「あつまれ!描く将」的にこの1年を振りかえる | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。本業が忙しすぎて、地域対抗戦の動画が全く視聴できていない雁木師でございます。今日は旧ブログ時代からの年末恒例企画、「あつまれ!描く将」的にこの1年を振り返ることにしたいと思います。長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

まずは、「あつまれ!描く将」についてご説明したいと思います。これは将棋世界のイラストコーナーのタイトルで、読者の方々のイラストを掲載する内容です。掲載されるのは毎号10枚までですが、将棋世界にて特集が組まれる場合は増加するケースやコーナー自体をお休みするケースもあります。

私は「あつまれ!描く将」コーナーの開始から、「描く将」としての活動の傍らコーナーの分析を行い、年末に当ブログにて年間報告をさせていただくことにしています。昨年の分析結果については下記リブログ記事をご参照ください。

それでは、今年の「あつまれ!描く将」を振り返りたいと思います。分析ポイントは今回は2つです。

①イラストのモデルの棋士

②イラストの特徴

なお、これまで分析ポイントに上げていたイラストの作者については、今回から発表を廃止いたします。理由としては、ペンネームを改名された方もいること。これは今回の作品を見て気づいたのですが、同じ作風でもペンネームを変えたと思われた方がいらっしゃいました。ペンネームを改名する方の理由はいろいろありますが、中にはネガティブな要因で変更される方もいることが分かりました。この辺りはあまり深入りするのはやめたほうが良いと判断し、今回から外すことにしました。

今回の分析の対象範囲は今年2月発売の2023年3月号から先日発売の2024年2月号まで。なお、先日発売の2月号ではコーナー自体がありませんでした。

 

では、①のイラストのモデルの棋士について見ていきます。今年将棋世界に掲載されたイラストはのべ110枚。このうち、1枚はモデルが棋士以外ということで「判別不可」としてカウントしています。「判別不可」のイラストについては②のイラストの特徴について触れたいと思います。

今年の「あつまれ!描く将」にて掲載された棋士や将棋関係者の方のイラストはのべ65名。まずは掲載された枚数のランキングを発表します。掲載枚数のカウントはこれまでと同じく、単独作(1枚の絵に1人のみ)の場合は単純に1枚とカウント。複数作(1枚の絵に2人以上)の場合は描かれた棋士1人ずつ1枚とカウントしています。

 

それではランキングに入ります。今年は第3位から発表します。第3位の方は、いずれも5枚掲載されて3名いらっしゃいます。

まず1人目は…

渡辺明九段

渡辺九段の今年1年は、タイトル戦では棋王戦と名人戦で防衛戦に臨みました。しかしどちらも藤井聡太竜王名人に奪取を許し、2004年に初タイトルを獲得して以来20年近くにわたって保持したタイトルをすべて失いました。捲土重来を期すべく、順位戦や王位戦、王将戦などで挑戦者を目指して奮闘を続けましたが、今年は挑戦者になることはありませんでした。

一方で、盤外では様々な話題を提供。名人戦第1局に敗戦後、ご自身の旧Twitter(現在のX)では「えぐいよなあ」とツイートし、藤井聡太竜王名人の強さが桁違いであることを見せつけられたファンの方もいらっしゃったかと思います。また、ご自身が永世称号を保持されている竜王戦では、第4局にて立会人を務められたことも話題に。かつての大舞台で戦われた渡辺九段も、ついに立会人を務める時代になったのかと思うと、時の流れの速さを感じます。

非公式戦では、ABEMAトーナメントでは佐々木勇気八段と岡部怜央四段を指名し「チーム渡辺 ランランラン」を結成。チームは予選敗退でしたが、チーム動画ではご自身の趣味であるカーリングに挑戦される動画が話題を呼びました。また、来年放送開始の地域対抗戦ではチーム関東Bの監督を務められます。どんな棋士を指名されるか注目です。

さて、渡辺九段の掲載傾向を見ると、上半期(3月号~8月号)に3枚、下半期(9月号~2月号)に2枚の掲載でした。棋王戦の掲載記事が出ている頃に掲載が集中した形です。

 

続いて2人目は…

三枚堂達也七段

 

