に包まれた景色は灰色だった

太陽を目にすることは

もうないのかもしれない

雨が止んでも

空気は冷たいままかもしれない


君の耳にはかすかなささやきすら

聞こえていないようだ

皆、君が誰だったかも忘れている


何が聞こえる?何が見える?

さっきからずっと君は道端に佇んでいる

まだ遅くはないけれど

燃えるような赤は

深海の碧に変わってしまったね

ぼちぼち出て行こうか

街は静寂を求めている


何年か前に

君は西の方角から

ふらっと手ぶらでやってきた

鍵ひとつ持っていなかった

体温すら感じない 

見えないバリアで覆われているような

人を寄せつけない何かがあった


確か雨上がり

濃霧にその影が浮かんだ夕暮れどき

君、寒くないの?

って、道行く人に尋ねられてたね

もう答えなくていいんだよ

ただ通りすがりのスナフキンだと

みんな思ってるからさ


嘘つかないよね

もう行くんでしょ?

君はそんなに愚かではないはず

君の視線が

遠くの山の麓だけに注がれてること

自分でもわかってると思う


霧、またかかってきそうだね

立ち去れって合図かもしれないよ


やれることやれるタイミング逃した君

腰を下ろすことすらできない

足元はからからに乾ききってるから


いつものように歩いて

緑と青に包まれた空間を探して欲しい

道が繋がってるかどうかはわからないけど


ある日君は珍しく

小さな紫檀の箱を抱えていた

鍵はかかっていない



蓋を開けると

蒼い目の人形がその箱の中に入ってる

ショートカットで

切れ長の目が印象的だった

ちょっと拗ねたような甘えてるような

そんな表情が見えた

手には君の魂を

大事そうに抱き抱えてる

君が欲しいもの、きっと知ってるんだな

なんでもかんでも

手を貸してくれるわけには

いかないだろうけど。。。

だってそれはほんとに大変


溢れるほどの気持ちがあって 

同時に空っぽ

うまく言葉にならないが

君はきっと言わなくてもわかってる 


人が誰かに意見を求める時 

AかBか

どちらか自分が望む答を

既に持っているものだという


言葉を探さなくていい理由はそこにあり


音のない街を箱は待ち焦がれている