今日は謎のモダン館の15回目の誕生日だ。

旗揚げ当時は、まだまだ携帯電話やインターネットも普及しておらず、こうして手軽に情報を発信できるツールがある事を有り難いと思うと同時に、年月が移りゆく速さに驚いている。

思えばたくさんの危機的状況があった。
旗揚げから二年目、劇団員が僕も合わせて二人だけになった時には、さすがにうろたえた。
そんな時でも、なぜか楽しかった。
逆境好き、というか、ここから復活できたらカッコいいな!って、その後のサクセスストーリーを思い描きながら、当時の劇団員たちと乗り越えていった。

この15年で変わったものがあるとすれば、僕の体重と稽古場がある事。福岡公演を継続できている事や、長崎市民エフエムで番組を担当させて頂いている事も大きな変化だ。
個人的には、長崎市内外で市民参加舞台の演出を担当させて頂いたり、中学校へもたびたび伺った。
また、旗揚げの前年に開始した母校である海星演劇部への作品提供を、昨年限りで退いた事は、気持ちの上で大きな変化をもたらしたように思う。

15年間で最も大きな変化は大坪文が入団した事だ。

彼女が入団したのを境に、作品が完全に変化していった。
10周年の時に福岡公演に踏み切ったのも彼女の力だ。
新たな求心力が生まれた感じだ。
かと言って、船頭が二人いるわけではなく、僕の考えを踏まえてくれる。精神的支柱とでも言おうか、彼女のお腹が空いているかどうかが、その日の稽古に影響するほど影響力がある。
現在は、高校演劇祭の審査員やワークショップの講師を務めるなど、幅広く活躍している。

田村さんも凄い。
稽古場から一番遠い地域に暮らしている。ご家族のご理解が嬉しい。
豪快さと繊細さを併せ持つ役者で、ひとことで言えば、めちゃくちゃ面白い人だ。
職場では「不審者から身を守るための防犯講習会」みたいなとこで、不審者役を毎年やっていると聞く。
めちゃくちゃ面白い人だ。

川口真弓さんも入団までのいきさつが直線的で面白い。
去年の春、初めてモダン館の芝居を観た→5月にも観に行った→入団した。
速い。
しかも一年半の間に四本目の作品に取り組んでいる。
速い。
これからさらに力を付けて、さらに速い何かを期待したい。

飛永である。
旗揚げ当時はまだ京都の大学にいて、実家にバレないように小屋に駆けつけ旗揚げ公演に関わってくれた事がリアルに目に浮かぶ。
物腰も柔らかく、ちょっと怒ったらすぐに泣いてしまい困った事も多々あったが、あの当時からとにかく凄いレベルの仕事ができる音響スタッフだ。
僕の作品は飛永が入れる曲によって、完全な形になる。
だから飛永が来ないと、不安で不安でしょうがない。
共に歩んできた15年。彼は今、実家のお寺を継いで住職となり、凄まじく忙しい仕事の合間を縫ってプランを立ててくれている。
年の暮れには、飛永のお寺の除夜の鐘を、フミは必ず叩きに行ってお菓子とみかんをもらっている。

数年前、劇団員に対し「夢の話はしない事にする」と宣言した事がある。
劇団内で話すビジョンは、面白いものであれば全部具体化したい。

いつまで続けられるか分からないからハイペースで作品を生み続ける。
少しでも形にしたいものがあれば、戯曲化し上演に踏み切っていくというスタンスはこれからも変えられそうもない。

劇団に求心力がなければ、あらゆる功績と弊害で崩壊してしまう。

その核になる部分はやっぱり人だ。

ブレないでいたい。そう思いながらやっている。

25歳が40歳になっている。
15年って長いなぁ。

劇団を作る前、役者として東京で全国区を目指すか、自分の劇団を立ち上げるか迷った時期があった。

だけど決断は早かった。
劇団で全国区を目指せばいい。
野望かもしれない。
でも、夢の話はしない。

僕自身がもっと力を付けて、上手くなって謎のモダン館を引っ張って行きたいと思う。

8月10日。地元長崎で謎のモダン館を旗揚げして、ホントに良かった。

これからも宜しくお願いします!