三枚堂七段の今年1年は、今年は竜王戦1組に在籍も5位決定戦で敗れて2組降級。今期は2組から挑戦を狙います。順位戦はC級1組で5勝2敗の成績も昇級争いは順位の関係でやや厳しいか。そのほかの棋戦では叡王戦では七段予選Aブロックに登場。しかし、予選決勝で敗れ、本戦トーナメント進出はなりませんでした。第95期棋聖戦では一次予選を突破し二次予選へ駒を進めます。二次予選では、あと1つ勝てば決勝トーナメントに進出という状況。相手は三浦弘行九段です。

第17回朝日杯では、本戦トーナメントからの登場。1回戦で久保利明九段と対局します。今期はここまで14勝7敗の成績で勝率ランキングの第11位タイに位置しています。

非公式戦では、ABEMAトーナメントでは佐藤天彦九段から指名を受け、戸辺誠七段と3人で「チーム天彦 天辺堂」を結成。チームは本戦に勝ち進み、ベスト4まで進出。チーム動画では、ダーツに挑戦されるなど盤上、盤外でファンを楽しませました。

さて、三枚堂七段の掲載傾向を見ると、上半期に2枚、下半期に3枚の掲載でした。12月号と1月号に掲載が集中。12月号は2枚掲載されましたが、どちらもチーム天彦としての掲載でした。さらに詳しく見ると、5枚のうち3枚は同じ投稿者の方による掲載。これは分析していると見かける傾向ですが、いわゆる「推し」の力です。これは1人の投稿者の方による特定の棋士中心に掲載されている現象で、私がこれまで分析した中では藤井竜王名人はもちろんのこと、窪田義行七段、高見泰地七段、伊藤沙恵女流四段にも同様の傾向で掲載枚数が伸びたことがありました。

ちなみにその投稿者の方のコメントによれば、三枚堂七段は今年で棋士デビューされてから10年の節目。応援の気持ちで描かれていらっしゃるのが、イラストとコメントからも伝わってきます。

 

そして、3人目は…

佐々木大地七段

佐々木大地七段の今年1年は、何といっても棋聖戦と王位戦でのダブルタイトル挑戦が光ります。結果はどちらも藤井竜王名人の前に敗退しましたが、どちらも1勝を返すなど、初挑戦とは思えない堂々とした戦いぶりに多くのファンが興奮と感動を覚えたことでしょう。今期の成績はここまで29勝16敗。対局数45局は羽生善治九段と並んで2位タイ。勝ち数は5位の成績です。

非公式戦では、師弟トーナメントでは深浦康市九段とタッグを組み「大地球」を結成し準優勝。ABEMAトーナメントでは山崎隆之八段に指名され、中村太地八段と3人で「チーム山崎 フロンティア」を結成。チームは予選敗退となりましたが、チーム動画ではリーダーの山崎八段をおもてなしするために、アップルパイを手作り。料理男子ぶりも健在です。

さて、佐々木大地七段の掲載傾向を見ると、上半期に2枚。下半期に3枚掲載されました。8月号から11月号にかけては4号連続で掲載されています。ダブルタイトル戦の記事が掲載されている時期に掲載が反映された形です。のちほど②のイラストの特徴でも触れますが、藤井竜王名人との対局型で2枚、深浦九段との師弟型で1枚掲載されています。もともと深浦九段との絆がアツいことでも知られる佐々木大地七段。今年の複数作における格好の被写体と言えたかもしれません。

 

続いて第2位の発表です。第2位は…

羽生善治九段

掲載枚数は14枚です。

羽生九段の今年1年は激動の1年だったと言えるでしょう。1月に開幕した王将戦では藤井聡太竜王名人との番勝負がついに実現。「ドリームマッチ」「ゴールデンカード」と称されるほど、すべての将棋ファン注目の番勝負でした。結果は藤井竜王名人に軍配が上がりましたが、羽生九段の奮闘にも多くのファンが感動し、王将戦名物の勝利の「罰ゲーム」も話題を呼びました。

そして6月には日本将棋連盟の会長に就任。佐藤康光前会長の跡を継ぎ、新しい将棋会館建設やさらなる普及を目指して奮闘されています。対局と会長職の「二刀流」で多忙を極めるであろう羽生九段。今年から創設された50歳以上の棋士が参加できる達人戦で見事優勝。表彰式では、自分で自分を表彰する「セルフ表彰式」がファンの話題をさらいました。

