双極性障害の治療については、これまでも書いたように、初めて診る時に気分障害を呈している人では、双極性ではないか?ということを常に意識してから治療薬を考える。紹介されてきた患者さんにおいては、本当に診断が合っているか、治療経過などを、新たな視点でみるチャンスでもある。
それも踏まえながら、最初の診断が紛らわしいときの治療法、重症度や治療を急ぐか?患者が求めているものなど、それぞれを考慮して、薬剤選択・使用量などを決めるのにセンスが問われる。
安全性・効果の即効性、治療の奥行きの深さ・柔軟性を考えると、現代の双極性障害の治療薬の中心は非定型抗精神病薬となっている(実は大うつ病でも)。さらに本当の双極 I型では、気分安定薬を併用するのが安定した治療に必要と思う。
<双極性らしいとき、初期の治療>
=緊急性や重症度はさほどでないが、きちんと治療したらよくなると思う人に
1. 初診時は、抑うつと気力低下がメインだが、思考の混乱もあり、非定型うつ、双極性かも?という人。繰り返すうつエピソード、気分の変動、循環気質、発揚気質、季節性などに注目
a. まずはメジャーを少量(双極性かどうか?迷う時など)で落ち着かせ、思考の混乱の改善だけですごく良くなる人:エビリファイ3mg、セロクエル12.5-25mg、ラツーダ10-20mgも使ってみたい
→不眠・焦燥感が目立つ時は、もう少し鎮静的に:ジプレキサ2.5mg、セロクエル(ビプレッソ)50mg。(他、シクレスト5mg、リスペリドン0.5-1mg)。
→これにBZの追加もあり
c. 眠剤の追加:ブロチゾラム0.25mg、ルネスタ1mg、デエビゴ5mg(他ロゼレム・デジレル)
d. 頓服に:エビリファイ、セロクエル、コンスタン、ワイパックス、エチゾラム
e. リボトリールは、不安・うつがあれば、初期に使うのもよい
2. 双極性の可能性が高ければ、患者に説明:気分安定薬をリチウム、デパケン、ラミクタール、を早めに開始
→メジャーと併用してよい
<診断~双極性もしくは非定型気分障害としての治療>
◎家族の協力:本人の自己評価が不適切なこと多い、躁状態への家族の理解を
◎エネルギーあるが、焦燥感の強いうつ病相(躁うつ混合状態):自殺リスクが高い
◎薬剤
1. 非定型気分障害、はっきりしないレベルの軽い躁と、うつ状態を繰り返す程度の人。メジャー少量で維持:エビリファイ3-9mg、ジプレキサ2.5-5mg、セロクエル25-50mg、程度で維持できる人
2. リチウム(最重要):典型的な内因性の人、素直でお歳暮くれるような人
定期検査:血中濃度、甲状腺機能、腎機能、副甲状腺機能、Ca、P
3. ラミクタール ←双極性うつ病の予防に最適。ちょっと甘く飲み心地良い
4. ビプレッソ(セロクエル):双極性うつ病に
5. ラツーダ:双極性うつ病に最適。維持量は20-30mg
6. エビリファイ、レキサルティ
7. デパケン ←気難しい人、ただし「優しくなりました」と自覚できる
*怒りっぽい人には、デパケン400-600mg+セロクエル200-300mg(神田橋先生)
8. リボトリール ←優秀で仕事好き、BZや抗うつ薬で境界例になった人に、薬剤減量後
9. テグレトール ←良くなってもそれが分からない人、器質性、激しい人
10. トピナ:気性が荒い人へ、ドンと構えて落ち着く、「涙が出ないでいられる」