1歳 神田の家
東京神田和泉町
秋葉原から徒歩数分
大きなお屋敷だったそう
初節句に大きな七段飾り
十五人揃いのおひなさま
市松人形やフランス人形
祖父から贈られた藤娘も並べて
それは豪華だったらしい
ひなまつりに写真屋が来て
母に抱かれて写真を撮った
赤ん坊の私は目を患い
片目に紫色の薬をべったり
そのまま写真に収まった
従姉のT江ちゃんが教えてくれた
「神田の家は広かったよ
母屋から離れに続く廊下から
池の鯉が見えた」
もし戦争が無かったなら
私はそこで大人になったのだろう
2歳 東京大空襲
物心がついていないので
何も覚えてない中で
一瞬が脳裏に焼き付いている
母の背中に背負われて見た
紅蓮地獄の光景
ゴウゴウと唸りながら
焼夷弾により焼け広がる炎の海
ドラム缶が何本も空中に舞い
こちら側に方向を変える
あまりの怖さに目を伏せた
東京大空襲の一瞬の記憶
母が語ったところでは
焼夷弾を避けて逃げる時
「ちゃあちゃん、あっちぃよ、火が付いたよ」
と、私が叫んだ
「ちょうちゃん (父)
ちゃあちゃん (母)
しか喋れなかったのにね、、、、、、、、
お陰で防空頭巾の火に気付き
消せたんだよ」
「赤ちゃんの私も役に立つたんだね」
母の髪はチリチリに焼け焦げ
ゴロゴロと倒れている屍を
横目で見ながら逃げまどう
戦地から父が戻る迄
私を必死に守ろうと
気力をふりしぼり逃げ通したのだ
1歳 神田の家
東京神田和泉町
秋葉原から徒歩数分
大きなお屋敷だったそう
初節句に大きな七段飾り
十五人揃いのおひなさま
市松人形やフランス人形
祖父から贈られた藤娘も並べ
それは豪華だったらしい
ひなまつりに写真屋が来て
母に抱かれて写真を撮った
赤ん坊の私は目を患い
片目に紫色の薬をべったり
そのまま写真に収まった
従姉のT江ちゃんが教えてくれた
「神田の家は広かったよ
母屋から離れに続く渡り廊下から
池の鯉が見えた」
もし戦争が無かったら
私はそこで大人になったのだろう
