鈴乃や明代が住む団地は高齢者が多かったが、敷地内に点在する小さな公園では、自分たちの子供たちと同年代の子供を見かけることから、意外とこの団地内にも若い世代が入居しているように思われた。石原美樹(仮名)の家族もそのうちの一家族だ。そして美樹は鈴乃と同じ第3自治会であった。

しかし美樹が鈴乃と知り合ったのは、団地の中ではなく、団地近くにある広い敷地の公園であった。

美樹は一人娘と毎日この公園に来ていた。この公園で何人かの親子と仲良くなった。そのうちの一人の男の子Y君の母親と話していると、遠巻きにこちらをみている親子に気付いた。自分たちの子供と同年代くらいの男の子を連れ、ベビーカーも一緒の鈴乃だった。もう時間的に帰宅して夕飯の支度をしなくてはいけない。美樹は一緒に話していたY君のお母さんと「そろそろ帰んなきゃね」と、鈴乃親子の視線に気づいていても、声かけることなく解散しようとしていた。美樹は心の中で、「きっとあの人たち今日が公園デビューなんだろうけど、もっと早い時間に来ないと、皆いなくなっちゃうし、私だって声かけてあげられないよ」と思っていた。「さぁ、帰るよ」とY君に声をかけたがY君は「イヤダ~」と、公園を走り出した。美樹の娘もY君より一つ下で、Y君が大好きだったので、同じようにY君の後をついて走りまわり出した。その光景を鈴乃はベビーカーを小刻みに動かしながら見ていた。そして自分息子の耳元で何かささやいていたが、息子はそのまま立ち尽くすだけであった。

年度末でここんところずっと残業。疲れた。本当はPC立ち上げるのも面倒なんだけど一言、言いたいから・・・だってムカつく、上司の言葉にムカついた!「ムカつく!あんたみたいな上司の下で働けない!こんなとこ辞めてやる!」って机蹴飛ばして言ってみたい。でも言えない。明日から路頭に迷ってしまう(>_<)机に書類を音たてて置くのが関の山。情けない…「バカ野郎!!!」「

明代は中学2年の時、鈴乃と同じ中学に転校した。ただでさえ目立つ転校生という存在。しかも明代はスタイルもよく美形なので2年生の間では注目の的となった。そんな明代に嫉妬しているクラスメイトがいた。自分の好きな男子が明代のことを好きなのを知って、放課後、明代の机の中に「ブスのくせにナマイキ」と書いた手紙を投げ入れていた。それが誰の仕業かわかった明代は、手紙を投げ入れたクラスメイトを問い詰めると、シクシクと泣き出した。その横でその仲間と思われる二人が硬直したままうなだれていた。その中の一人が鈴乃だ。このことがなければ、その存在さえ知らないほど鈴乃はおとなしく、目立たなかった。明代は、鈴乃のことを、あまり気も合いそうにないが、同じ自治会、子供の歳も明代の長男は鈴乃の息子の1つ上で二男も鈴乃の娘の1つ上。子供の歳も近いし家も向かい合ってる棟同志だし、この先、付き合っていくようになるのだろうと感じていた。