歩き慣れた道で、気になるお店ってある。そんなお店 藤沢本町 マカマキノハ。通りかかると、中からギターの音が聞こえて来た。オーナーの息子さんで湘南の伝説のジャムバンド「らぞく」のギター、ボーカルの竜太氏だった。ママさんが、「保険証取りにきたついでに2、3曲弾いてもらってるの」とのこと。竜太氏のオリジナルはかなり複雑にコードチェンジする楽曲だけど、なんとなくその辺においてあったガットギターでぽろぽろ合わせてみる。音のキャッチボールが始まった。もう、顔が笑いっぱなしだった。さすがにジャムバンドの出身、ナイスグルーブだ。不思議と、次にどんな音がくるのかわかる。テクニックの披露じゃなくて、音楽のやりとり。お客さんが高まり、ミュージシャンが高まる。何度もいい瞬間があった。「亀井さん(ビンテージギターショップ メロディメーカー店主)が倒れてから歌ってないの」とママがいいながら歌い始めた。音があふれだす。2、3曲でとまらない。どんどん曲はすすんだ。

最初、ぽつんと座っていたわざわざ遠くからきたお客さんはSPレコードやシングル盤のコレクタでかなりハードな聴き手だ。常連さんが次々入店してくると、自然にライブの雰囲気があったかくなっていく。ここには集客なんて言葉はない。いい人、いい音楽、いいお酒がある場所。そこには自然と人が集まってくるのだ。

ジェリーガルシアは言った。

「Have fun.」(楽しむことだよ)

難しいことはなにもないさ。自由に、楽しめばいい。
音なんて勝手に出てくる。心を自由にしてれば。

そこはとてつもなくあたたかくグルービーな場所だった。