私は今から30年以上前、あるOAの会社の営業マンでした。そこはとても小さい会社で営業をする時にまずは会社の名前とどの様な会社かを説明する・・という作業から入らなければならないというものでした。営業マンとしては運も良く、ゼネコンの支店のOA機器を新しく立ち上がる現場に入れて頂ける様になり、営業成績は社内で一番、ポジションはその部署でのナンバー2というもので、実務者としては実質ナンバー1になれました。売上もあり、世の中もバブルの好景気もあって年齢からするとかなり良い給与を頂いていました。ただ自分自身は慢心もあって、繰り返される業務や日常に飽きてきて、その時に何の気なしに購入した転職情報誌に「大企業特集」というのが組まれていました。そこに掲載されていた大手不動産会社と大手ハウスメーカーに何の気なしに応募し、どちらも内定を頂いて、住宅業界と不動産業界の区別も分からなかった私は最初に内定を頂いたハウスメーカーに転職することにしました。この何の気なしにした転職がその後の私の進む道を大きく変えることになるなど、その時は知る由もありませんでした。
約2ヶ月掛けて引継ぎ、前職を退職し、少しのインターバルを経て、採用頂いたハウスメーカーに入社する日が来ました。新しい環境に飛び込む時、誰しも多少の緊張を覚えるものです。しかし、私がハウスメーカーに入社した時に体験した驚きと緊張は、想像以上のものでした。
朝礼という名の軍隊
初めての朝礼に参加した瞬間、私はまるで軍隊に入ったかのような錯覚を覚えました。社員全員が横長の一列に壁に沿って整列し、誰一人として私語をしている人はいず、口を結んでいる張り詰めた空気の中、朝礼はスタートしました。まず最初に成績発表があります。前日に何かしらの成果を出した人を全員の前で発表するのです。成績が発表されると拍手が湧きおこります。朝礼が始まって、間もなく私が皆さんの前に出て新入のご挨拶をしました。「この度、入社しました〇〇と申します。一生懸命、頑張りますので、よろしくお願いします!」という内容です。その後に各責任者が必要事項を伝達し、終盤に営業責任者の話、その後、支店長がお話しされます。その中のお話しの中でで初めて知ったのは、「頑張る」という言葉が禁止されているという事実でした。「〇〇君、頑張らなくても良いので、結果を出してください」と言われました。頑張ることは当然であり、重要なのは結果を出すこと。私がこれまでに経験した職場とも異なる、結果主義が徹底された環境でした。
言葉の壁
最初の3ヶ月間は、まさに苦闘の日々でした。住宅業界特有の専門用語や業界用語が飛び交い、まるで外国に来たような感覚に陥りました。畳一枚の大きさすらも理解していなかった私は、周囲が何を話しているのかさえも理解できず、毎日が戸惑いの連続でした。この時期は、住宅営業として必要な知識が何一つ身についておらず、ただ必死に周りの言葉を理解しようとする日々が続きました。
初めての挫折感
当時の私は、住宅業界の厳しさをまったく理解していなかったため、ノルマの重圧が次第にのしかかってきました。面接の時に面接官から聞いた営業のノルマは当時「月に一棟・・」というものですが、異業種から来た私はその難しさや大変さを全く理解しておらず「月一棟売ればいいんだ!簡単そうだ・・」と考えていました。しかし、それは大変な勘違いで、後にその難しさを思い知らされることになります。中途で入社してからの最初の3ヶ月間は、ほとんど何も成果を上げることができず、自分の無力さを痛感しました。
しかし、これが後に続く学びと成長のための大切なステップとなることとなります。