お久しぶりです
このブログがリアバレし書かねばバラすと脅されたので描きます()
今回も痛い小説です
俺は山賊だ、欲しければ奪い抵抗すれば殺す、街を歩けば民衆は俺を避け山を歩けば獣は怯えて逃げていく、皆俺を畏怖している。
民家で金品を奪ったついでに奪った女からこう言われた
「あんたは本当に、怖いものがないねぇ」
俺はその女の首を刎ね異臭がしないよう獣道へと捨て置いた。
言ってくれるじゃないか、そう毒突いて首を蹴ったのを覚えている。
俺は、俺が怖い、自分の力や狂気がではない、人を愛せない自分が怖い。まるで自分が人道から外れており、魂のない獣であると、それを思い知ることが怖い。
俺は愛が欲しかった、人からの愛ではなく、人への愛が。
だから幾度も女を奪い養った、そして奪い取った数だけ死体を捨てた。
最初は気に入ったと思いながら奪う、彼女なら愛することが出来るのではと胸に秘め。
そんな淡い夢も死臭の中で覚める、何度も何度も絶望しながら。
ある女にこう言われた
「それは主様が海を知らないからでございますよ、海の愛を浴びればそんな気持ちも消え去りましょうに」
そして女は海へ行きましょうと意気揚々と準備を始めた、正直俺も胸が高鳴っていた。
彼女に手を引かれるまま海へゆくと
夜遅く満月の輝きで海が煌めいていた。
彼女は子供のように喜びながら海へと入った。
俺はそんなことを気にも留めずにただただ震えていた。海には魔力がある、人を惹き付け飲み込み取り込んでしまう魔力が。波が前世の未練を負った亡者の俺を引き摺りこもうとする手のように砂浜に打ち付ける。愛も無関心も希望も絶望も、すべて飲み込んでしまう沼を前に、俺は逃げ出したかった。
そんな俺に彼女が近付いてきた、俺の手を掴み海へと引こうとして。
俺にはその姿が微笑みの皮を被った悪霊に見えた、俺を飲み込みに来たんだ。
俺は恐れるがまま彼女を押し倒すと海へと頭を沈め首を絞めた。ええぃええぃ、沈んでしまえお前が呑み込まれてしまえ、そう考えるうちに彼女は息絶え目の前には海と波だけとなった。
俺は逃げるように帰った。
不思議な女だった。その後何人も女を手篭めにしたが彼女ほど長く殺さないでいられたことは無かった。
今日も女を殺した、彼女の排泄をたまたま見てしまった、穢れを感じ、こんなことも許容できない自分に悲しみながら殺した。
次の女を求め街を歩く。一組の男女が目に入った。その男は女を愛していた、街に溢れる隣にいる女を愛しているふりをするいけ好かない男とは違う、本物の愛情を男の目から俺は感じた。
女は俺の好みではなかったが奪うことにした。なぁに、飽きれば殺しまた奪えばいい。
俺が睨みつけると男は震えながらも女を庇うように俺の前へと立った。
「吾、安吾と申すもの、そなたの女気に入った。奪われたくなければ、彼女を守りたくば吾を打ち倒すが良い」
俺がこう言うと男は意を決して刀に手をかけた。
これが愛というものか素晴らしい、これ程の暴風雨に曝されてもなお輝き放つとは、何度殴っても立ち上がる男をさらに痛めつけながら俺はそう感じていた。
彼の愛の熒はまだ消えない、素晴らしい、よもやこれ程とは、俺は笑っていたと思う、遂に念願のものを目の前にしている、これを奪わずして何が山賊か。
しかしやがてその熒は命の灯火とともに消え去った。
俺は失禁している女を担ぎ山へと戻った。
そうしてこの女との生活が始まった。
この女は花や鳥を愛でるような奴だ。
あるときこの女を喜ばせようと花を集め鳥を捕らえ彼女へと与えた。
すると彼女は泣き始めた、俺が理由を問いただすと
「花は、鳥は、生きているからこそ、何者にも囚われず自由であるからこそ、大地は、自然は美しいのです」
と言った。
この女は俺の言いつけは聞くも交われば無反応であるし夜中亡き男の名を啜り泣きながら喘ぐ。雑談に興じようにも俺との会話には応えない。
こんな面倒くさい女であったが不思議と捨てようという気は起きなかった。
その態度に当初は苛立ったものの今では心地良ささえ感じる。
盗んだ金の扇子の風を感じながらも、俺は彼女の自然と戯れる姿に魅入っていた。
彼女が海へ行きたいと突然せがんできた、どうやら男との思い出があるらしい。
彼女に手を引かれながら新月の暗闇の中獣道を下っていると、毛の生えた心臓に灯火がついたかのように自らの生を、愛を実感した。木々のざわめき、地を這う蛇、草木を鳴らす狐、そして俺の手を引く目の前の女、全てが愛おしい。
やがて海につき彼女に手を引かれるがまま海に入った。足元に打ち付ける波を感じる。ああ、この手は誰のものだろうか、ああ、この波は俺の罪だ、目の前に大きな波が見える。
波一つない静かな海から朝日が昇る。この光は祝福か、断罪か。