人類は、気候の変動によって食糧危機にあったとき、アルコール分解遺伝子を獲得して生き残ることができました。

１２００万年前のことです。

アルコールに強くなることで繁栄を勝ち得た人類に、
６０００万年以前ごろ、今度はアルコールに弱い新人類が突然現れたといいます。

コップ1杯で顔が赤くなってしまう、あまりお酒が飲めない人たちです。

日本人の44%はこのタイプで、
半分弱の人が、酒代で経済的負担を負わなくていいというめぐまれた人類に選ばれたわけです。

それにしても、進化の過程の中でアルコールに耐性ができた人類は、今度は一部の人種がアルコールに弱くなるように進化したというのです。

NHKの「食の起源／酒と人類」という番組は、これを、
『人類進化の一大ミステリー』といっています。

ミステリーといっているからには、理由がはっきりわからないということです。

しかも、一部の地域、人種に偏っていて、
お酒に弱いタイプは、欧米人、アフリカ人には0％。

中国人に52％。
日本人、44％。
韓国人、30％、というデータがあるそうです。

この変化が起こったのは、中国東南部にある紹興酒のルーツ、紹興市だといいます。

ここから東南アジア、日本に集まっています。

この地域的偏向には、どうも稲作文化の広がりと関係がありそうだとわかってきました。

稲作の広がりを示す分布図と、酒に弱い遺伝子の分布図が、ほぼ一致しているからです。

仮説の一つとして、水耕の衛生環境の悪さから、病気を引き起こす微生物が付きやすかったから、というのがあります。

番組の最初で、“アルコールは毒だ”といってますが、
正確には、体内でアルコールが分解してできるホルムアルデヒドという物質が、生体に対して毒性を発揮するからです。

お酒に弱い人たちがお酒を飲むと、ホルムアルデヒドを分解、無毒化しきれず、体内にたまってしまうのですが、このたまったホルムアルデヒドが、病原となる微生物を攻撃してくれた。

躰にホルムアルデヒドという毒が残るわけですから、よほどのことがあったに違いないわけで、
つまり、お酒に弱い＝病原体への耐性、という図式になって、
今に至っているのではないかという仮説です。

ただ、疑問は残ります。

はたして、お酒に弱い人が、病原体をやっつけるほどのホルムアルデヒドをため込むまで、お酒を飲んだだろうかということです。

もっとも、推論を働かせれば、神事とお酒は引き離せなかったので、
神事や祝い事があるたびに、無理に飲まされた、ということも考えられないではありません。

もしそうであれば、状況の犠牲となって、飲めないお酒を無理に飲まされた結果、病原体に対して耐性ができたという進化上のアイロニーが生まれたことになります。

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酒と人類／進化における一大ミステリー ― 犯人は、誰だ！