これは2018年1月21日、三江線廃止約2カ月前の話である。
三江線は過去に何度か訪れたことがあった。
2018年1月初旬、廃線まであと3ヶ月しかない三江線にどうしてももう一度乗りたいと思案するが、お名残乗車の客で混雑しているとの情報がある。しかも前年の10月に一往復したばかりであるし。
いまいち踏み切れないでいると、1月上旬には沿線が大雪にみまわれ、三江線は全線運休となってしまった。ネットではこのまま復旧せずに廃線になってしまうのではないかとの憶測すらあった。
数日後、石見川本~江津は動いておりその他は代行バスが運行されているとの情報が。
全線を通して列車に乗ることが出来ないのなら乗り納め目当ての客は少ないだろうしすし詰め状態ではないだろう・・ということで、あえて一部運休中に三江線行きを実行した。
三次~石見川本はバス、石見川本~江津は三江線に乗るという計画である。
ほぼバス旅だ。
岡山から伯備線、芸備線経由で備後落合を経由して夕方に三次着。
(三江線同様、芸備線や備後落合も大好物である)
三次駅では、代行バスについて特に誘導もなかったが、時間前にジャンボタクシーが駅前に横付けしたので三江線のそれだとわかった。
乗ったのは、浜原駅行き432Dの代行バスである。
乗客は2名。
聞くところによると、運転手氏は少々不慣れとのこと。。
バスは定刻に三次駅を発車し、三次市街を抜けて各駅をこまめに経由、もちろん長谷駅にも停車。
外から各駅を眺められるので、これはこれで楽しい。
式敷で地元のかたが降りて、車内は私1人に。
途中、口羽駅でトイレ休憩。このころにはすっかり日が暮れた。
(口羽駅。この駅に列車が戻ってくる日が来るのだろうか。)
運転手氏は各駅でホームに上がって乗客がいないかをチェックするので、思いのほか時間がかかる。
さらに雪のため道路事情が悪く、宇都井の時点で18:30を過ぎていた。

(宇都井駅)
その後、小動物が飛び出してきたり、石見都賀駅の入り口を通り過ぎてしまったり、石見松原駅へのアプローチがわからなかったり、沢谷駅の場所を一緒にナビで確認したり。。。
気づいたらナビゲーターになっていた。
楽しいには楽しいけど、本当に江津にたどりつくのかこれは?と不安がよぎる。
そして、432Dの代行バスの終点である浜原駅前で降りたのは19時半に近かった。
駅前が真っ暗なのはいつものことだが、なぜか乗継の石見川本方面への代行バスがいない。
????
乗継のバスはすでに出発してしまったのだった。
なんてことだ。
最終バスに乗り遅れた。
まさかの野宿が頭をよぎる。
浜原のひとつ前の沢谷駅で代行バスの運転手氏がJR指令となにやら電話をしていたのだが、どうやら「客(私)は浜原まで行く」と伝えたらしく、最終目的地(江津方面)をJRに伝えていなかった。
不慣れなので、とにかく自分の担当だけしっかり果たそうとしたのだろう。
その時点で私の乗っていた浜原行きバスは浜原での乗継バスの発車時刻をとっくに過ぎており、それでJRの指令は乗継客はいないので代行バスの浜原到着をまたずに発車すべきと判断したようだ。
私: 「江津まで行きたいんですが。。」
運転手氏: 「列車動くのかな、大丈夫かな」
私: 「いやいや、そもそも列車動いてないし、ここからも代行バスだから」
さすがにここで放り出されても困る。
乗ってきたバスの運転手氏がJRに連絡する。
JRと運転手氏で「なんでちゃんと確認しなかったんだ」的な話だと思われるがひと悶着あったあと、一時間半後にタクシーを浜原に呼ぶという話を付けて運転手氏は三次へ戻っていった。
しかしまてよ、通常なら出発した列車が戻ってくるなんてありえない。
やはり今回はミスであるということとバスであるということ。さらに、早発したバスに乗客がいなかったこと等が重なり、特別に計らってくれたようだ。
それにしてもこの寒い浜原駅で一時間半か。。
ちょっと途方に暮れたが、野宿するかどうかの瀬戸際だ。信じて待つしかない。
しかし、本当に来るのか?
いやまてよ、さっきのジャンボタクシーで三次に戻れば野宿は容易に避けられたのではないか????
もはやこれまで。
覚悟を決めて駅構内をあるいたり写真を撮っていた。
誰もいない構内には、雪に閉ざされ脱出できなくなったキハ120が3両、電源を落として留置されていた。
無茶苦茶寒い。でも、愛しのキハ120ちゃんを3両も独り占めしてのまったりタイムは幸せ。
(鉄道展示館と化した浜原駅)
しばらくすると構内放送がながれ、出発したバスが戻るのであと15分待てとのこと。
助かった。
それより、無人駅でのこの手の放送が初体験で、ちょっとテンションが上がる。
放送通りに約15分後にバスがやってきた。
バスといってもこちらもジャンボタクシーで、三次からのジャンボタクシーよりは一回り大きい日本交通のタクシーだった。
早速ジャンボタクシーに乗り込むが客は私一人である。
途中、石見簗瀬あたりまで行って戻ってきたとのこと。
運転手氏は川本出身?らしく、各駅のことや水害のこと、付近の歴史など観光案内をしてくれ、あっという間に石見川本に到着した。
楽しい時間を過ごすことができた。
石見川本駅は誰もおらず、石見みえちゃんのお迎えもナシ。
(記憶が定かではないが、出発間際に地元の方が見送りに来てくださったかも)
駅にはまだ列車がいなかったが、しばらくすると江津方面からやってきた一両の列車が折り返しの最終江津行きとなった。通常は、ここで列車行き違いである。
(石見川本)
その最終江津行きに乗り込み、川本~江津は鉄道としての三江線の旅を味わうことができた。
ここでも乗客は私一人であった。
翌日も、川本~三次は運休だった。(江津にて)
(江津の行先表示。12:34は本来は浜原行き。)
旅先でのちょっとしたトラブルは、旅の楽しさを増幅するのだろう。思い出深い旅となった。
以上、廃線まであと少しにもかかわらず廃線ラッシュの三江線とは少し違う三江線を味わうことができたので、記録として残しておこうと思う。
後日談。
最後にもう一度乗りたい、なんて最初に書いたが、その後廃線までに4回も三江線に乗りに行ってしまった。
2018.3.31 浜原駅にて最終三次行き。







