小説 ストーカー編 第7話
こんにちは。ついさっきまで今日の更新を忘れていたヒロアキです。寒いですね~。こっちの方では今日雪が降るそうで……そういえば、雪が降って喜ばなくなったのはいつからなんですかね……?今日で、ストーカー編の更新は最後です。では、どうぞご覧ください。打倒!ストーカー作戦!~女子たちを守れ~ 第7話 一難去って…ヒロアキ君…ヒロアキ君…!!誰かがヒロアキを呼んでいる。暗い意識の底に沈んだ彼は、それを中々上がってこようとしない。嫌だ。もうみんなには……会えないんだ「起きなさい!!」ビクッと体を震わせ目が覚めた。その前にあるのは、見慣れない白色の天井。そして例の作戦に参加していた全員の姿。「佐伯さん……けが人に『起きなさい!』はないと思いますよ」「いーの、いーの。多少手荒に扱ったって!黙ってあんなことしてるんだもん」「確かにそうだけど、いくらなんでもこれは。彼女としてそれはまずいじゃないのか?」「東雲さんの言う通りよ。多少は心配してあげてもいいんじゃない?ただでさえこんなケガしたんだから」「えっと……みんなどうして……」ギャーギャーと言い争う声が聞こえる中、ヒロアキはおずおずと声を上げる。それに唯一反応してくれたのはりさだった。他はそれどころではないらしい「覚えてないの?」「……何を?」「呆れた。結構な捕物だったって聞いてるわよ?」りさからの言葉を総合すると、次のようなことだったらしい。ヒロアキが貞操の危機を迎えたその時、その部屋に複数の警察官が突入したそうだ。あっという間に犯人はその場で捕まり、ヒロアキは無事保護された。しかしヒロアキも安心してしまったからかなのか、そこで失神してしまい、病院に着いてから今の今まで気を失っていたというわけだ。「それで……犯人はどうなったの?」「現行犯逮捕されて警察に連れていかれたわ。初犯とは言え、実刑は免れないだろうって。下手すると10年近く入るかもって言ってたけど……。それにしてもびっくりしたわよ。あなたいつの間にあんなものを……」「あー、そうだった!!」思い出したように鞠香が声を上げた。「ヒロアキ君!!あれ一体どういうことよ!?なんで発信器なんか持ってたわけ!?」どうやら鞠香の怒りのポイントはそこだったらしい。自分の知らないところで勝手にやっていたことが許せないようだ。話を少し遡る。まだヒロアキの居所が掴めなかったころだ。「……?」鞠香はギュッと握っていたお守りの中に、何か硬いものがあるのに気付いた。取り出してみると……少し意外なものが入っていた。「これってもしかして……」ハッとした。自分にヒロアキが託した意味が分かったからだ。「東雲さん!これでヒロアキ君の居場所が分かるかも」「えっ!?」「ど、どういうことですか?」お守りに入っていたもの、それはある探偵会社のサイトへのURLとID、パスワードの三つが書かれた厚紙。くしゃくしゃにならないように手が込んでいる。「そうか……リアルタイム用GPSを仕込んでいたんだな。万が一に備えてこの会社からレンタルしたのか」「これで助手君の居場所が分かるってことかい?」「もちろん。ちょっと待てよ……えっと…あった!!」全員の目がパソコンに集中する。「元々の廃工場からそんなに離れてないな。アパートの一室か?」「とにかくこれを警察に伝えないと……」今となっては蛇足だが、そのGPSはヒロアキの履いていた靴下の中に縫い付けておいたそうだ。「言ってくれれば良かったじゃん!そうすればもっと早く助けられたのに!」「あー、それはごめんなさい。どっかで言えば良かったね」「でも、犯人もあの無線を盗聴してたんでしょ?結果的には良かったんじゃない?バレてたらもっと遅かったかもしれないわよ」「そうそう。下手するとヒロアキがそっちの方に染まっていたかもな」ニヤニヤしながら言うレイ。それを聞いた途端、ヒロアキが震えあがる。「レイ……それ冗談でも止めてくれよ。あれはもうトラウマだ…」しばらくは知らない男と話せないだろうなと苦笑いだ。まるで女性が言うセリフのようである。「まあまあ。五十嵐君も助かったんだし、良かったじゃん。鞠香ちゃんも酷かったんだよ。五十嵐君が殴られたとき大声出して泣いちゃって」「ちょ…エミちゃん!」「でもあの時の相楽さんもすごかったですよ。あんな姿初めて見ました」「えっ、何かあったの?」「佐伯さんに平手打ちして説教」「はぁ!?相楽さん何して…」痛っ…とヒロアキから声が漏れた。少し興奮しすぎたのか傷口が少し傷んでしまい、思わず頭を押さえる。「ほらっ、ちゃんと安静にしないからよ?……さて、ヒロアキ君も起きたことだし、私たちはもう帰りましょ?これ以上いたら休めないでしょ」「そうですね。……もうすっかり日も暮れてしまっていますし」「みんなちゃんと帰れるの?」ヒロアキが心配するのももっともな話だ。一人は捕まえたとはいえ、まだまだ変な奴は蔓延っているのだから。「大丈夫よ。全員親に迎えに来てもらったわ。……でもまだ佐伯さんの所が来ていないらしいから、ここに残ってね」「えっ?でも……」「ほらっ、良いから良いから。