「暮れから、お正月に掛けて、
 佐和子がここに、遊びに来るって」

「そうか、元気にしてるのかな?」

「うん、まあまあね。
 佐和子はさ、お母さんが突然亡くなってしまって、
 初めてのお正月でしょ。
 一人で居るのが淋しいだろうと思って、
 わたしが遊びに行こうと、思っていたのよ。
 で、連絡したらさ、佐和子も久し振りに東京に来たいって。
 わたしが、どんなところに引っ越したのか、
 見てみたいって言うしね」

「まだ、彼氏は出来ないのかな?」

「なかなか、イイ男が見つからないみたいね。
 佐和子は、のり君にも会いたがっていたよ。
 口に出しては言わなかったけれど、
 きっと、のり君と、セックスしたいんだと思うよ」

「そんな事、無いでしょう」

「あなたって、本当に、女心が分からない人だよね。
 佐和子の体に、火を付けたのは、のり君だよ。
 佐和子は、のり君の事が忘れられないんだと思う」

「え~、それじゃ、オレが悪者みたいじゃない?
 アレは、由香さんに頼まれて、仕方無くしたんだよ」

「本当に、仕方無く、したのかな~?
 のり君も、けっこう楽しんだんじゃないの?
 佐和子は、わたしよりナイスバディだしさ」

「ちょっと~。
 由香さんがオレの愛人に成ってくれるって約束したから、
 仕方無く、佐和子さんの事を抱いたんだよ」

「そうなんだよね、今はわたしがのり君の愛人だからさ、
 佐和子の想いは、複雑なんだと思うよ。
 のり君だってさ、本当は佐和子の事、
 もう一度、抱きたいんじゃないの?
 佐和子の身体を、思い出したりはしないの?」

「そんな事、無いって!
 佐和子さんには、若くてイイ男を見付けて欲しいって、
 心から、そう思っているんだしさ」

「ねえ、佐和子がいいよって言ったら、
 また、3Pしてみようか?」

「そんな事、出来る訳無いでしょ!」

「へ~~」

「何だよ、へ~って」

「だってさ、札幌で、2日も続けてしたじゃないの?
 男にとっては、両手に花で、ウハウハなんじゃないの?
 意外と度胸が無いのね」

「度胸が無いって言うかさ、オレにとっては、
 由香さんは、本当に大切な人なんだよ」

「わたしが、イイって言っているのに?」

「そんなに困らせないでよ~」

「まあ、いいわ。
 それはそうとさ、どこか良い温泉旅館は知らない?」

「温泉旅館なら、たくさん知っているよ。
 どんなところがイイの?」

「そんなに高級な旅館じゃ無くていいのよ。
 佐和子と二人で、行くんだからさ。
 冬だから、観光地だとかも無くてもいいの。
 お料理が美味しくてさ、温泉が良いところがイイの。
 湯河原なんてどうかしら?」

「え~っ、湯河原?
 まあ、湯河原なら、安い旅館はたくさん有るけど、
 でも、正月は、さすがにちょっと高いよ」

「でも、お安いところなら、知れているでしょう?
 ここからだと、どれくらい掛かる?」

「そうね、電車で20分。
 バスに乗り換えて、10~15分くらいだから、
 1時間も掛からないよ」

「ねえ、どこか紹介してよ。
 お手頃で、お料理が美味しくて、温泉が良いところを」

「分かった。
 でも、オレんちの近くでも構わないの?」

「そんな事、全然、気にしないわよ。
 佐和子も気にしないと思うし。
 ここから、すぐに行けるのが、一番イイわ」

「今はさ、お客さんが空いているけど、
 年末年始は、さすがに込むから、
 早めに予約しておいた方がイイよ。
 日程が決まったら、電話してよね。
 何だったら、お金はオレが払ってもいいし」

「本当?
 それだったら、やっぱり高級旅館に変更しようかな?」

「それは無理だよ、貧乏なんだからさ…」
 

 

 

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