の会社法以降、一度も定款変更をしていない会社は、この機会に会社法対応の定款にアップグレードすることをお勧めします。



1. 「総則」とは

定款の「総則」には、会社の商号や目的等、絶対的記載事項の多くを記載します。

絶対的記載事項とは、記載しないと、その部分だけでなく、定款全体が無効になる事項です(会社法27条)。

総則は、定款の最初の章に記載するので、まさに会社の「顔」です。

人と一緒で、会社も中身が重要とは思いますが、ある程度見だしなみがしっかりしてないと、

いくら中身が良くても、そもそも見てもらえないということもあります。

したがって、形式を整えるということは、重要だと考えます。次項以降で、各規定を見ていきましょう。



2. 商号

商号とは、会社の名称です。原則として、株式会社の場合には、「株式会社」と商号中に記載すれば、

それ以外は自由に定めることができます。ローマ字や「&」「・」等の一定の記号も使用することが可能です。

但し、最近では誰もが知っている「@」や「/」は、まだ認められていません。

商号は、自社のブランドにもなりえるので、安易に決定するのはよくありません。

また、第1回コラムに記載のとおり、類似商号規制が商業登記上は撤廃されたとはいえ、

他社と類似の商号を無断で使用することは、後の紛争を招くおそれがあるので、避けるべきです。



3. 目的

目的とは、会社の事業内容をあらわすものです。

会社法施行前は、類似商号規制のため、この目的の記載方法は厳格な要件がありました。

しかし、現在では緩和され、包括的な内容の目的が認められますし、自社の造語を記載することもある程度一般社会に認知されていれば許されると思います。

上場会社でも、エーザイ株式会社のように「その他適法な一切の事業」という欧米式のような目的を定めている会社もあります。

とはいえ、上場会社のように広く認知されている会社ならともかく、中小企業では、少なくとも自社のメイン事業くらいは、詳細に定めるべきでしょう。

(エーザイでも、上記目的とは別に、医薬品関連の事業目的は定めています)



4. 本店所在地

本店とは、会社の本社です。定款には、「東京都中央区」のように、最小行政区画まで定めれば構いません。

会社の規模が大きくなれば、今の事業所は手狭になり、本社を移転することも多々あると思います。

そのような前向きの理由であれば構いませんが、何の理由もなく、本社を何度も移転するのは、

会社の信用度からいってマイナスになりこそすれ、プラスにはならないと考えますので、ご注意ください。



5. 公告する方法

公告とは、決算書類の開示等、会社法上の情報公開義務が会社にある場合に、それを公示するときの媒体です。

定款には、その公告方法を定め、公告には(1)官報 (2)日経等の日刊新聞紙 (3)自社HP(電子公告)の3種類があります。

官報が料金的にも安く、一般的なので、最初は官報でいいでしょう。

自社HP(電子公告)なら掲載料金かからないのではと思うかもしれませんが、

自社HPの場合には、決算公告を除き、法務省に登録されている調査機関にチェックしてもらう必要があり、

その費用が官報よりも格段に高くなります。


6. 機関

株主総会の開催方法や、役員の員数・任期等会社機関の詳細については、別途独立の章を設けるべきですが、会社がどんな機関を置いているかということは、基本事項ですので、「総則」に置くべきと考えます。

具体例としては次のとおりです。

例:定款●条 当会社は、株主総会及び取締役のほか、次の機関を置く。   

        1.  取締役会

        2. 監査役



7. 企業理念

会社法上で要求される定款記載事項ではありませんが、会社の「企業理念」を定款に記載するのもメリットがあると考えます。

会社法では、定款自治が広範囲で認められるようになり、外部にも影響ある定款記載事項であっても、登記事項ではないものが増えました(監査役の権限の範囲は、登記簿上公示されないので、定款を確認する必要があります。)。

したがって、今後は、取引や融資の際に、商業登記事項証明書・印鑑証明書以外に、定款の提出・閲覧を求められる機会が多くなるでしょう。

そのようなときに、このような事項が定款にあると、コンプライアンスを意識している会社と判断される一要素となるでしょうから、会社の信用度ではプラス材料になります。

小難しいことを長々と定める必要はなく、自社HPの「社長のあいさつ」等によく記載されている、会社の創業理念やビジョンなどを応用して定款に定めればいいでしょう。


8. まとめ

最初にも述べたように、定款の「総則」部分は絶対的記載事項が多いため、定めることが決まっており、通常は、どの会社でも内容に大差がありません。したがって、上記企業理念のような一味違ったものを定めておくと、見栄えがします。また、定款は、株主が多くなるほど容易に変更できなくなるので、定款にも記載しておけば、会社運営することの責任の重さをより自覚できるのではないでしょうか。定款を義務的なものとして捉えるのではなく、有効活用することを、専門家のアドバイスを受けながら是非検討してみてください。

次回は、「定款の定め方~株式~」を予定しています。

会社の根本規則である「定款の定め方~総則~」について説明します。