銀色のドアノブはあっけない程簡単に回った。ドアの隙間から中を覗く。薄暗い。
オイルと鉄の匂い。小さなネジ、ナットやボルト、何かに使うのだろうか長いピンが床に転がっている。やはり何かの倉庫みたいだ。
「誰か居るのか?」
翔が暗闇に向かって問う。
結は翔の後ろから中をチラチラと覗いていた。
「暗いね…」
結の声は不安げだった。
翔は結をもう一度後ろへ隠しながら、薄暗い倉庫に叫ぶ。
「誰か居るなら、出て来い。」
回答は無い。
薄暗い空間に少しずつ目が慣れ始めた。
何かを作る機械が見える。
『安全第一』の看板、片方だけの軍手、薄汚れた作業着。
「呼びつけておいて無責任じゃない」
少し余裕が出たのか、結が翔の後ろから身を乗り出して叫んだ。
と、その時、壁を這うパイプの隙間にチラリと黒い人影が見えた。
同じ人影を見たのか結のハッと息を吸う音が聞こえた。
翔は一歩前に出て、
「出てこい」
人影に叫んだ。
自転車のタイヤが擦れるような音と軽い足音。人影は2つに別れて光を反射し始めた。
「2人?」
結が目を細めて暗闇の奥を見ている。
「あぁたぶん」
翔は答えながらも人影を視界から外さないようにした。
間違いない。
一人は車椅子、それともう一人は子供?シルエットが小さい。
「今そちらへ行きます。」
そう言ったのは女性…?
聞いた事のあるような透き通った声が聞こえた。車椅子の人物がこちらへ来る。
その後ろ、車椅子を押しているのはやはり子供。少年か?
「地図はあなた達が?」
結は翔の後ろに隠れたまま、車椅子の女性へ声を掛けた。
車椅子には白い服の女性。その横には車椅子を押す少年。妙な取り合わせだった。
「そうです。」
返事をしたのは少年の方だった。
まだ小学生のように見えるが、声は落ち着いている。この少年も上下白の服を着ていた。学校か何かの制服なのだろうか、2人の胸には校章か何かのマークが付いている。
「何のために?」
結が質問を続ける。
「あなた達をここへ導くためですよ。」
女性の車椅子を押しながら、少年は落ち着き払った様子でこちらを見ている。
「あなた達は何者なの?」
結が静かな声で聞いた。少し声が震えている。
「私はあなたよ…。」
