年を取ると脳の脆弱性が高まるので、高齢者のうつ病は結構多い。些細な出来事をきっかけに、ガタガタと重いうつ病になりやすい。寝込んで食事もとれない状態となり、身体的に危険な状態になる場合もしばしばある(うつ病が死因になる)。

 本人も苦痛で、ADLも低下しやすく、家族も介護が大変。この状況で連れてこられるが、治療が上手くいくと、見違えるように元気なお年寄りになって、家族にびっくりされることも多い。

 また、高齢者はガンや慢性疼痛など病気に悩んでうつになる人も多いが、「病気」は自殺原因の第一位、そして高齢者が自殺者の20%。よって自殺者を減らすためにも、高齢者のうつ病治療は重要である。

 

<老年期うつ病の特徴>

 

1.「最近うちのおじいちゃん、元気ないなあ」と家族に気づかれて、連れてこられる人が多い

 

2.食欲低下などで身体的に衰弱しやすいので、治療は急ぐ

→小柄な上に体重減少が目立つ人、基礎疾患があるなど、身体管理が必要な時は早めに入院を

 

3.焦燥感や強い不安が目立つ人も多い。ときに精神病症状も

→不安など訴えが多くて家族が困って連れてくることも

 

4.うつ病の鑑別、特に認知症と間違わない

・うつ病になると、思考力低下するので、一見認知症に見える。HDS-Rでも得点低い

違いとしては

 

a. うつ病は急な発症だが、認知症は徐々に元気がなくなる

b. うつ病は悲しさを感じるが、認知症にはあまりなく、思考力低下と元気のなさが前景

 

・ただし、認知症にうつ病を合併することも=物忘れが増えて悲しい~うつ病

→うつ病の治療は必要。ただ元気が出た後は認知症が目立つようになる

 

5.抗うつ薬への反応が遅い、というが、割と早く効く人も

 

6.身体的な基礎疾患とその治療薬(薬剤性)が、精神症状に関与しているかも、と忘れない

 

 

<老年期うつ病の治療薬>

1.リフレックス12.5mgが、効果も数日で現れ、副作用少なく勝率高い。

 

2.SSRI(虚血性疾患にもよい=抗凝固作用)は文献的に推奨

→ジェイゾロフト12.5mg、レクサプロ5mg、ルボックス25mgくらいの少量から

 

3.活力をつけたい時はサインバルタもよい

 

4.ドグマチール(スルピリド)は使わない

→内科で、元気がない高齢者をうつ病として、スルピリド投与されて、EPSが酷く寝たきりになってから紹介されてくるパターンは多い

→ドグマチールの中止だけで良くなる。必要なら少量のSSRIかリフレックス

 

5.TCAは心血管系への副作用、抗コリン作用による認知機能低下もあり、高齢者には不向き

→ただし治療を急ぐ時のアナフラニール点滴は別

 

6. 焦燥感が強い人、精神病症状がある人には、クエチアピンなどの抗精神病薬も併用

7.ラミクタール12.5mgという手も=副作用少なく、認知機能への悪影響少ない