(少しずつ)移転のお知らせ
「眩暈がするほどショートショート」、改め、「魅せ場blog」、改め、「見せ場blog」の管理人です。名前はまだありません。
この度、なんちゅうことはない理由から、ブログをアメーバからシーサーに移転します。
アメーバは記事データの出力ができないもんで、えっちらおっちら、ちんちんぽんたら、ひとつひとつ手作業にての移転となっております。全部移し終わったらこちらの記事は削除、とあいなりますので、ひとつこれからはどうぞむこうにてよろしくお願い四万十川。
あたし、見世物になりたくない、の序
すれっからした、すれっからした、そうとも言う、ごめんね面接してくださいな。あたしの志望は和服を着てもいいような、そんなオフィスで、しかも肌の先から? 毛穴の奥の奥までしびれるようなそんな、お仕事がしたいです。相手にされなくてもいいんです。逃げ場所は用意してますから。年齢? そこに書いてあるとおり、もちろんの十代です。本当は27ですけど、問題じゃないですよね? というかちょっと暑くないですか、ここ、変な感じだねぇ、ケータイもつながらないし、地下のオフィスって聞いてて、あ、ちょっとオシャレ? ってね、思ってたんですよ。まぁ、別にいいですけど、
もちろんあたし、不合格ですよね。
いいです、その先は聞きたくないんです。どうせ、ほんとは受かってるんでしょ。
やりますよ。不本意ながら動く自分が、大好きなんで。
あたし、無生物の夜
電卓には、彼の人生があるのだろうし、目の前に転がるめんそーれ、メンソレータムにも、彼女なりの気苦労があったのだろう。デジカメだって、この飲みかけのコーヒー、はいマルボロー。
そうやって部屋のなかのひとつひとつの宿命に突っ込んでいる夜、
つかれちゃった。
なぜこんなことをしているのか、約束を破られたからだ。それは彼にだ。何故かっていうと、あたしが怒らせてからで、何をしたかっていうと、くっだらないこと、彼のケータイを見た、とか、他にももうちょっとあったような気もするけど、忘れた。とにかくそんなことでもめちゃって、今夜はひとり。ひとりで他人の人生をうらやむ時間。もちろん無生物でも。
でも誰もあたしの悩みに突っ込んでくれない。そりゃそうだ。無生物だもん。
あったしも無生物でいりゃよかったかなぁ、そうはっきり、けっこう大きな声で言葉にして、ケータイ、思い切りぶん投げた。
無生物よー、殺し合いだー! 愛だー!
喧嘩の相手と、そして結局の夜
どうしてかある夜、むしょうに喧嘩の相手が欲しくなって、それはもちろん、口げんかから始まって殴り合いになり、最後には手を繋いで川原に寝転び大合唱、大笑いしたあと、肩を組んで帰る、
そういう類いのものだ。
けれど相手がいない。
何しろ喧嘩する、という行為はあらかじめある程度の関係を持っていなくてはならない。ふむ。
初対面の相手と口論になる場合もあるだろう。だがそれは「好きになれないよあいつ」ということであって、「なんだよ、あいつ、あんなやつだとは思わなかった、絶好だ。ぷん」ということではない。
キライになってもらうには、まず好きに、好きとはいかないまでも「仲のいい」「知り合い以上」の段階にいなければならない。
そんな相手はいない。
つくる? えー無理だよう。だってそんな、ねえ、はじめっからできてたらさあ、おそらくこんなこと考えないしさあ、友達いたら、ほんじゃ週末あたり行くか? クラブ? 六本木? と、なるだろう。六本木が何線かも知らないけれど。
ということははじめから、無理を承知の願望を、思い浮かべていたのか。
自分を呪うためかしら。
それすれも否定したくって、目の前にあった役立たずの携帯電話を殴ってみた。
痛みも感じない。少し、涙が出た。
ぽぽんちゃん
ぽぽんちゃんは右手がナメクジのような形をしている。形だけではなくあのウネウネと変化するやわらかさや、気持ちよく光沢を放つあの湿り具合もそっくりだ。いや、そっくりというよりは、ナメクジそのものなのだ。
小学校ではよく塩をかけられていじめられた。中学校ではそのままのあだ名。高校では何故か男子から人気者になった。よく放課後の誰もいない教室で、いやらしいことをされていたけれど、馬鹿にされたりするよりはずっとよかった。
ぽぽんちゃんはいま就職活動の真っ最中。自分が社会に出て行くという実感がわかない。どうしてだろう。右手だけではなく左手もナメクジになっているというのに。もういっそのこと殻をかむってカタツムリちゃんになろうか、そんなことを本気で考えてもいた。だけどそれを思いとどまらせたのは、彼女自身、完全なナメクジになってしまうまで、そう時間がないことを知っていたからなのかもしれない。
誰もが知っているグラスとその隣の人
そこに真っ赤な液体の入った透明なグラスがあったのを、誰もが知っていた。人通りの多いところだったので。けれど、誰もがそのグラスを頭のどこかに置いておこう、とかそんなことを思わずに、通り過ぎていってしまった。
