うつ病とは

 ブログを始めてしばらく経つけど、やっとうつ病の話。自分が初めに思っていた”うつ病”と、その後の学習と経験で変わってきたうつ病の理解の仕方をまとめました。

 

 ”うつ病”とは、エネルギー低下が顕著で、頭も身体も普通に働かない病気、そのため、適切な思考・判断ができなくなり、“病的”な抑うつ感情、無力感を来す病気。さらに身体的な疲労感、倦怠感による辛さも重要。

= その人本来の能力(仕事、日常生活、人間関係スキルなど)が明らかに低下

 

 現在のうつ病では、多くの患者さんは、仕事、生活、人間関係で、疲労困憊してうつ病を発症。こういう人は、安心できる環境で、十分な休養がとれれば、それだけで良くなる人が多い。病的な思考(思考がフリーズ、妄想、希死念慮など)や、身体的疲労、体重減少が目立つときは、抗うつ薬を中心とした早期の薬物療法が必要。

 

 最近はあまり言われないが、”内因性うつ病”では、遺伝的因子、性格的な特徴を持ち、通常のうつ病とは違って、疲労困憊というより、さほど重大に見えない何らかのイベントで発症することも多い。DSMでは“メランコリーの特徴を有する”うつ病。このタイプは薬物療法が特に有効だが、逆に薬物療法を行わないと治療にならない。

 

◎最も大事なことは、普通のうつ病は適切な治療を受ければ、ほとんど良くなるということ。良くならない場合は、持続的なストレス因や、ベースとなる精神疾患を考えた治療の工夫が必要。

 

 

ベースとなる精神疾患について

 

・普通のうつ病治療で上手く行かない時に、これらが潜んでいないか?

・器質性、症候性なら、そちらの治療を優先し、それだけで改善することも

・ただし、ベースとなる疾患があっても、うつ病に対する治療も並行して行う場合も多い

・成人のASDやパーソナリティー問題で、変化への抵抗が強い、治療の意思がない人は難しい。=「うつが辛くて・・」と言いつつも、治療を受け入れない、もしくは話は聞いても行動しない

 

1.ASD、ADHD、知的障害

 →若い人なら軽い薬と疾患教育、環境調整で良くなるが、頑固な人は難しい

 

2.愛着障害+複雑性PTSD(機能不全家族での虐待など)~境界性パーソナリティー障害へ

 →かなりの労力を要し、ずっと支えてくれるような支援者が必要

 

3.高齢者なら、認知症に併発

 →認知症による脳機能の問題、物忘れが多い辛さ

 

4.薬物:アルコール、違法薬物

 

5.器質性、症候性:甲状腺、脳外傷、てんかん、パーキンソン病、自己免疫性

 →器質性疾患による精神運動制止がメインで、悲しさが前面に出ないことも

 

6.統合失調症か迷う時:幻覚妄想について語らない患者

→迷うなら、スルピリド、エビリファイ、セロクエルなどで様子をみる

 

7.もちろん双極性障害の可能性

 →本人もうつ病相ばかりを気にして、何年も双極性に気づかれない人

 

 

◎診察の際に大事なこと

 

・診療の前提として、まずは傾聴し、支持的に関わりつつ、ラポールを得ること。理解力が低下していても、関係性を築けると、治療意欲・協力が得られ、薬物療法など治療がしやすい。

 →病気や治療の理解があまりできなくても「よく分からないけど、この先生に治療してもらうのもいいかも・・」というくらいで十分

・思考力低下で、話が冗長、纏まり不良 →うまく困りごとを言えない人も多い

 →初診で情報を集めようすぎて、無理をさせない

 

・「悲しさ」を感じ取る事=姿勢、雰囲気、生理(顔色、脈、涙、汗、動き)

 

・身体的疲労感(動きの遅さ、顔色、肌艶、発汗、うつむき姿勢など)、思考の停滞

 → 重症度の判断に

 =自殺念慮を口にする時、どの程度のリスクがあるかの判断にも

 →身体は嘘をつかない

 

・重症度の判断 =治療方針を決めるために

 →入院を要するレベル(重症)、休職~抗うつ薬がっつりレベル(中等症)、軽症 

 

心理的な訴えが強くても、病的な思考に陥っているため、中等度以上のうつ病なら、薬物療法を優先し、悩みを聞くのはほどほどに(重要)

=思考力低下しているので、長い時間話をしても、さほど効果がない上、ネガティブ思考の迷路に迷い込みやすい

 

・軽症うつの人なら精神療法と休養だけでもいいけど、中等症以上の人は不十分な場合も

→「カウンセリングで直してください」という人もいるが、薬物療法より遠回り

 

・抗うつ薬で良くなってくると、悩みも自然解消「なんであんなことで悩んでいたんだろう?」

→ 悩みの相談は、ラポールが得られる程度で十分