お尻で折り紙 -29ページ目

"さくらめ"2005.4.11

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思いきってるとき

音楽がそばにいて

駅の前の道が

知らない国の路地みたい

行けると思ってる

手首に花飾り

人は雨もよう

祭りのあとの静けさ

落ち着き


きれい の 賞味期限

蒸発

ぽたぽた落ちる てんとうむし

ひとりフランス語


夜ふけに散った 桜雨

もう12月なん

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人恋しい季節らわ。急に懐かしい顔が12月の淡い空に浮かぶ。新しく買った帽子が似合っているのかどうかわからないまま、窮屈な頭をくるくる回してみる。名字のような駅を通り過ぎ電車は進む。12月は特別だった。後半に弟の誕生日、クリスマス、大晦日。お正月、年が明けて一週間で僕の誕生日。世の中どれだけ多くの人の胸が高鳴るのだろうか、そんなんどうでもいいけど、僕の胸は高鳴っていた。東京に来て違う胸の鳴り方が生じた。正月に実家に帰るか帰れないか帰らないか。家族に対しての自分の気持ちが徐々に確かになる。やっぱすきなんさね。アコギの叙情より、泣き叫ぶようなギターソロより、ウッドベースの軽やかでメロディアスで少しあたたかい音。来年弟が高校を卒業し、進学のため上京する。そういえば弟に誕生日プレゼントをあげたことない。妹にもない。親にはあるのに。心の距離も体の距離も日々変化する。二人で面と向かって話したことなんかあったかな、今まで。体験入学のため東京に来た弟と、初めて面と向かって酒を飲みながら(僕だけ)、話をした。きっとそのときの僕は妙にまじめ臭く、まじめさをごまかすため突然
投げやりになったり、高校まであんなに距離を置いていたビールをあおったりして、気持ち悪かっただろう。なにしてん、ばかじゃねん。そんなばかでもないし。誕生日に天体望遠鏡をもらって喜んでいたあのときより確実に派手な格好をして、僕は東京を闊歩している。僕とは縁がなくなったテレビゲームをしながら、弟は東京に住む日を思っている。誰にもわからないメロディーを口ずさむ。東京の冬時間が足をはやめる。タクシーの運転手に客として認識される。耳だけ寒い。さーめーわ。さーめーて。今年はマッチ(弟)になんかあげよっかなー。

"終わったこと"2005.3.22

終わった頃 終わったこと

休み休み 進んだ時間

塗った色の花 ひらひら飛び

落ちて失くす 定期は紅色

濃淡つけて なぞる日々

気にしていたこと かけあって

太陽に芝が揺れる


涙に間に合って

拍手の間が合う

木材の音に ただ立って

歩く人数 感じ合う

さっぱり さらば

来る日が戻る

出会えた場所が 春になるよ

"心に用がある主婦達"2005.3.13

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おばあちゃんに追い越される

小さくて重いものばかり詰め込んで
線路はどうやって地面に張り付く
冷たい嘘は一気に
暖かい本当はゆっくり 試してみよう

くるくる湯気上がり
くるくる湯けむり一丁

おはようの間に
1人の旅人がやってきた
家具を片手に不幸せ
こんにちはと言って座ったようだ

お侍さんに斬り殺される

逃げて 逃げて 追い越される
追い越される程 遅くなる

「普段歩いてるか歩いてないかが大きいと思うんですよ」

動いてるのと止まってるの どっちが多いだろう

窓の外と どっちが広いだろう

光ってるかどうか 見てみぬふり

ざらざらするよ 時間の匂い

"あと"2005.2.26

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ストラップが黒ずんだ日から
僕の旅が始まった
ミルクは砂糖の倍あって
粒子が波とたわむれる

隣に誰もいなくなる

光の跡をつけたんだ
100人中100人がわかる絵画
悪いことをする奴が
悪いかどうかわからない

右手にひらり舞い踊る

鼓動がしなきゃ やってらんねえよ

鼓動がしなきゃさ

地上が青で
地下が黄色

あとどこだっけ

空気中が桃色


頬が赤くなる


光が跡をつけたんだろう ほら

"傘まみれ"2004.10.12

傘まみれ
豊かな午後の雨垂れに
静かに装う
傘無しの我


夕暮れの無い日
水たまりはたまる一途
トランポリンウォーター
跳ねて飛びたいな
傘が何を言う
濡れるがままも
楽しいよ 風呂と同じ
駅前の歯科に
入れ歯を頼み
痩せた背中に
しゃがみ込んでいる
もう日が暮れたのかい
白にも黒にも
ならぬ日暮れる

