普通に読んだらよくわかんないからね。
しろあです。
「朝起きると、虫になっていた」で有名な作品、カフカの『変身』を読みました。
前回はその作品のストーリーをざっくり紹介しています。
カフカの文章と構成が下手なため、また翻訳者が文章下手なため、
一般の人が折角読んでも「は?」とよくわからないことが多い作品になってます。
あらすじに関しては先の私のブログを読んでもらうとざっくりわかるので、
そのうえで改めて読んでみると、まぁまぁ楽しめると思いますが、
それでも謎は残るはず。
そんな人のために、楽しく解説していきたいと思います。
①どんな虫になったのか?
一番気になるのが、主人公グレゴールがどんな虫になったのか、ということ。
わずかな描写から想像するに、『芋虫のような幼虫』ではないかと思われます。
しかし、屋敷にやってくるお手伝いさんは「かぶと虫さん」と呼んでいるんですよね。
かといって夏の人気者、われわれのよく知る「ビートル」のかぶと虫ではないでしょう。
おそらく ”甲虫” という意味合いで呼んでいると思われます。
でありながら、父親がリンゴを投げ、背中にめり込む描写があり、
甲虫特有の外骨格はどうした? と矛盾します。
結局、どんな虫なのかは読者の想像にお任せする、というスタイルなのでしょう。
あなたが読んでいて想像する、そのおぞましい虫の姿がグレゴール、というわけです。
②グレゴールの稼ぎについて
一家が棲むには広すぎる貸家。当然家賃は高い。
父、母、妹、グレゴールの四人家族で、お手伝いさんがついている。
ふがいない父親は早期にリタイアし、働かなくなってしまった。
そんな家族の家計を支えるのがグレゴールです。
まず、これだけでもかなり生活費はかかりそうです。
グレゴールは遠方へ出張し契約をとってくるタイプの営業マン。
今の日本のサラリーマンの給料を考えると、とてもそんな家計は賄えそうにありませんよね。
まして、父親は仕事をしていた時に多額の借金をしている。
その返済費用も追加されます。
そして、バイオリンの才能ある妹を高額な音楽学校に進学させたい、
という希望もグレゴールにはあります。
家族四人+お手伝いさんを雇う費用+借金返済に、
少し先の未来では妹を音楽学校に通わせる資金が必要。
グレゴールは30才手前という若さで、それだけの経済力を背負わされてたのです。
1900年ごろのチェコの一般的な市民の収入がどれくらいだったのか?
これが普通だったのか、グレゴールがやり手ガンガン稼ぎまくっていたのか。
その辺調べると、面白いことが分かってくるかもしれませんね。
③グレゴールは仕事をやめたい
そんな稼ぎまくってるグレゴールですけど、
父親の借金の返済さえ終われば、「こんな仕事辞めてやる!」と思ってます。
毎日の仕事のプレッシャーが凄く、上司のパワハラも凄くて、
嫌で嫌で仕方がないけど、家族のために仕事を頑張っている。
多くのサラリーマンが共感できるポイントじゃないでしょうか。
「朝起きると虫になってた、って小説」としか知らなければ、
ただのナンセンス作品に思われそうですけど、素地はちゃんと人間ドラマをしてるのです。
④これは家族が危機を迎える物語
一家の生活を支えている、稼ぎ頭の息子が「虫」になる。
虫になることで一家は収入がなくなってしまう。
さぁ、困った! というのが、実はこの作品の本筋です。
この危機を乗り切るために、当然、みんな働くことになります。
⑤グレゴールはなぜ変身したのか?
この作品を読んでいて二番目に気になるのがここでしょう。
グレゴールがなぜ変身したのか。
家族を支えていた収入の柱が、ある日突然なくなってしまう。
困った! という状況が家族に起きた、という構成が重要です。
「虫になった」はあくまでひとつの比喩で、カフカのユーモアから採用されたのでしょう。
現実的には交通事故で亡くなったのかもしれませんし、
大きな病気にかかって働けなくなったのかもしれません。
虫になった、という設定を考えると、手足を失う事故に遭ったのかもしれませんし、
家族だけの秘密にして、グレゴールを世間から隠して生活することを考えると、
らい病などだったのかもしれません。
いずれにしても、
家族を支えていた収入の柱が、ある日突然なくなってしまう。
困った! という状況が家族に起きた、ということに意味があります。
⑥謎の下宿人はなぜ突然登場するのか
カフカの説明が不十分なため、急に3人の下宿人が登場します。
なぜ下宿人が家にいるのか? の説明はまったくなく、
下宿人が来たことにより、どう家の中が変化したのか、のみ描写されます。
これはグレゴールが虫になることで思考が弱くなり、
記憶があいまいになっているため、
強烈な印象の残った、意識が働いた部分だけを作者として描写した、
という演出とも考えられます。
が、それにしても不親切です。
説明はありませんが、きちんと読んでいれば推測はじゅうぶんにできます。
家にはお金が必要になった。
そのためには収入が少しでも必要だった。
不必要に広い貸家なので、余った部屋を下宿人に貸せば、
少しでも家計が楽になる。
そんな流れで、突然、家に下宿人がいる状態になったのでしょう。
⑦グレゴールの死が家族をひとつにする
ラスト、グレゴールは死にます。
その死を受け入れた家族は、
「こういう日はみんなで公園に行こう」という父親の提案を受け入れ、
粛々と準備し、出かけます。
グレゴールの変身前、どこかバラバラになっていた家族が、
——これって案外普通の一般家庭でもよくある状況だと思うんですけど、
家族としては生活してるけど、結構みんなバラバラでそれぞれの生活してでしょ?
特に現代人はそうだと思う。
そんな家族が、グレゴールが虫になった経験を経て、
その死を通じ、家族としてギュッとこころをひとつにまとまる。
それがこの小説のラストなんですね。ちょっとうるっと来ました。
『変身』はただのナンセンスな作品ではなく、ちゃんと純文学してるんです。
——
以上のポイントをおさえて『変身』を読んでいただくと、
いろんなモヤモヤが解決するのではないでしょうか。
ボリュームもちょうどよく、面白い作品なので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。