また、王座戦の挑戦者決定トーナメントと銀河戦では藤井竜王名人と本戦トーナメントで再戦。結果は敗れましたが、レジェンドここにありと言わしめる指し回しに感動されたファンの方もいらっしゃるではないでしょうか。

非公式戦では、ABEMAトーナメントでは梶浦宏孝七段と伊藤匠七段を指名し「チーム羽生 不動心」を結成。予選の大活躍で自身は2年ぶりに決勝トーナメントに進出。決勝トーナメントでは2回戦敗退となりましたが、その強さはフィッシャールールでも存在感を発揮され、今年から新設された個人賞では最高勝率賞を受賞されました。そして、来年にはご自身が考案された新企画「地域対抗戦」がスタートします。羽生九段はチーム関東Aの監督を務められますが、どんなチーム作りをされるのか楽しみです。

さて、そんな羽生九段は王将戦の記事が目立つ上半期に掲載枚数が集中。このコーナーの絶対王者(?)でもある藤井竜王名人に一歩も引けを取らない人気ぶりでした。下半期になり掲載枚数は減りましたが、それでも人気は健在です。

 

 

それではいよいよ、第1位の発表です。第1位はもちろんこの方です。

藤井聡太竜王名人

掲載枚数はダントツの35枚です。

藤井竜王名人の今年1年は(私が説明するまでもありませんが念のため)、1月から羽生九段との王将戦を戦い防衛。2月から開幕した棋王戦で渡辺九段から棋王を奪取。その後も勢いは止まらず、年度初めの4月からの名人戦でも渡辺九段から名人を奪取し、史上最年少で名人に。同時期に行われた叡王戦でも、菅井竜也八段の挑戦を退け防衛。6月からの佐々木大地七段との棋聖戦と王位戦のダブルタイトルマッチも見事に制して防衛。そして8月から続いた王座戦で永瀬拓矢九段から王座を奪取。前人未到の八冠独占を達成し、将棋会の枠を超えて社会現象を巻き起こしました。10月から行われた竜王戦でも伊藤匠七段の挑戦を退け防衛。タイトル戦はいまだ負けなしです。

一般棋戦では、2022年度に朝日杯とNHK杯を制し、2022年度の一般棋戦(朝日杯、NHK杯、銀河戦、JT杯)を制し、「一般棋戦グランドスラム」を達成。2023年度はJT杯を連覇するも、銀河戦では決勝戦で丸山忠久九段に敗れて連覇を逃しました。

一方、非公式戦では昨年度に行われたABEMA師弟トーナメントでは、杉本昌隆八段とタッグを組みチーム杉本「味噌煮込み」を結成。残念ながら予選敗退も、チーム動画ではおなじみの鉄道好きの一面を垣間見る姿に多くのファンを笑顔にされました。

今年度のABEMAトーナメントでは、澤田真吾七段と齋藤裕也四段を指名し「チーム藤井 トウカイテイオー」を結成。チームは本戦ベスト4ながら、個人では圧倒的な成績を見せつけファンに衝撃を与え、個人賞では予選最高成績賞を受賞されました。また、来年放送開始の地域対抗戦では、チーム中部にエントリー。監督の杉本八段からの指名はほぼ確実な状況で、来年も将棋界を引っ張る存在であることは間違いないでしょう。

さて、そんな藤井竜王名人ですが、今年もほぼ毎号安定して複数枚掲載。掲載されなかったのは12月号のみという圧倒的な勢いで、2019年末の分析開始から5年連続で掲載枚数1位を達成されました。やはり、対局があるときは将棋界の枠を超えて報道される過熱ぶりは描く将の世界でも例外ではありません。

 

 

さてここからは、このコーナーで描かれている棋士の傾向を見ていきます。こちらの表をご覧ください。

今年発売の将棋世界「あつまれ!描く将」における年代別の棋士の掲載枚数を記した表です。なお、年代については本日(12/30)時点での年齢を基にしています。この表を参考に分析を進めていきます。

 

1.年齢…ここでの年代は女流棋士は女流棋士枠としてカウントしているので除いています。また、引退された棋士・女流棋士や将棋関係者、「判別不可」のイラストは「その他」の枠としてカウントしています。最も多いのは20代の棋士です。これは言うまでもなく、藤井竜王名人が圧倒的に掲載枚数のほとんどを占めていることが大きな要因ですが、29歳の棋士の方々の存在も大きいです。複数枚掲載された方は5名。このうち2名は「藤井世代」で3名は28~29歳の方々でした。藤井世代は別格にして、若手で指し盛りとも呼べる世代の方々は期待を込めて描かれる方も多いですね。

