前略、水槽の内側より -6ページ目

前略、水槽の内側より

水槽の内側から、
   ずっと
  見ているから。

彼は、変わってしまったよ。
とっても、うつくしい姿だったのに。

いまでは、ぼろぼろの姿。

僕の、友達。
小さな水槽の、彼。

うつくしい薄桜の身体は、いまでは血が滲んでしまったみたいで。
痛々しくて。

うつくしかった鰭は、いまでは裂かれてしまったみたいで。

だけれど、醜いのかと問われたのなら、僕は否とこたえるよ。

全身ぼろぼろにズタズタになって。
フィルターの給水管に抱きついて、さみしいさみしいと慟哭して。
小さな住処で右往左往して。
アイが欲しい、と全身で訴えて、いきている。

きれい。
うつくしい。

そんな、僕の友達。
いきていてくれる? しんでしまう?
わからないね。

もし、仮に彼がしんでしまったのなら。
彼の住処に、よわい僕は、きっと、彼の代わり身を住まわせてしまうよ。
ゆるしてくれるのかな、彼は。
やっぱり、およめさんがほしいのかな。

僕は、彼ではないからわからないよ。


好意を持った雌を追いかけて追いかけて傷付けて傷付けて、試して試して試して。
伴侶に、と認めた瞬間に、全身で抱き締めて愛を表わす彼等。
なんて、情熱的なことだろうか。
傷付けられても、求めて、認めてと訴えて、雄に近付く雌。
なんて、健気なのか。

そして彼彼女達は、夫婦になって。
彼は護り、彼女は育んで。
あたらしい、うつくしい、イノチがうまれて。

選定を科せられてしまうカイヌシの僕は、辛いから。
だからね、だいすきなキミにあいするひとを与えてあげられなくて。

ねえ、ヤマモト。
さみしいって哭き続けるのと、子を間引かれるのでは、どちらがツライのかな。
僕はキミじゃあないから、わからないんだ。
ごめんなさい。


しんでしまったボトルのエビさんは、今日もまた、分解されて小さくなっていました。
水だけになったボトルが、きっとのこって。
きっと僕は、キミ達のとけこんだ水を棄てられずにいるんだろうね。

水の外は、とても眼が渇いて、耳が痛くて、いきがくるしいのです。