私が以前、元Microsoft/Azure開発者と会話した際にも、Intelからの脱却は課題として言及されていた。現時点でAzure instance上ではAMD EPYC (Rome)およびNVIDIA Teslaが採用されている以外は、Intel製がそのほとんどを占めている。その他方で、AWSにおいては同様にIntel、AMDおよびNVIDIA製が採用されているものの、GravitonやNitro、Inferentia/Trainium等のAWSによる自製チップが稼働中である。GCPにおいては自製のTPUがあることを考慮すると、Hyperscaler市場で強いAzureでも自製チップが検討されているのは当然の結果とも言えるだろう。

 

短期的には、Azure上でのIntel浸透率は依然高いと私は予測しており、中長期的に見てIntel浸透率を下げたいというよりは、MiscrosoftによるAzureビジネスのROIC改善に主眼が置かれているだろうというのが私の推察だ。

なぜならば、現状はIntelの競合力は依然甚大であり、AMDの台頭が顕著であるとは言え、その交渉力によるIntel製チップの価格競争力の強さはMicrosoftにとっては頭痛の種だ。そこで、自製チップやAMD製との競争原理から採用チップコストを下げることが主要目的であろうという私の考えである。

 

製造観点からは、AMD製チップが最大手ファウンドリーTSMC 7nmプロセスノードでの製造であり、Miscorsoftもその自製チップに関してTSMCへ製造委託する可能性は非常に高いであろう。もちろん、Samsungファウンドリーも有力候補ではあるものの現状の歩留まり改善経緯を鑑みると、ROIC改善の戦略からはベクトルが外れているように感じる。よって、Windows OSおよびAzureという非常に強い需要を支えるだけの生産キャパシティーをTSMCが設備投資しない限りは、AMDやその他のファブレスとの生産キャパシティーの獲得交渉によるコスト増加のリスクを考慮に入れることは必至であって、その交渉結果によってはIntelへの依存度はそれ程下がらないという結果に陥り兼ねないと私は考えている。つまり、ファウンドリーによる設備投資の動向は継続観測が必要であろう。

 

その一方で設計観点からは、EDAを実行するための基盤をAzureは既に持っており、共同開発ベンダー向けにもそして自製チップ設計という実績から市場全体へも、AzureのEDA向け活用というプロモーションがROIC改善へと繋がるだろう。

 

 

--------------
ShinXXV
名古屋大学大学院 多元数理科学研究科修了後、
民間企業にてデータアナリスト、および同研究科にて客員教授を受嘱。