春野恵子を追っかけ、浪曲三人舞台を千日亭で、7月30日に見た。出演は、京山幸枝若、春野恵子、京山幸太。


お目当て、春野恵子の演目は、浪曲・太閤記から、日吉と小六、または、日吉丸矢作橋での出会い。

今日は、ツヤのある声を響かせた節が、絶品だった。啖呵をドラマチックに語るのが、春野恵子さんの魅力だと思っていたが、節も素晴らしいのが、よくわかった。ノリに乗っている歌声を聞いて、ウキウキしてきた。


この浪曲の内容は、秀吉の幼名・日吉と蜂須賀小六が矢作橋で出会い、日吉が手柄を立てて、小六が自分所有の名刀を盗んだら、ほうびにあげると言い、さあそこから日吉丸は盗めるかどうか・・・


はずむテンポでキビキビと会話する啖呵に、

初め声をしぼって自在にコントロールし、後半のびやかに歌をうたって喜びを表現する節。

すべてに若々しく、明るくイキイキしていて、現代のドラマを、音楽的な喜びに満ちたミュージカルのセンスで伝えてくれていて、またまた感動した。 

最近聞いた樽屋おせんは、思いを伝える会話の現代性に今を感じたが、この太閤記の浪曲では、弾むリズムと明るい節回しの歌の部分が魅力的で、つまり、啖呵も節も、両方とも、今や浪曲界の一級品になったことを見せつけてくれた。


それに、今日の春野恵子は表情が豊かで、歌う時には、歌詞に合わせて喜怒哀楽を伝え、特に喜びの表情では目を輝かせたり頬をふくらませたり、千変万化する表情を繰り出し、思いっきり愉しませてくれた。啖呵でも、登場人物の気持ちになりきった表情と仕草を見せてくれ、演じ手としての才能を発揮していた。


ほんと、春野恵子の浪曲を見終わって、いま大阪で見る演芸の世界で、一番キビキビとしたドラマを見せてくれて、最も感動を与えてくれるのは、春野恵子だと断言できる。〜〜落語漫才講談浪曲のすべての中で。

〜〜そこには、笑いもあり、ハラハラもあり、節で酔わせるもあり、舞台の喜びの多くを与えてくれる。


今こそ、春野恵子の浪曲風ミュージカルを、日本中のエンターテイメントを好きな好事家に見てほしい。


浪曲や講談が、今みて時代を感じ古く思えるのは、

先輩たちの芸がテンポが遅くてヌルく感じる。

さらに先輩たちの声自体、歳をとっていてキビキビしていない。


神田松之丞が今の人に講談の古い話でも受け入れられているのは、テンポが良くリズム感があり、話をイキイキと伝えてくれるからだ。松之丞の話で、古くさいと感じることがない。


春野恵子の浪曲もそうで、とても現代的であり、彼女の年齢から考えても、今が昇り調子の、サイコーに近づいている時期なので、今こそ見ごろの浪曲師と呼べる。頂点は、すぐそこだ。


この浪曲の詳しいストーリーとは。

日吉と蜂須賀小六正勝との参州矢作橋での出会い。橋の上で寝ていた日吉の頭を蹴られて目覚め、野武士の男に、蹴ったからには挨拶しろ、とわめく。実はそれが野武士の頭目・蜂須賀小六正勝とわかり、気に入られ家来になれ、と言われる。そして、小六一味の野武士たちが豪農の家へ押し込んだ時、なんと日吉に助けられ、小六の住みかに戻って小六から、名刀を三日のうちに盗めば、日吉にやると言われる。雨の降り続く夜から朝まで小六は名刀を守るが、もう来ないだろうと思った一瞬のすきに、日吉は盗みに成功した・・・。


浪曲のルールとして、客席から声をかけるのは日常で、掛け声も浪曲の流れの一つとして、認められている。いや、望まれているのだ。客層も浪曲ファンのおじいちゃんが中心で、吉本をはるかに超えたファミリーに見える。温かさを欲しい人は、ぜひ浪曲へ❗️


京山幸太。会津小鉄を快調に読んだ。

京山幸枝若。3年に1回、病気になり、体調がもうひとつ。先週、内臓の胆嚢を手術でとったという。

浪曲は、岐阜の弥太郎を、朗々とした良い声で、どうだいい声だろうと自信満々に歌っていた。よっ、大統領❗️