次いで多いのが30代の棋士。こちらは、3位タイにランクインされた渡辺九段や三枚堂七段の掲載枚数も大きいですが、複数枚掲載された方々が9名いらっしゃるという層の厚さが特徴です。3枚以上描かれた棋士の方はのべ9名。このうち6位以下を見てみると…

6位タイ(2名)…4枚

・豊島将之九段

・永瀬拓矢九段

8位タイ(2名)…3枚

・佐藤天彦九段

・菅井竜也八段

以上いずれも、人気と実力を兼ね備えたA級棋士の面々ばかりです。最も、今期のA級順位戦に参加されている棋士の年齢層を見ると、29歳の佐々木勇気八段を除いて全員30代という状況です。ゆえに最も指し盛りのピークを迎える世代だけに、応援したくなる棋士の方も集中する結果なのでしょうか。

そのほかの傾向を見ていくと、10代の棋士1枚は藤本渚四段。50代の棋士が伸びたのは、言うまでもなく羽生九段の掲載枚数が後押しした結果ですが、複数枚掲載された方が3名いらっしゃいました(羽生九段、佐藤康光九段、中川大輔八段)。一方で40代の枚数が伸びなかったのは、タイトル挑戦に絡む活躍される棋士の方がほぼ少なかったことが要因と言えるでしょう。また、60代以上の棋士1枚は谷川浩司十七世名人でした。

 

 

2.女流棋士…今年の「あつまれ!描く将」で描かれた女流棋士の方はのべ17名。このうち2枚掲載された方は、西山朋佳女流四冠、鈴木環那女流三段、山根ことみ女流三段の3名でした。

掲載された方の年代を見ていくと、10代の方が5名、20代の方が8名、30代の方が4名という結果です。この中で、最年少は鎌田美礼女流2級(15歳)、最年長は中村真梨花女流四段と鈴木女流三段(36歳)でした。

女流棋士の場合、メディア露出が多いのは、対局よりも中継の聞き手や棋譜読み上げというケースがほとんど。近年は女流タイトル戦もYoutubeなどで視聴できる時代ですが、注目度という点では公式棋戦よりやや劣るという感が否めないのが現状です。その中で掲載されるということは、作風の評価はもちろんですが「推し」の力を感じる作品も多いと言えるでしょう。

今年デビューされた女流棋士の中では、今井絢女流初段(2月)と砂原奏女流2級(9月)が見事掲載。今年は日本将棋連盟から6名、LPSA(日本女子プロ将棋協会)から1名の女流棋士が誕生されました。今後のご活躍に期待が高まります。

女流棋士の掲載傾向を見ると、各号平均で1~2名程度掲載されているという計算です。ただし掲載枚数自体はばらつきがあり、4名掲載されている号もあれば、掲載枚数0の号もあります。なお、今回掲載された17名すべてが日本将棋連盟所属の女流棋士の方々で、LPSAの方々の掲載はありませんでした。やはり、LPSAやフリーの女流棋士の方は、将棋連盟所属の方と比較してメディア露出がそれほど多くないことが影響しています。とはいえ、渡部愛女流三段や島井咲緒里女流二段はABEMAの放送でもお見掛けすることはあります。また、LPSAもYouTubeチャンネルを開設されており、次世代の女流棋士育成に力を入れていることがうかがえます。

3.メディア露出とSNS…ここでいうメディアとはABEMAなどのインターネットテレビはもちろんですが、Youtubeといった動画投稿サイトもメディアの一種として含めております。今年も終わってみれば藤井竜王一強で掲載枚数第1位でした。その理由としてはやはりメディアの「地の利」は欠かせません。藤井竜王名人は今年すべてのタイトル戦の番勝負に登場。NHKや朝日杯などの一般棋戦でも優勝、もしくは準優勝という結果を収めました。

