Chapter 06 この時代だからこそ、めげない力
何ができるだろう

2011年3月11日の東日本大震災により、様々なイベントが中止になるなか、僕が作・演出する舞台「NGワードライフ」も中止になった。正直、中止を聞いた時、ものすごくヘコんだ。それと同時に、舞台の稽古などでごまかしていた地震に対する恐怖感がまたわき上がってきた。

ネットなどではいろんな芸能人が関西に逃げたとか書かれている。自分だって逃げたいな~って思いはある。だけど、そういう気持ちを舞台があることでごまかしてきた。

そんななかの舞台の中止。でも、舞台の主演である今田耕司さんが舞台中止の話を聞き、すぐに言った。


「自分も含めて出演者のスケジュールはあいているんだから、何かチャリティー的なイベント、できないかな~」

と。その言葉を聞き、自分の気持ちを恥じた。


こんな時だからこそできることがある。それからわずか3日でスタッフとともに準備した。

イベントは3月19、20日の2日間。いろんな芸人さんや芸能人・著名人の方々に私物を持ってきてもらい、ステージ上で値段を付けてフリマ形式で行った。ゲストで来る方は、今田さん、宮川大輔さんが自ら電話やメールで呼んでくれた。


当日、会場にはたくさんのゲストが駆け付け、物もたくさん集まり、お客さんもそれはたくさんたくさん来てくれて、笑顔で物を買い、募金をしてくれた。

「東京は危険だ」とネットなんかで􀀀る人もいたけど、イベントの会場には今田さんや大輔さん、他にもたくさんの芸人、芸能人がいる。それが安心感となり、会場には笑い声が響き、笑顔でいっぱいになる。笑顔がつながる。

会場に来たたくさんの芸人さんは言った。


「何かしたいんだけど、何をしていいかわからない。こういう場所があるから、なんかモヤモヤしてた気持ちがすっきりしました」


震災、および原発に対して様々なが飛び交い、不安に変わる。マイナスな情報煽りたてるのは簡単だ。


でも、僕は思う。被災地の人が僕らの想像を超えた哀しみや苦しみの中にいる時に、周りにいる人がポジティブにならないと、状況はもっと悪くなる。


真実を報道することは大切だ。だけど、ただ不安にさせるのは良くない。ただネガティブにさせるのは、医者が病気を宣告して治し方を教えてくれないのと一緒のような気がする。

だから、僕らテレビやメディアを作っている人間は、できることをする。ポジティブにできることをする。

今田さんはイベントが終わった後に僕に言った。


「普段、テレビなどで楽しく仕事をさせてもらってるからこそ、こういう時にできることをしてあげたい」


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