「ベルさん、はじめまして。よろしくお願いします。」
早速、Tでマッチしたカズさんからメッセージが来た。
わ、どうしよう。開いたアプリを動揺して閉じて、また開く。
カズさんは旅行好きで、仲良くなったら一緒に旅行に行きたい、と自己紹介にあった。
「仲良くなったら」この言葉が、ガツガツせず待ってくれそうで印象が良かった。
「カズさん、はじめまして。使い方よくわからないのですが、よろしくお願いします。」
LINEみたいに既読がついたり、写真が送れないのは気が楽だ。
「そうなんですね。綺麗な方とマッチして嬉しいです」
悪い気はしなかったが、この後会う流れになったら気に入ってもらえるだろうか…
ちょっと盛れてる写真を使ったことに軽く後悔した。
「ありがとうございます。今はいいアプリがあるから笑」
送信してから、あ、自分を下げることなんか書かなきゃよかったと悔やんだ。
「そんなことないですよ。雰囲気でわかりますから」
…おおっ、いい人なのかも知れない。こんな単純なやり取りに浮かれた。
「ベルさん、マッチありがとうございます」
程なく、マッチしたもう一人のジュンさんからメッセージが来た。
モテてるわけじゃないけど、一気にあちこちから来ると錯覚してしまう。
ジュンさんは、IT会社役員だ。バツイチで自転車が趣味。
「ジュンさん、はじめまして、ベルです。よろしくお願いします」
「ベルさん、モデルさんですか?」
「いやいや、全然そんなのじゃないです。会社員ですよ」
「え~もったいない!」
「ジュンさんこそモテそうな感じですけど」
「僕は仕事ばっかりで出会いないんですよ~。あと、あの写真より少し太りました笑」
何となく寂しくて、誰かと繋がりたかった。
そんなアラフィフのささくれだった気持ちに
ササッと絆創膏を貼ってくれたような気持になった。
もう一人マッチしたシンさんからはメッセージは来なかったけれど、もともと沢山の人と接するのが苦手なベルにとっては、かえって都合が良かった。
そうか、これってすごく都合が良いシステムじゃないか。
必要以上に素性をさらすこともないし、話の流れが嫌になったらマッチを解除すれば、
お互いのフィードから跡形もなくトーク履歴が消えてなくなり、あとを追うことが出来なくなる。
思ってたより、ずっと自然なトークでマッチした二人と会話を楽しんでいる自分がいた。
「はじめてなので全然わからなくて…」
ここで初めてというワードを使う自分があざとくて笑えるけど、リアルだとなかなか言えないものだし、いつもの自分じゃないのも、気軽でいいじゃない