藤井竜王名人は勝っても負けてもニュースになります。「ネタバレ棋戦」と呼ばれる銀河戦では、ケーブルテレビの囲碁将棋チャンネルが本放送に先駆けて、配信サービスの「囲碁将棋プラス」でプレミア公開されています。なので、囲碁将棋チャネルの本放送の前に結果を知ることが多く、先日放映された銀河戦の決勝戦での藤井竜王名人の敗戦も本放送の前に新聞記事になってしまうという事態に。それだけ、藤井竜王名人の対局結果は注目度の高いことの象徴と言える現象です。今年の流行語大賞に「藤井八冠」がノミネートされたのも納得できます。

さて、注目度と言えば今年のタイトル戦で注目を集めたのは王将戦と王座戦でした。王将戦は前述の通り藤井ー羽生のゴールデンカードの実現。王座戦では藤井竜王名人の挑戦までの過程におけるスリリングな対局の展開と、五番勝負で八冠達成をかけた永瀬九段との激闘でした。言うまでもなく、どちらも解説と聞き手付きでの中継。こうなれば他の棋士の追随を許さない掲載枚数になることは必至です。

注目と言えば、羽生九段の将棋連盟会長就任も大きなニュースとなりました。偉大なるレジェンドの会長就任は、将棋界の新たな時代へ向けての更なる一歩になったと言えます。また、藤井竜王名人と羽生九段はついにCMでも共演されました。

CM自体は昨日から放映開始とのこと。将棋ファンのお正月の楽しみがまた1つ増えたのは喜ばしい反面、藤井竜王名人のタイトなスケジュールに心配という声もあるのも事実。これもまた、「強者の宿命」と言える現象でしょう。

 

 

 

今年はXを新しく解説された棋士の方々も相次ぎました。4月には豊島九段が開設。アイコンのお写真の赤いバケツを持っている少年時代の姿に驚いた方もいらっしゃるかと思います。このアカウントから生まれたハッシュタグ「#豊島ブートキャンプ」は、先日発表された【将棋界流行語大賞2023】にて大賞を受賞されました。

5月には鈴木大介九段が開設。鈴木九段は史上初のプロ雀士との「二刀流棋士」になったことが大きな話題となりました。そして9月にはMリーガーデビューを果たし、その一挙手一投足は将棋ファン、麻雀ファン双方から注目の的を集めております。

10月には佐藤康光九段が開設。その内容は、ご自身の対局結果はもちろんのこと。6月まで将棋連盟の会長職を務めただけあって、将棋関連の宣伝(最近では叡王戦の「見届け人」募集や将棋会館建設のクラウドファンディングなど)やメディア出演の告知など、多方面にわたってPR活動を行っております。会長職を退いても、将棋界の今後を見据えた発信力には頭が下がる思いです。

 

このように、Xの使い方は棋士によって様々です。共通しているのは、こういった発信がさらに将棋を身近に魅力的に、楽しく伝えようという意図を感じることです。ここから、描く将のインスピレーションも生まれてくるかもしれません。

 

 

以上3つの観点から、イラストのモデルの棋士について分析してきました。ここからは予測結果と来年の予想を見ていきます。今年の結論は傾向はほぼ予想通りでしたが、羽生九段の枚数は予想よりに多かったという印象です。会長就任が掲載枚数に追い風となったことは否定できません。ブレイク棋士予想では、小山怜央四段と鎌田女流2級がそれぞれ1枚ずつ掲載されましたが、徳田拳士四段は掲載されませんでした。やはり今年も、「藤井一強」状態は相変わらずの状況であることが描く将の世界でもうかがえます。

今年のタイトル戦の挑戦者を見ていくと、羽生九段(王将)、藤井竜王名人(棋王、名人、王座)、菅井八段(叡王)、佐々木大地七段(棋聖、王位)、伊藤匠七段(竜王)という結果でした。今年のタイトル戦挑戦者は20代の棋士が多く、これが年代別の掲載枚数に影響した形です。

 

ではこれを踏まえて、来年の予想に入ります。来年も「藤井一強」傾向は続くと予想します。人気と知名度抜群の藤井竜王名人ですから、来年も圧倒的な掲載枚数になることは間違いないでしょう。となると、誰がその流れを食い止めることができるかというわけですが…。ここで現在のタイトル戦の進捗状況を見ていきます。

王将戦は菅井竜也八段が挑戦されます。今年は叡王戦でも奮闘した菅井八段。久々の2日制のタイトル戦登場で、どのような戦いを見せてくれるか注目です。

棋王戦は伊藤匠七段が挑戦。竜王戦ではストレートで藤井竜王名人の前に屈した伊藤匠七段。注目の同学年対決の第2ラウンドはどちらに軍配が上がるでしょうか。

A級順位戦はここまで全10名が6局を終了。豊島九段が6戦全勝で首位。5勝1敗で菅井八段が追いかける展開です。このお二人は最終局で直接対決が組まれています。果たして名人挑戦は誰になるでしょうか?