"コロッケと給料日"

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違う味のコロッケ
半分食べて繋げた
小さくひとつになりたいな

光る落ち葉にことづけ
西日が差す頃出掛け
水飲まない日に涙
ひとのいろいろ

猫がカメラに向いたらタイホしよう
覚めて会って笑いあっちゃおう

帽子のしたは休日さ

手が冷たいな
目星がほしいなあ
おいしいもんでもゆっくり食べる
新しく降る
振るい落ちる
留め具の魔法

赤・オレンジ・緑
赤・オレンジ・緑
緑・緑・緑

わかんないー

だから来たんだよ

低い声でひっくり返って走る、それでまたまた

"少しおなかが痛くなる"

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めしはまだかとたずねる
少しおなかが痛くなる
おかしくないことで笑う
寝すぎた土曜日の朝
はずれだからと見逃している
けれどコップはからっぽ
明るくなる前に済ます
顔を隠してまどろむ
煙草を2本
冷めたチーズをひとかけ
目から覚めていく映像美
ベージュの夜明け
赤いチェックのマフラー
旅の地図を忘れていく
金色を目指して
寒い色のジャケット羽織って
出かけた先々 転ばぬ猫達
靴下脱がずに仕事を終える
隣の女を見る
ぬるいコーヒーを流す
あふれた皿が傾く
少しおなかが痛くなる
歩いているはずだったのに
見つけているはずだったのだ
誰も転ばぬ道を行く
寝すぎた日を笑う

大笑い 小笑い
大晴れ 小晴れ
くちびるのひび

"にる"

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きゅっとむすんだ口元を
窓から盗んで逃走
バッグたたんだ肘締めて
腹から舞い落ちぬよう

食べては南無
駆けては昼
小さいア行を見失って
昔っからの校庭
匂う
匂う

ここは行きの道
ここから帰り路
明日は雪の無恥
座れないベンチ

ただ振り返って
踏切を踏み切って
転がることもなくして
よろけて戻る

マスクからかいかゆい
紙袋が底を突く

匂う
日を
煮る
歯ごたえ

人差し指にヒット曲
色違いの蓋ぱたん

あげる日
にる日

電車の影が止まらない

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朝日の中で猫を見ていた。自動扉の外で感知されぬ体を震わせ鳴く猫に、わずかばかりの思いを重ねた。気がつくと足元にも猫がいた。鼻をぐずぐずにしてぶーぶー鳴くそいつに親しみを覚えた。そうやって僕は家に着いた。そうやって僕はボタンをひとつなくしたのだ。
明けても暮れない人間の群れに乗っかってどこまで行くのか。会話を聞き逃しながら眠る夜に音楽は流れ出るようだ。文字の並びに気をつけるが何がいらっしゃいませで何がありがとうございましたなのか100メートル先の文庫本の題名のようにはっきりしない。色や光が真夏のように金属音を響かせてくれる。目の前の男女が交わす会話が僕に聞こえている。笑いの対象は僕が歩いたことのない町に住む人だ。その人が働いているのは僕が名前も知らない町だ。些細な習慣を死ぬまで続けられるのではないかと感じている。知ると死ぬを聞き間違えることはない。
いつだって晴れの日には誰かの洗濯物がぶら下がっている。洗濯物をぶら下げながら働いたりキスしたり怒られたり煙草を投げ捨てたりセックスしたり頭をさげたりしている。濡れたものを乾かしては、乾いたものを濡らし、溜まれば捨て、黙れば誤解される。晴れた日を歩く。乾いた髪が伸びてくるようだ。神様かなんかそのようなものに目線を合わせて、やつが反らすまで見つめ続けてやる。止まらない電車に乗って、ハンバーガーでもちびちび食べようではないか。眼鏡を拭きながら覚えたての口笛を吹いている。手首にだらしなく垂れる袖口が、通過電車に吹かれている。今朝なくしたボタン。小さなボタン。そうやって僕はいつも誰かをあんたと見間違う。