もったいない。もったいない。もったいない!
この経験が、すべてが、もったいない。
忘れたくない。
毎日が嵐のように過ぎていく。
その中で、風に吹かれながら、飛びそうな紙に、僕の手には大きめのペンで、書き始める。
ここでしかできない体験を、これからの人生の糧にするために。
明日を生きる、活力にする為に。
ベルギーに来てから、約1か月が経とうとしている。
毎日、うまくいかないことの連続。
予想外のことが起こって、生きにくさや、悔しさを感じる度、
「これこれ、これが海外に来る醍醐味。」
「僕しか経験できないことをできている。」
「新しい景色を見る為の必然。」
そう思うと、背中がゾクゾクして、次の瞬間に来る障害物にワクワクさえする。
「ああ、海外で苦労しているなぁ」と笑顔になる。
ヨーロッパは初めて、でも、それまでも海外が好きで、アジアと北アメリカをメインに、たくさん旅行をした。
アメリカでは高校と大学で長期の交換留学をした。
人生を振り返って、「どの時間が一番幸せだったか?」と聞かれれば、
間違いなく、高校留学と答える。
16年も前のことなので、思い出そうとすると、心に残っているのは良いことばかりだけど、
今回ベルギーに来る前に、その時の日記を読み返したら、
毎日毎日、本当に辛そうな自分がそこにいた。
当時の学校の嫌いだった人の声とか、学校の食堂のジャンクフードの匂いとか、スクールバスでやかましかった小学生とか、
そういうものが鮮明に蘇ってきた。
本当に大変だったと思う。
もう一度あの一年を繰り返せと言われても、もしかしたら今はその勇気は無いかもしれない。
それでも、あの時間が一番幸せだった。
あの経験があるから、今の自分があって、今の自分を好きでいられて、今の生き方に誇りが持てている。
幸せな生き方の、全てを、あの留学で得た。
それは、ただ留学をしただけではなくて、もがいて、苦しみながら、自分の弱さと毎日闘って目標に向かった結果だ。
つたない第二言語で、本当の意味で心を通わせるなんて無理だと、本気で思いながら、
日々逃げたい気持ちに駆られながら、自分の英語力を爆上げさせ、
その後に、離れたくないと思えるような関係をホストファミリーや友人と築けたことは、今でも奇跡のように思える。
家族の一員として、教会に行ったり、クリスマスに親戚全員と遊んだり、
学校の友達と夜中の12時から始まる映画を見て、大笑いしてポップコーンを溢しまくったり、
遠くの湖に泳ぎにいって微生物に喰われて騒ぎ合ったり、バンドをして、そのメンバーに恋をしたり。
あの時のあの場所に確かに僕はいたし、僕は自分自身のことをその土地出身だと思い込んでしまうぐらい、
気づいたら環境に溶け込んでいたけど、日本に帰ってきたら僕は日本人で、
時が経つごとにあの経験は夢だったんじゃないかと錯覚するようになった。
世界は広い。
自分が想像できないようなことが起きるところにこそ、自分が持つ視野が広がるチャンスがある。
それはきっと、夢みたいな出来事だと思う。
でも実在する。
世界はきっと、自分の可能性を広げてくれるもので溢れてる。
その経験をするために、また、僕はチャレンジをしている。
「こういう経験は、買ってでもするものだ」という言い方があるけれど、
まさに、その経験を買いに来たわけだ。
ここに来たからには、最大限、この時間を活かして、新たな視点を持てる自分になりたい。
想像通りにいかないこともたくさんあるだろう。
なぜなら、想像通りにならないことこそ、自分の枠の外にあって、可能性を広げてくれるから。
だからその経験を、
できるだけ細かく、ちゃんと書いておきたい。
心が動く経験を、まだ一か月、でももう、たくさんした。
ちゃんと残しておきたい。
もったいない。もったいない。もったいない!
この経験が、すべてが、もったいない。
忘れたくない。
毎日が嵐のように過ぎていく。
その中で、風に吹かれながら、飛びそうな紙に、僕の手には大きめのペンで、書き始める。
ここでしかできない体験を、いつかこれを振り返った自分が、それからの人生の糧にするために。
明日を生きる、活力にする為に。
日記のリスタートを、きる。