叡王戦は本戦トーナメントの組み合わせが発表されました。

若手からベテランまで多彩な顔ぶれがそろった構成ですが、誰が挑戦者になるかは予測不能と言ってもいいでしょう。個人的には銀河戦優勝の丸山九段の戦いぶりに注目です。

一般棋戦も見ていきます。朝日杯は本戦トーナメントの組み合わせが決定。

連覇を狙う藤井竜王名人は、初戦で斎藤慎太郎八段と対局。永瀬九段と髙見七段はかつての叡王戦の番勝負の再現になりました。果たして優勝は誰の手にわたるでしょうか?

NHK杯は3回戦の4局が終了。ベスト8進出を決めたのは、中村太地八段、八代弥七段、増田康宏七段、伊藤匠七段の4名です。残り4局はどれも好カードばかり。また、来月には藤井竜王名人がNHK杯で初めて解説を務められることが発表されました。対局同様、注目が集まります。

 

女流棋戦も見ていきます。女流名人戦は西山女流名人に里見香奈女流四冠が挑戦。今期は、清麗、白玲、倉敷藤花の番勝負で相まみえた女流二強。果たして、今期最後の大一番を制するのは?注目の第1局は1/14(日)開幕です。

マイナビ女子オープンはベスト4が出そろいました。準決勝のカードは、北村桂香女流二段ー伊藤沙恵女流四段と大島綾華女流初段ー加藤桃子女流四段の組み合わせです。注目は大島女流初段。先日行われた本戦2回戦で里見女流四冠に勝利しベスト4を決めています。果たして西山女王への挑戦権は誰が手にするでしょうか?

西山白玲への挑戦権をかけた女流順位戦A級は3回戦が終了。今期は9名で争われる中で里見女流四冠と石本さくら女流二段が3戦全勝で暫定首位となっています。果たして挑戦権は誰の手にわたるでしょうか。

若手女流棋士の登竜門、YAMADA女流チャレンジ杯は1/3(水)に決勝戦を迎えます。今期の決勝戦は野原未蘭女流女流初段ー磯谷祐維

 

では最後に、来年ブレイクが予想される棋士を見ていきたいと思います。なお、ここでいう「ブレイク」とは掲載枚数が増えそうな棋士のことを呼び、実際の将棋の成績とは関係ありません。今回も、3名のブレイク棋士を予想しました。まず1人目は…

藤本渚四段

藤本四段は昨年10月に四段昇段した現役で唯一の10代棋士。今期は新人王戦で準優勝、加古川青流戦で優勝と若手棋戦で着実に実績を残しました。また、王位戦では6ブロック予選決勝で兄弟子の菅井八段に勝って王位リーグ入り。叡王戦でも段位別予選を制して、本戦トーナメント進出を決めています。今期の成績は36勝6敗。対局数は第4位、勝ち数は第2位、勝率は堂々の第1位できており、今期の新人賞候補と言ってもいいでしょう。

衝撃を与えたのは、今年のABEMAトーナメント。ドラフトで千田翔太七段から指名され、西田拓也五段と3人で「チーム千田 シーソーゲーム」を結成。予選Eリーグでは渡辺明九段に勝利し、チームの予選突破に大きく貢献されました。

藤本四段は前述しましたが、今年は1枚掲載。今後の活躍次第では、来年の描く将をにぎわせてくれる可能性を秘めています。ブレイクの条件は、タイトル挑戦が一番の近道です。現在勝ち進んでいる叡王戦が直近のチャンスかもしれません。

 

続いて2人目は…

上野裕寿四段

上野裕寿四段は今年10月に四段昇段したばかりの新人棋士。なんと、プロデビュー戦が新人王戦決勝三番勝負の第1局という大舞台でした。同門の藤本四段との三番勝負を制して、見事新人王戦優勝に輝きました。この優勝はデビューから史上最速の棋戦優勝ということで、先日発売の将棋世界2月号にもその話題が掲載されました。

