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「あいつはお山の大将だ」という言葉、どうしても「狭い世界で自分がトップのように思いあがっている」というようなネガティブな印象を受ける言葉だと思います。でも最近、本当にそうだろうかと思うことが多くあります。
「高度情報化社会」という名前はだいぶ古いでしょうか。インターネットでいろんな人が情報を共有できることになり、世界中の情報をすぐ取得できる世の中になって久しいですね。
SNSを見ると、オリンピックの金メダリストの練習風景や、コツを教えてくれる動画が無料で見れることも今では普通という状況になりました。一昔前では考えられなかったと思います。
”お山”で閉じてた情報が、他のお山どころか世界中で共有されるようになりました。お山の大将は自分よりもすごい人がたくさんいることを嫌が応にも突き付けられますし、お山の民にも「あいつはうちではすごいけど、隣のお山の大将に比べると見劣りする」などと比較されたりします。
「公正」な情報が伝達され、「公正」な序列が形成されていきます。
これ自体は素晴らしいことだと思っています。とはいえ我々は「人間」です。公正さや正しさだけではどうにも説明のつかない「幸せ」「満足」という感情を持ち合わせています。
町内会のカラオケ大会の優勝者は、もちろん世界的な歌手に比べられるものではありませんが、小さな世界で優勝をすることで喜びを感じるでしょうし、その町内では「歌と言ったら○○さんだ」というポジションを得るのかもしれません。ポジションというのは、言い換えれば「自分の居場所」ともいえるのかと思います。
それを、町内会のカラオケ大会中に「美空ひばりと比べたら大したことねーな」などという人はいないと思いますが、ネット上ではそれに近いことが行われている気もします。もっともネット内では「○○町内会」という前提を外して「俺が一番」と言ってしまいがちというところにも大きな問題はあると思いますが。
人間が人間として幸せを得るには、小さなお山がたくさんあって、その小さなお山の中での「お山の大将」がつつましやかな幸せを得られるという仕組みもあっていいのではないかなと思うのです。
比較・検証からの序列立ては、科学的態度としては立派なものですが、人間社会すべてにこの態度を持ち込むと得てして不幸が起きます。
最大ではなく極大という観点でもって、いろんなジャンルのいろんなお山で、多くの人が幸せになれたらいいなと思う次第です。
ネット、特にSNSは、前提や背後の情報がないなかでの交流が多いので難しいところもあると思います。ネット内での閉じた環境であるとか、リアル社会での地域交流とか、そういうものに身を置きながら、自分とまわりの小さな幸せを享受できる人生を歩んでいきたいものです。
道院では、外形的に私が道院長としてお山の大将をやっていますが、集まている人は少林寺拳法にのみ人生を費やしているわけではありません。仕事もあれば家庭もあるし、別の趣味を持っている人もいる。その人たちとのかかわりの中で「少林寺拳法では」という前提を付けると私がお山の大将ですが、それを除けば他の人が私よりも長じているということが当然のようにあります。
同じ”お山”でも観点を変えれば対象は入れ替わるのです。
『本日の主役』のように、どんどんとスポットライトを当てる人をまわしながら、とはいえ自分にもそのライトは回ってくる。そういう道院や集まりって素敵だなと思います。
松戸上本郷道院は2025年度上期新入門を大募集中です!興味を持たれた方はぜひご連絡ください!