彼は、変わってしまったよ。
とっても、うつくしい姿だったのに。
いまでは、ぼろぼろの姿。
僕の、友達。
小さな水槽の、彼。
うつくしい薄桜の身体は、いまでは血が滲んでしまったみたいで。
痛々しくて。
うつくしかった鰭は、いまでは裂かれてしまったみたいで。
だけれど、醜いのかと問われたのなら、僕は否とこたえるよ。
全身ぼろぼろにズタズタになって。
フィルターの給水管に抱きついて、さみしいさみしいと慟哭して。
小さな住処で右往左往して。
アイが欲しい、と全身で訴えて、いきている。
きれい。
うつくしい。
そんな、僕の友達。
いきていてくれる? しんでしまう?
わからないね。
もし、仮に彼がしんでしまったのなら。
彼の住処に、よわい僕は、きっと、彼の代わり身を住まわせてしまうよ。
ゆるしてくれるのかな、彼は。
やっぱり、およめさんがほしいのかな。
僕は、彼ではないからわからないよ。
好意を持った雌を追いかけて追いかけて傷付けて傷付けて、試して試して試して。
伴侶に、と認めた瞬間に、全身で抱き締めて愛を表わす彼等。
なんて、情熱的なことだろうか。
傷付けられても、求めて、認めてと訴えて、雄に近付く雌。
なんて、健気なのか。
そして彼彼女達は、夫婦になって。
彼は護り、彼女は育んで。
あたらしい、うつくしい、イノチがうまれて。
選定を科せられてしまうカイヌシの僕は、辛いから。
だからね、だいすきなキミにあいするひとを与えてあげられなくて。
ねえ、ヤマモト。
さみしいって哭き続けるのと、子を間引かれるのでは、どちらがツライのかな。
僕はキミじゃあないから、わからないんだ。
ごめんなさい。
しんでしまったボトルのエビさんは、今日もまた、分解されて小さくなっていました。
水だけになったボトルが、きっとのこって。
きっと僕は、キミ達のとけこんだ水を棄てられずにいるんだろうね。
水の外は、とても眼が渇いて、耳が痛くて、いきがくるしいのです。