 

デビュー後の成績は4勝1敗。竜王戦では加藤桃子女流四段、横山友紀四段を連破。堂々の竜王戦デビューを飾っています。ブレイクの条件は、ABEMAトーナメントでの活躍が最も早い近道でしょうか。また、新人王戦優勝の慣例ではNHK杯の予選が免除されますが、果たして来年はどんな活躍を見せてくれるでしょうか。

 

そして3人目は…

内山あや女流初段

内山女流初段は2020年に女流2級になり女流棋士デビュー。今年3月に女流名人戦の予選を突破し、女流名人リーグ入りを果たして女流初段に昇段されました。その女流名人リーグでは初参加ながら大健闘の成績。7勝2敗で里見女流四冠ど同星で挑戦者決定プレーオフに進出されました。プレーオフでは残念ながら里見女流四冠に敗れましたが、その戦いぶりは今後の飛躍を予感させるものでした。現在は、女流順位戦ではC級で2勝1敗の成績。今期はD級から昇級された内山女流初段。順位の関係で昇級争いはやや厳しい戦いになっています。

内山女流初段のイラストは今年は1枚掲載。ブレイクの条件は、やはり女流タイトル挑戦と奪取です。その近道は大活躍で残留した来期の女流名人リーグでの活躍、すなわち女流名人挑戦です。女流棋界は里見西山の二強時代が続く予感がしますが、内山女流初段にはその流れに風穴を開ける大活躍が期待されます。

 

 

以上、来年のブレイク棋士の予想でした。果たして来年は、どんな棋士が「あつまれ!描く将」を沸せるのか注目です。

 

 

次に②イラストの特徴について見ていきます。まずは優秀賞の作品の傾向です。今年の傾向としては、バラエティーに富んでいるという印象でした。シンプルなスタイルと趣向を凝らすスタイルの二極化が進み、将棋同様に主張点や個性、棋士への愛が強い作品に優秀賞がつく傾向と言えます。

 

次に描かれている人数を見ていきます。単独作と複数作の年間比率は8:2で単独作の作品が多いですが、昨年と比較すると複数作の作品が増えました。複数作のイラストは今年1年で24枚掲載。それぞれ見たところ、様々なパターンに分類できました。

 

1.対局型…複数作のオーソドックスなパターンで、その名の通り対局者のお2人を並べて描くタイプです。今年は12枚掲載で最も多い王道パターンとも言えます。言ってしまえば当たり前ですが、すべての作品に藤井竜王名人が掲載されています。

 

2.企画型…番組やイベントなどの複数棋士で活動するパターンです。今年は6枚掲載されました。内訳はABEMAトーナメントが4枚。SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦(2022年版)が1枚。Youtubeが1枚(棋士中村太地将棋はじめチャンネル)という結果でした。

 

3.家族型…その名の通り家族で1枚のイラストを構成したパターンです。今年は3枚掲載されており、内訳をみると夫婦型が2枚、親子型が1枚でした。夫婦型の2枚はどちらも今年結婚された新婚さんで、本田奎&山根ことみ夫妻と千田翔太&中村真梨花夫妻でした。親子型の1枚は久保利明九段と娘さんの翔子女流2級でした。棋士同士結婚の報道があるかどうかでこのパターンの増減が決まっていくのも特徴の1つです。

 

4.一門型…師弟や同じ一門の2人(もしくは3人以上)を1枚のイラストに描くというパターンです。今年は2枚掲載されており、詳しく見ると師弟型が1枚、同門型が1枚という結果でした。師弟型は前述したとおり深浦九段と佐々木大地七段のコンビ。同門型は石田和雄九段門下の加藤結李愛女流初段と鎌田女流2級のイラストでした。これは、将棋界の一門に関してある程度は知っていなければなかなか描けないパターンと言えます。

 

5.その他…上記以外のパターンでは、仲良し3人組を描いたというパターンがありました。正確に言えば藤井竜王名人+仲良し3人組のイラストという構成です。これは将棋世界1月号の「あつまれ!描く将」をチェックして実際の作品を見てください。

 

今年は注目のタイトル戦も多かったこともあり、対局型が複数作の半分を占める結果となりました。複数作は、様々な可能性を秘めているだけに今後はどんなタイプの作品が登場するか楽しみです。

