三井住友銀行が中小業者に融資した約170億円のうち約100億円が焦げ付いている問題で、三菱東京UFJ銀行でも同じ不動産会社「コシ・トラスト」(東京都渋谷区)の社長らから紹介された中小業者数十社に約60億円を融資し、十数億円が回収不能になっていることがわかった。

 融資の開始時期は三井住友の後で、コ社の社長らは三井住友で偽造書類を使った融資に成功したことから手を広げた可能性もある。

 三菱東京UFJは、紹介を受けた経緯や審査に問題がなかったかどうかを確認するために、内部調査を始めている。

 関係者によると、コ社の紹介で中小業者に融資を行ったのは、法人に対する事業資金の融資などを担当する三菱東京UFJ銀行恵比寿支社(東京都渋谷区)。同支社は三井住友でコ社関連の融資が始まった約1年後の2004年から事業資金などの名目で融資の申し込みを受け、06年ごろまでに数十社に総額約60億円を貸し付けた。

 数十社の中には三井住友からも借り入れていた業者が含まれており、融資の際には三井住友と同様に業績を水増しするなどした納税証明書や決算書が使われていたとみられる。三井住友では同じ業者が短期融資を繰り返し受けるケースが目立ったが、三菱東京UFJは1500万円~1億円程度の融資を1、2回受ける業者が多かったという。

 融資の審査には複数の行員がかかわっていたといい、三菱東京UFJでは銀行内のルールを逸脱するようなずさんな審査はなかったとみている。

 三菱東京UFJでは06年末、回収の見込みの薄い不適切な融資が行われていたことを把握し、コ社絡みの新規の貸し付けを停止した。その後、担保にとっていた不動産の売却などを進めているが、最終的に十数億円が回収不能になる可能性が高いという。

 コ社を巡っては一時、暴力団関係者が役員に就いていたことも判明している。三井住友に続いて三菱東京UFJでも、コ社の紹介した融資で巨額の焦げ付きがわかったことで、紹介者のいる融資は審査が甘くなりがちになる欠点をコ社側に突かれた疑いが出ている。三菱東京UFJでは07年1月以降、コ社のような紹介側企業の調査も徹底するように手続きを改めた。


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