私は「同じ学年で3人しか受験しなかった」高校へ進んだので、その時点で小学校、中学校の同級生とは縁が切れてしまった。

 その後の進路や連絡先などは分からない。

 あんなに仲良くしていたちーちゃんでさえそれっきり。年賀状のやり取りさえしていない。

 

 だけど、高校へ行けばそこでまた新しい友達ができるんだし、1人の人間が仲良くできる人数なんて限られてるしね。

 中学を卒業しただけですっぱり縁が切れてしまっても、それは仕方ないし、当たり前のことだと思う。

 

 実は私、小学2年生のときに引越しをしている。

 私は1人だけ転校した方だから、1年半だけ一緒の学校に通った子たちのことをけっこう覚えてるけど、当時の同級生は、私という生徒がいたことさえ覚えてないからね。

 まあ、友達なんて、人間関係なんて、そんなもんよ。と思っている。

 

 だけど1人だけ、年に数回くらい帰りの電車が同じになる、違う高校へ行った友達がいた。

 その友達、ともちゃんは、その後お父さんの転勤に伴い、遠くへ引っ越して行った。

 ともちゃんとの縁だけは、学校が変わっても切れなかった。

 私の方は一向に切れてもかまわなかったのだが、ともちゃんの方が切らなかったからだ。

 

 

 お互いにOLをしてる間は一時的に連絡が途絶えていたけど、ともちゃんが結婚し、子供を産んだ後に、年に数回電話がかかって来るようになった。

 どうやら、だんなさんが出張でいない日にかけてくるらしい。

 だんなさんがいなくて暇なのか、だんなさんの前で長電話をしていると何か言われるからいないときに、ということなのかは分からない。

 

 この電話が、私にとってはストレスでしかないのだ。

 

 まず、かかって来るのは夜の9時過ぎ。

 携帯電話どころか、わが家がまだコードレスの電話でさえなかった、「夜9時以降の電話は非常識」と言われていた時代。

 

 しかも、私は午後9時になるとお風呂に入り、さっさと寝てしまう。

 なのに9時30分とか40分とかにかかって来るから、ちょうど気持ちよくうとうとしたところを叩き起こされるわけだ。

 

 それでも、それが楽しい電話ならいいよ?

 ともちゃん、とにかく声が小さい。

 面と向かって話しているときも、最初はいいけど、途中からどんどん声が小さくなって、後半は何を言っているのか全く分からなくなる。

 

 それを、電話でやられてみ?

 10分もすれば、痛くてたまらなくなるくらいに耳をぎゅっと受話器に押し付けても、言ってることが半分どころか1割も聞き取れないんだよ!?

 それが1時間も2時間も続いたら、苦痛でしかないよね?

 

 しかも、一番最初に、小さ~な声で、

「……元気?」

 と言ったきり、無言なんだよガーン

 

 用件もなければ、自分からは何一つ、話題を提供することもない。

 試しに私が黙ってみると、30秒でも1分でも沈黙が続く。

 それでいて、ともちゃんからは絶対に電話を切らない。

 

 1時間くらいたつと私も我慢の限界になって来て、こっちから電話を切るんだけど、いつもいつもいつも私から切るのも、どういう理由で切るか、って悩むし、これがなかなかのストレスになるのだ。

 で、切らないでおこうと思うと、どんなに沈黙が続こうと、2時間たっても3時間たっても電話を切ってくれないんだよあせる

 こうなるともう、ともちゃんからの電話は恐怖でしかないよ。

 

 まあ、ともちゃんの性格を考えると、友達のいない遠くへ引っ越して、引っ込み思案だからなかなか新しい友達も作れず、子供が生まれたら、家の中に子供と2人きりでいる時間が長くなり……。

 みたいな状況を考えると、同情はするけどさ。

 

 この恐怖の電話、私が家を建て替えてからかかって来なくなった。

 電話は1階にしかないし、2階で寝るようになったので、夜の9時以降は電話がかかって来ても気づかずに寝てるかも、と伝えたからだ。

 

 それ以来、電話がかかって来ないって、夜9時より前には電話をかけられない事情があるのかどうかは知らないけどさ。

 電話がダメでも、メールという手もあるわけだしね。

 つきあいを続けるのが苦痛でしかない友達に、こちらから積極的に連絡を取らなくても、それは仕方がないと思うんだけどね汗