それじゃあね!ちゃんと治すんだよ」エミが出ていくのを皮切りにして、他も続々と病室を後にしていく。そして最後にりさが出ていき扉が閉まった瞬間、鞠香がヒロアキの胸に飛び込んできた。「ちょっと鞠香、俺こう見えて…いや見ての通り怪我人だから……」ここで鞠香の様子がおかしいことに気づいた。「……本当に良かったよ。連絡できないときはもうどうなるかと……」「ごめんね。心配かけちゃって。……正直とても怖かったよ。そっちの世界に行くのかなって、本気で思ったから」「……本当にごめんなさい。そんな怪我もさせちゃったし、心にも傷が残りかけちゃったから」「まだそれを言うか……大丈夫だって。重荷になんか思ってないし、勝手にやってるだけだからさ」ヒロアキは手をそっと伸ばして、鞠香の頭をそっと撫でる。「気にしてないから。鞠香を守れたら俺は満足だよ」「……うん!」大きく頷いた鞠香の顔には笑顔がキラキラと輝いていた。「ねえねえ、ヒロアキ君って別の意味で襲われかけたんだよね?」別の意味でのところが妙に強調しているのは、少しからかいたいという思いが見え隠れしている。「鞠香までそんな言い方……」「ごめんごめん悪い意味はないんだ……。私は、その……上書き出来たらなって」「上書き?……それって……まさか……」少し考えて、ヒロアキの顔が首元から頭の先まで赤くなった。それは鞠香も同じで、自分でも大胆なことを言ってしまったと思っている。実際顔も真っ赤だ。「……えっと、それは嬉しいんだけど、まだ怪我人やってる最中だから……」優しくしてください……。蚊の鳴くように小さな声でお願いした。普通は逆ではないだろうか。鞠香は言葉で答えなかったが、ヒロアキの体に乗ったりしないよう、ゆっくりとベッドに上がった。鞠香なりに頑張るつもりなんだろうなとヒロアキは勝手に解釈した。それから三日後。縫われた頭はまだ痛々しくヒロアキに残されてはいたが、ずっと入院していてもしょうがないと早めに退院した。医者からも激しい運動をしなければ日常生活に問題はないと太鼓判を押されている。そして意気揚々と学校に来たわけだが、どうも雰囲気がおかしい。何となくよそよそしいというか……。その原因はすぐに分かった。「何だこれ!!!???」思わず絶叫してしまった。手元にあるのは昨日発行された学園新聞。それに今回の事件について書かれていたのだが、その見出しが……。『男子高校生お手柄!!ストーカー逮捕!』『自らの身を挺した行動に記者も感動!』『関係者語る!撃退の一部始終!』どこの週刊誌だよと突っ込みを入れたくなる。そこには名前こそ書いていないが、見る人が見れば誰のことか分かってしまうような内容だった。二年の保健委員会所属とか、頭を負傷して現在入院中(近日退院予定)とか……。もう姿を見た瞬間に分かってしまうだろう。さらには犯人に襲われた時のことも書かれていて、好奇の視線に晒されること間違いなしの状態だった。どうりで来る途中にヒソヒソされていたわけだ。「誰がバラしたんだよ、これ……」だらんと腕を下げ、放心状態だ。「多分、神楽坂先輩に弱みを握られている誰かだと思う。それでどうしようもなくなって言っちゃったんじゃないかな」鞠香もやや困り顔だ。「あー、あの人か。確かに色んな情報握ってそうだからな……。睨まれたらどうしようもないか……」幸い被害に遭った人の情報は完全に伏せられていて、ヒロアキ以外の関係者は全員匿名扱いになっている。半ばヒロアキだけを晒し上げにしているに等しい。確かに男子生徒の活躍を描いた方が記事としては良いものになるだろうが、この場合には犯されかけた生徒という話題が先行してしまって、むしろそっちで興味を引いている形だ。「あー、これからどうしよう……。しばらくは息苦しい学校生活だろうな」机にへたり込んでしまったヒロアキ。これからどんなことを言われるか……想像するだけでも恐ろしい。「でも……人の噂も七十五日って言いますし、きっとすぐ忘れますよ」「そうそう。何かあっても今度は私たちがちゃんと守ってあげるからさ。どーんと任せてよ」そう言って胸を叩いたエミだったが、それでもヒロアキの顔は晴れない。見かねたエミは、「それじゃあねえ……五十嵐君が元気になるおまじないをかけようかな?」と言いながらヒロアキの耳に顔を近づける。そして、「…………………」何かを呟いた。それは鞠香や心実すら聞こえない大きさだったが、ヒロアキにはバッチリ聞こえた。その証拠に……。「な、ななな何言って…」あっという間に元気になった。しかも顔も真っ赤になって大慌てだ。「な、何?エミちゃんヒロアキ君に何言ったの!?」「ダーメ、教えない。五十嵐君も言っちゃダメだよ。教えたら効果が無くなっちゃうからね」「う…うん」「え……ええ!?何!?何言われたの!?」「佐伯さんちょっと落ち着いてください。周りの人みんな見てますよ」「落ち着けないよ!!これは一大事なんだから!!」その後もしばらくの間追及は続いたが、ヒロアキは最後まで口を割らなかったという。『五十嵐君カッコよかったよ。ちょっと惚れちゃった』The end.いーねー、モテモテで……