 

次に「判別不可」のイラストについて見ていきます。①でも触れましたが、今年の判別不可のイラストは1枚。私が入選したこちらの作品でした。

鳩やぐらさんの納豆オムレツでございます。被写体が「将棋めし」のイラストでした。このイラストが掲載されたのを最後に、棋士以外の被写体が掲載されたイラストはありません。「棋士」以外のイラストも掲載されるケースはありますが、これまでの概念にない発想が求められることは間違いありません。

 

 

以上、2つのポイントに分けて今年の「あつまれ!描く将」を分析してきました。最後に私から「あつまれ!描く将」に挑戦したい方(もしくはそのご家族様)に向けて3つお伝えしたいことがあります。

 

①棋士に愛をこめて

②まずは自分の力で描く

③周りはとにかくほめる(ご家族様向け)

 

①については、実は今年の優秀賞の作品の中にはイラストの中に「ふじいくんだいすき」のメッセージを添えて描かれた藤井竜王名人のイラストがありました。その方はおそらく、このコーナーにおいて史上最年少の優秀賞受賞と思われます。その作風は実にシンプルに、ストレートに被写体への愛が詰まっていました。

ここまでストレートに気持ちを伝えて描いた作品に、私は清々しさを感じました。純粋に被写体が好きな気持ちは今後も持ち続けてほしいと思います。

また、分析ポイントでも触れましたが描く将の方の中には「推し」の棋士を中心に描かれるという方もいらっしゃいます。こうした「推し」の力は棋士の大きな活力になることも事実。ぜひ、「推し」の棋士がいる方はそのイラストを描いてみてはいかがでしょうか。

 

②については、まずは上手い下手とか抜きにして自力で描くことをおススメします。アナログでもデジタルでも画風はなんでもOK。さらに言えば、かつては「描く」以外にも「編む」や「彫る」で被写体を表現された方もいらっしゃいました。

「自分は不器用だから…」「絵心ないし…」とかネガティブな発想は捨てて、とにかく描きましょう。描いていくうちに自信もついてきます。描かなければ「描く将」になることはありません。

 

③については、これは私の実話です。私はイラストを描いた後、母に見せることがあります。母はかつて漫画家を志望していて、現在は福祉関連の施設に自分の描いたイラストをプレゼントしています。母はいつもイラストを見て感想を言ってくれるのですが、開口一番「いいね!」と言ってくれます。また、色彩感覚などをアドバイスしてくれることもあり、私が絵を描くにあたってとても刺激になります。

描く将に限らず、イラストを描く方は承認欲求の傾向にあると思うのです。本人はそう思ってはいなくとも、どこかこの絵を見てほしいという願望があると言います。よく、SNSで自分の描いたイラストをアップされる方もいらっしゃいますが、その根底にはどこか認めてほしいという欲求があるのかもしれません。私もイラストをSNSにあげることはありますが、そのときは「描いてみた」とコメントすることもあります。

お子さんがよく絵を描かれるという親御さんへ、まずはお子さんの描いた絵をほめてあげてください。「よく頑張ったね」と労いの言葉だけでもOKです。一番困るのは「忙しいから」などと言って無関心になることや、「絵を描かないで勉強しなさい」とか言って否定する言葉です。もちろん、ちゃんとお子さんの作品を見てほめたり、労うことが大事です。

大切なことは作品を生み出す力を大事にしてあげること。始めはやたらアドバイスはしないで、お子さんの絵をよく見ることです。お子さんの絵を描くモチベーションを失うような言動は、やめていただきたいのです。もちろん、家の壁など描いてはいけない場所はしっかり教えてあげてください。どうか未来の描く将文化を担う人材を大切にしていただきたい。それが私からのお願いかつアドバイスです。いずれ、描く将となる方との共演を楽しみに今後も自分のペースでイラストを描いていきたいと思います。

 

 

さて、長々と書いてきましたが、これで「あつまれ!描く将」の分析を終わります。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

当ブログの年内の更新は本日が最後となります。今年はブログ名も変えて、再スタートを切りましたが変わらずの多くの「いいね!」やコメントを頂戴いたしました。本当にありがとうございました。来年も将棋に関する話を中心に更新していくので、引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。皆様どうかよいお年をお迎えください。

 

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