うつ病の人への励ましについてのつづき

 

 うつ病の人が受診したとき、特に初診の時に精神科医として、まずは患者さんの話を聞きながら、「なるほど、辛かったですね」「そうだったんですね」などと共感・受容し、「ほんと大変なところよくやってましたね」とねぎらう。情報収集と共に信頼を得るような働きかけ。

 

 その上で患者さんを力づける、励ますメッセージを送ることになるが・・

 

 まずは医学的な話、「うつ病という脳の病気なので、治療すればよくなる」ということを説明。この場面では、患者さんは余裕がなく焦りもあり、思考・理解力も不十分(要はしんどい状態)だから、簡潔に難しい話はなるべくしない。

 

 それを前提に今どうするか?を伝える。「今はしのごう」「今はやり過ごそう」「踏ん張ろう(がんばろう、ではない)」などの言葉を使うことが多い。“今は”と添えるのが自分は好きで、「この辛さはずっと続くものではない」、という安心感を与えられる。つまり、今だけ、ここだけ持ちこたえたら、楽になれる、元気になれる、もとに戻れる、と考えることができるから。

 

 これらの言葉で、大まかに苦しさの原因を理解するとともに、治療者への信頼感ができると「一人で頑張らなくていい。助けてくれる人がいる」と希望を感じてもらえる。ここで治療に一緒に取り組むよう励まし、応援するメッセージを送るのである。

 

 「あなたみたいな人なら大丈夫」「仕事休んで元気になろうよ」「薬飲んでしっかり治そう」など。意味合いとしては「あなたなら“がんばれる”」「“がんばって”休もう」「治療を一緒に“がんばろう”」とかと同じなんだけど、“がんばる”を感じさせない言葉の選択、流れを作る工夫が大切と思う。

 

 ただ、頑なに休むことを拒否する患者さんもいる。それでも「今は(職場や家庭に)迷惑かけるけど、元気になったらお返しができる」「人のためにも休もう」と伝えると、自責的なうつ病の人でも、「休むことが他人の役に立つ」と分かって治療を受けてくれやすい。

 

 ということで、うつ病の人であっても、精神科医は、励ましの言葉、応援メッセージを発している。かなり繊細な気配りをしながら。

 

 なお一般的に、うつっぽい人、しんどそうな人を見て声をかける時も、「がんばれ」や「元気出せよ」よりも、まずは「どうかした?」「大丈夫?」くらいが安全だし、それで十分に心を開いてくれることも多いと思う。簡単な言葉だが「自分を見ている人がいるんだ」「一人じゃない」という応援メッセージとして。