<初期の治療>
1. 説明
a. どんな病気か
b. 治療法:薬の効果・副作用
c. 環境調整:休める環境(家庭は大丈夫?)、短期休養、休職
d. 生活アドバイス:休養、睡眠リズム、禁酒、軽い運動
e. 治療の見通し・目標
2. 軽いとき、治療が続くように
a. 生活、就労、対人関係上のアドバイス
b. 眠剤±抗不安薬の頓服 ←BZ使用で初期の脱落が少なくなる
c. 睡眠が特に重要で、質の改善、中途覚醒に:セロクエル12.5mg、デジレル25-50mgなどもよい
d. 薬に抵抗ある人なら、漢方薬を勧めて治療関係を:抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯+苓桂朮甘湯(エネルギー低下に)、桂枝加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散、十全大補湯
e. 比較的軽症でも、ジェイゾロフト12.5-25㎎、レクサプロ5mgなど、抗うつ薬を少量から副作用に気を付けて使うのもあり
f. ASDがベースにありそうなら、エビリファイ1.5mg
◎後述するように、薬に弱い人がいるので、最初は慎重に
→軽い人なら、脱落してもおそらく自然によくなる。ただ中等度以上のうつなら、治療継続できるような工夫を
3. 抗うつ薬レベル=抑うつ・エネルギー低下が強く、適切な判断ができない
◎適切な思考ができないうつ状態と判断すれば、心理面よりも薬物療法を優先
◎環境調整:現在の住居が安全して休めるか?家族の理解は?
→家族と一緒だと却ってしんどい =同居の親がうるさい、夫の理解が悪い、自分が病気で子供に気を遣う人・・など
→一人暮らしの人、子供や高齢の親の面倒を見ている人なども、その人が休める場所、休める状況を模索(実家に帰る、親や子供をみてくれる兄弟の助けを求める、行政の支援・・)
・難しいなら入院も
◎仕事休めるか?も考慮
→ 安易に休職勧めない:後々、職場での気まずさに
→ 逆に、本人が「休めない」と思い込んでいるが、具体的に聞くと休職可能なことも
4. 抗うつ薬の選択について
最近は、症状に合わせてだが、サインバルタ、リフレックス、ジェイゾロフト(レクサプロ)、トリンテリックス、を使っている。
a. サインバルタ:20mgの開始量から効果早め(2-3日で出ることも)で強力。個人的に第一選択。だだ強力な分、焦燥感を煽ること、双極性の可能性が気になる人には止めておく
b. リフレックス:不眠が強い時。15mgからでこれも効果出現早い。ただ最初の数日は眠気と倦怠感が強いので、仕事している人には使いづらい。1週間経ってもだるさが強い人は諦めるが、実はSNRIやSSRIを併用すると、倦怠感が取れて抗うつ効果がアップすることも。
鎮静作用があるので、焦燥感があるタイプにも使いやすい
お腹が弱い人にも使いやすい(5HT3アンタゴニスト)→SSRIやSNRIで下痢や嘔吐が出てダメな人に併用で改善(この併用は自分の好み)
c. ジェイゾロフト:マイルドで副作用少なめ。最近使うこと増えた。50mgくらいから割としっかり効いてくれる
d. レクサプロ10㎎ → 不安が強い人。有効量で開始でき、効果が高いと好む精神科医が多いが、自分の印象ではサインバルタより弱い。意外と眠い人も
e. イフェクサー:37.5mgからで増量に時間を要す。サインバルタに比べ非力な印象で、あまり必要性は感じない
f. パキシル:あまり使わないが、5mgの少量が副作用が少なめで睡眠にもよい
g. トリンテリックス:副作用少なく効果高いらしい、離脱症状なし、activationない、認知機能改善(VOR>SNRI>SSRI>TCA)、倦怠感や感情鈍麻(-)、性機能障害や体重増加(-)
→今のところまずまずよさそう。2週間しか出せないのが困るけど
h. ルボックス: 基本は強迫性障害の薬。ただし薬に弱い人や、高齢者で控えめな投薬をする場合に意外とよかったりする。
i. TCA(三環系抗うつ薬)など古い薬:困ったとき。ルジオミールは割と副作用少なくて、睡眠効果もあり、時々使う。アナフラニールの内服は使わないけど、点滴はスゴイ。
j. デジレル:抗うつ効果は期待せず、睡眠を深くする補助に
4.抗うつ薬投与後の経過について
①副作用は最初の1週間に注意 ←効果も最初の1週間が一番高い
→副作用なければ十分な量まで、と言われているが、効果があれば、慌てて増やさず、しばらく同じ量で継続するのもよい =少量でいけることも少なくない
②通常、1-2週間程度で効果が出ることが多いが、4-6週かかるというが
治療を急ぐ患者さんには、入院を勧めるか、早めの抗うつ薬変更、増強療法
→自分としては、不眠と不安が強い人には、眠剤としての効果も考えて、最初から眠前にジプレキサやセロクエルの少量を入れるのもいいと思う