<発達障害で知っておくべきこと>

 

 発達障害は、現在は、自閉症スペクトラム障害(ASD)とも言われます。現在の精神科診療では、うつ病や不安障害などに発達障害の関与が多いことが分かってきており、発達障害を知らないと、精神科医としてやっていけない時代になっています。

 主に大人を診ている普通の精神科医ですが、大人の発達障害について、忘れていけない事項をまとめました。本やネットでいろいろ情報がありますが、自分でここが大事!というポイントを中心に書いてみました。

 ちなみに、児童を主に診る発達障害の専門医は、やってくる患者さん(子供さん)の多くに発達障害、と診断をつけやすい傾向のよう。また大人になってから受診する発達障害患者さんのことはあまり詳しくないかも?(失礼)

 

 

1.       基本的に、脳の神経発達の障害 =精神疾患というより先に神経系の障害と捉える

 

a. 感覚過敏(重要) =音、光、臭い、触覚、味(五感すべて) ←時に鈍感な人も

→ちょっとした雑音が耐えられない、光をまぶしがるだけでなく、視覚に入ってきたものが気になって困る、臭いが苦痛、ざらざらした服は着れない、偏食!(味が苦手、舌触りがイヤ)など。生活上の大きな支障となる人多い

 

b. 不器用で、目の動きを始め、表情・身体の動き、話し方などで、バランスが悪い

=パッと見ちょっとヘンテコな印象、しゃべり方、口調が変な感じ

→自然な表情を作るのが下手

→人の動きを見て真似るのも苦手(ダンスや歌など)

 

ASDは、見た目や、会話の印象だけで分かる人も多い

 

c. 他人の表情が読めない

 

→普通の人は、赤ちゃんの頃から、他人の表情を学習しなくても読める

= ミラーニューロン

 

→発達障害では、他人の表情筋の動きを視覚的に分析~パターン化して学習

 =普通の人(訓練しなくてもすぐ分かる)とは違う認知の仕方 →もちろん人にもよるが

例> ”笑う”という感情は、両口角を上げつつ、両目は少し垂れ下がるように細め目じりにしわを寄せる表情筋の動きで示される、と分析しつつデータ化

→しかし、頬の筋の緊張や、これらの”筋肉の微妙なバランス”で、笑っているようで、実は嫌がっている、ということまで気づくには、さらなる学習が必要

 

→ちなみに、表情を作るのも学習~熟練が必要と思われる

 

 

2.       なぜ“自閉症”というのか? =いわゆる発達障害の3タイプ

 

a. 孤立型:人との交わりを嫌がる自閉の典型

 

b. 受動型:人から来られると拒否はしないが、自分から関わろうとしない(=自閉)

 

c. 積極奇異型:人にアプローチ(迷惑かけやすいも)するが、他人を“自分と違う思考・感情を持った人“と感じず、自分の世界の中の“モノ”のように捉えている。結局、他人の世界を理解しようとせず、自分の世界の中で生きている(=自閉)

 

 

3.       発達障害で困ること

 

a. 社会性の乏しさ(重要):対人交流を望まず、人の気持ちも分からず、空気が読めず、自分も守るのも苦手

→これらの悪循環で、さらに人との関係悪化、攻撃の的となったり、人に操られたり、孤立したり・・

 

b. コミュニケーション(言語・非言語とも)が苦手

リテラシーが悪い(言語的能力) =言葉をそのままの意味でしか捉えられず、場の流れや雰囲気での意味の違いが分からず、冗談や比喩の理解もできない(インプットの問題)。また、適切な言葉で、自分の考えを表現できない(アウトプットの問題)

→アスペルガーは言語は正常というが、そうでもない =堅苦しい言葉使い、言語知識の偏り

→さらに相手の表情や雰囲気、言葉の抑揚なども分からない(非言語コミュニケーションが苦手

 

c. 拘りの強さの3要素 =3R:Rigidity(頑な)、Repetition(反復)、Rule(マイ・ルール)

→頑固、人に合わせない、好きなことだけ、変化に対応できない、融通が利かない

→人から嫌われやすい、仕事で困る、強迫的

 

       次回に続く