亡くなった母の友人の1人に、少し癖の強い人がいます。
自分の意見は正しいと信じてて、それを押し付けがちの人です。
母はよく、
「ああいう性格の人って分かってるから、私は何も言い返さなかったし、それで今でもつきあいが続いてるけど、どれだけ友達が変わったやら」
と言ってました。
確かに、公園で散歩中に私と会って話をするときも、
「あら、だめよ、そんなことじゃ。こうしなきゃ」
ってのはよく聞きました。
何でもかんでもそういう物言いをされると、ケンカする人もいるだろうし、疎遠になる人もいるだろうと思います。
なので、母とのおつきあいは続いてたけど、母からすすんで会いに行く、ということは自然となくなりました。
しかも、
「いつでも来て」
と電話がかかって来る割に、母が「この日なら」と言うと、
「その日は病院」
「その日は誰それが来る」
って毎回断られるので、これには母も腹を立てていました。
高齢なのを理由に、娘さん家族のところへ引っ越すという話も出てたし、その人自身が何度か入院されたりもして、最後の方の数年は、母もほとんど会っていませんでした。
ただ、母が亡くなったとなれば、真っ先に駆けつけてくるだろうと思われる人でした。
訃報の回覧が回ったら、すぐ来るかと思ったのに、なかなか来ません。
そのうち1ヶ月がたってしまいました。
てっきり、また入院でもされたのか、と思っていました。
下手したら、入院してる間に回覧を飛ばされて、いつまでたっても知らないままとかってことになったら厄介だなと思い始めた頃。
「お母さん、亡くなったのね! 回覧がね、今頃回って来たのよ!
びっくりしたわ、一度お邪魔していい?
今からでもいいけど、もうお昼よね」
という電話のかかって来たのが、11時45分でした。
その日は、だんなが1時出勤なので、すぐにお昼ごはんを作らなければなりません。
どうせ、来たら長話になるのは分かっているので、1時過ぎにどうかと提案しました。
「じゃあ、1時になったら家を出るわね」
ということになり、12時半からストーブも点け、1時前にはろうそくも点けたりして待っていましたが、10分過ぎても来ません。
いくら何でも、あの人の家からうちまで10分もかからないし、もしかしたらだんなが仕事に出かけないせいかと思い当たりました。
早いときは12時50分に出るだんなですが、この日は見たいテレビがあったようで、1時15分になってもまだ家にいました。
1時に家を出ると言ったのに、まだ来ないという話をしたら、だんなも、
「俺の車があるから1度家に帰ったんじゃないのか」
と言い出しました。
以前から、だんなの車を確かめ、車があったら絶対に来ない人でしたから。
だけど今回は、事情が事情だし、だんなの車があったってくればいいのに。
実を言うと、あまりに遅いので外を見たとき、それっぽい人がうちとは反対方向に歩いてく後姿を見たんです。
本当に1度家に帰ったかもしれません。
「本当に、あんたの車があると来ないかもしれないから、早く出てってよ」
と言ってるのに、この日に限ってだんなはもたもた、もたもた。
お茶を持って行こうかなとか、どのお菓子を持って行こうかなとか。
寒いかな、上着はこっちのがいいかな、とか。
「頼むから、早く出てってくれって!!!」
何度も急かして、1時半にだんなが出て行くのと、さっき見た後姿の人と同じ上着を着た方が角を曲がって来るのが同時でした。
そして、
「だんなさんの車があったから、1回うちに帰ったのよ」
って。
本当に帰ってました
もう少しで、2回目帰られてしまうところでした。
ストーブとかろうそくとか仏壇の灯りとか、全部点けて待ってるんだから、だんなの車があるくらいで帰らなくてもいいのに、と心の底から思いました。
そして、
「うちの班にはずるい人がいてね、回した日の日付を見ると、〇〇さんが1週間、××さんも1週間とめてるのよ。
過ぎた話だからって、早く回す必要はないって話じゃないわよね
それは私、違うと思うのよ!」
と、いう話を最低3回はして行かれました。
確かに、急ぎの用ではないからと言って、1週間も回覧板を止めてしまうのはどうかと思います。
訃報なら、それを見て弔問に行く人もいるから尚更です。
言いたいことは分かるけど、
「だんなの車がとまってる」
というだけで、約束の時間を無視して家に帰るあなたもなかなかよ と思った出来事でした。