何時間かがたつ。赤い液体は少しずつ、減ってきていた。もちろんそばを通るだけの人たちはそんなことは気付かない。量が変わっていくのを知っていたのは、近くに座っていた汚い身なりのおじさんだけだった。
昼になり、そして太陽がかたむき、夕方、夜になった。仕事帰りだろうか、足早にグラスのそばを歩いていく人、人、人たちの足音。ほこりが立ち上りグラスに入る。
もうほとんど中身は無くなっていた。
汚い身なりのおじさんは、「よっこいしょ」と立ち上がり、ゆっくりとグラスへと歩いていく。そしてナイフを取り出して、手首を切りつけた。真っ赤とはいえない淀んだ血が、グラスへと注がれていく。
そこで初めて、通行人たちはグラスを見て、おじさんを見て、流れる血を見て、グラスに溜まっていく汚い血を見て、そして見なかったふりをして、また足早に歩いていった。
おじさんは「ふう」とため息をついて、グラスの横に座った。
朝になって、おじさんの姿は消えていた。けれどグラスは、おじさんの血が入ったまま、いつもの場所で変わらずにある。
そこにグラスが置かれているのは、誰もが知っていることだったのだけれど。
デリバリーヘルスおとぎの国
プルルル…。
プルル、ガチャ。
「はい、こちらデリバリーヘルス『おとぎの国』でございます。お電話ありがとうございます」
「あのぉ」
「はい」
「あの、私、がお金は払いますんで、そちらの女の子を私ではなく別の所へ派遣してもらう、ということはできるんですかね」
「別の所、というのはどちらでございますか?」
「はい、私の父親の所へなんですけど…」
「お父様の」
「はい…、ささやかな、私からの父へのプレゼントと、して」
「なるほど。了解致しました。それでお父様の所へはどのような女の子を派遣いたしましょうか?」
「ええと、ですね。色々考えたんですけども、やはり、美人で慎ましく、礼儀正しくそれでいてワガママなところも少しあり、というのがいいですね。あ、これ実際には私の好みなんですけど、難しいですかね?」
「いえ、大丈夫でございます。条件にピッタリ当てはまる女の子をご用意させていただきます」
「ああ、それはよかった」
「それで、シチュエーションなどはいかが致しましょうか?」
「シチュエーション?」
「はい、女の子の登場の仕方から、途中で起きるイベント、そして最後の別れ。全てをご希望通りに設定することができます。具体的なご希望がなければ私どもにおまかせ、ということもできますが…」
「うーん、ではおまかせでお願いします。ただ父はかなりの田舎に住んでますので、その景観に合ったような感じで…」
「わかりました。おまかせください。きっと最高のプレゼントになると思います」
「では、お願いします。父の住所は××××…」
「はい、確かに承りました。ありがとうございました」
ガチャ。
「さてさて、女の子は誰がいいかな。よしシンデレラちゃん、…は外国へ主張中か。人魚姫ちゃんも予約が入ってるしなぁ。よし、ここは新人のあの子にやらせてみよう。かぐやちゃん、かぐやちゃーん!」
「はーい」
「かぐやちゃん、初仕事だよ。まずね、登場シーンは、お客様が割った竹の中から…」
2005年のにらめっこ
にらめっこをしておりますと、突然、笑いたくなってくる。相手の、もしくは自分の、はたまたその行為自体のおかしさ、ばからしさといったものではなく、全く理由の無い、ふっ、と湧き上がってくる正体不明の、笑いたいという願望。奥底にあるのは、相手への哀れみなのか、自分への陶酔か。
にらめっこというのは相手を笑わせるという単純なゲームではない。どのタイミングで、相手の予想をかわして、「笑ってやるか」その時期を読むゲームだ。完全にもう、相手を見下していなければこのゲームをすることはできない。元より選ばれたものでなければ、参加する資格さえ与えられない、そんな厳しい現実。いや、甘いのか。曖昧なのか。
つまり相手は友達でなくともよい、恋人でも親でもなくともよい。なんだっていい。「笑ってやる」それだけの侮蔑を向けられる対象であればどんなものでもよいのだ。粗末なおちんちん。貧相なおっぱい。変質的なブログ、型どおりのレスが繰り返される掲示板。一部のリーマン。一部の公務員。学生のほとんど。
誰もいなければ、鏡でもいい。
当然だよ。
汚いのね、あなた。
と言われましたので、わっしょいわっしょい。僕は田舎で、そう田舎でIT企業でもやろうかね、ってんで、そうだ知り合いの、それも俺が大学を辞めさせたようなバカづらの、野郎たち、わんさか集めておもしろおかしく、犯罪ぎりぎりの精神でやっちまおう。ってそう、思ったんだ。
だから失敗するよ。当然だよ。
小石のように高くまで
私
は
石
こ
ろ
の
よ
う
に
放り投げられ
そ
の
まま
し
ば
ら
く
帰って
こなかった
そ
の
あ
と
い
つ
も
の
よ
と
い
う
こ
と
は
信じなかった
だ
れ
も
私
の
周
り
に
は
い
な
い
からだ
あ
き
ら
め
ま
し
ょ
う
か
でも
そ
ん
な
こ
と
…