私の好きな数学や(コンピュータ言語)の厳密な定義に習い
漢文の読み方をまとめてみました。

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高校のとき、漢文が苦手でした。

返り点の種類と用法の文学的な説明が、
(私にとって)厳密でなく、
ちっとも理解できないから、
嫌になったためです。
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以下の疑問点が次々と出てきて、前に進めませんでした。

- そもそも全部の漢字に番号をつけれはいいはず。
- [一・二点]と[上・中・下点]、その他の優先度が曖昧。

などです。そして、

- 数式のように括弧をつかった方がいいかもしれない。
- そもそも中国語なんだから、その語順のまま理解したほうがいいかも。

とも感じていました。

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http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/kuzukago/kundoku.html
の説明はかなりいいのですが、やはり、私には不足です。

すでに習熟している名人が、
無意識に省略していることが、
書かれていないからです。

大切なことを、細かい例外と同じレベルで後付けして、
理解しにくくしていることに、先生自体が気がついていません。

達人ほど「そのぐらいわかるだろ」という感覚があるのだと思います。

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私のメモ

(1) 漢文は、英語と同じ語順、「主語+述語+目的語」

もちろん、細かい例外もあるし、
修飾の漢字が入り込むので複雑に見えることが多い。

(2) 返り点は、漢文の語順を日本語の語順にするための番号

日本語の語順は、「主語+目的語+述語」であるため、
番号を全部の文字に振付けることは合理的でない。

つまり、必要最小限の番号付けをしたい。

ではどうするか。

漢文の中で文の構造(意味の区切りとつながり)を示す
特別な漢字は、予備知識として知っていることにする。

そうすると、必要最小限の番号付けで済むようになる。

(3)返り点は、いくつかのグループに分け、グループに優先順位がある

数式の () [] {} のように、組合わせの優先順位がある。


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返り点の種類と用法
(http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/kuzukago/kundoku.html)に追記

白文に日本語の語順にする番号をつけたものが、訓読文。
返り点は、「五種類」のグループがある。
グループには、他のグループにたいする優先度がある。

初心者は返り点がついたものを読み慣れてから、白文(漢字だけ)を読めるようにしよう。
上級になれば、自分で返り点をつけられるだろう。

返り点の付け方に中国語文法・語順との直接の関係はなく、
他のグループとの優先度の差のみがある。
ただし、読み易さのため、高い優先度のものから利用する。

* レ点(かりがね点とも呼ばれる)

 優先度1(最優先)
 下の一字からすぐ上の一字に返って読むための符号。

 [白文]自古皆有死。
 
 [訓読文]自リ(レ)古皆有リ(レ)死。
 
 [読み下し](古より皆死有り。)

*一・二点(一・二・三・四・・・)

 優先度2
 レ点では不足するとき使う。
 二字以上を隔てて下から上に返って読むための符号。
 必要に応じて一・二・三と数字が増える。
 実際は戻るため、三・二・一とつける。
 二・一、二・一というパターンも可能。

 [白文]世有伯楽、然後有千里馬。
 
 [訓読文]世ニ有(二)リ伯楽(一)、然ル後有(二)リ千里ノ馬(一)。
 
 [読み下し](世に伯楽有り、然る後千里の馬有り。)

*上・中・下点

 優先度3
 レ点や一・二点だけでは示しきれないとき。
 実際は戻るため、下・中・上とつける。
 一ヶ所の場合は、下・上とつける。
 下・(中・)上、下・(中・)上というパターンも可能。

 [白文]不爲児孫買美田。
 
 [訓読文]不(下)爲(二)ニ児孫(一)ノ買(中)ハ美田(上)ヲ 。
 
 [読み下し](児孫の爲に美田を買はず。)

*甲・乙点(甲・乙・丙・丁・・・)

 優先度4
 レ点や一・二点、上・下点だけでは示しきれないとき。
 実際は戻るため、丙・乙・甲とつける。
 上・中・下が3個しかないので、不足するときは、甲・乙・丙・丁になる。

 [白文]必知陛下不惑於仏作此崇奉以祈福祥。
 
 [訓読文]必ズ 知(丁)ル 陛下 不(丙)ルヲ 惑(二)ヒテ 於 仏(一)ニ 作(二)シ 此ノ 崇奉(一)ヲ 以テ 祈(乙)ラ 福祥(甲)ヲ。
 
 [読み下し](必ず陛下 仏に惑ひて 此の崇奉を 作し 以て 福祥を 祈ら ざるを 知る。)

*天・地・人点

 優先度5
 レ点や一・二点、上・下点、甲・乙点だけでは示しきれないとき。
 実際は戻るため、人・地・天とつける。
 一ヶ所の場合は、人・天とつける。

*レ点と他の返り点との併用

 レ点と一点、レ点と上点、レ点と甲点、レ点と天点の合体があります。

 [白文]賣盾与矛。
 [訓読文]賣(二)ル盾ト与(一)ヲ(レ)矛。
 [読み下し](盾と矛とを賣る。)

 [白文]請以十五城易之。
 [訓読文]請(下)フ以(二)テ十五城(一)ヲ易(上)ヘンコトヲ(レ)之ニ。
 [読み下し](十五城を以て之に易へんことを請ふ。)

*下から連続した二字(熟語)に返る場合(稀な例外)

 下(この画面では右)から連続した二字(熟語)に返って読む場合は、
 二字の中間に返り点(二や下)を付ける。
 
 二字熟語は、日本語でも意味がそのまま通る熟語である。
 この二字熟語とは、中国語では修飾語と被修飾語の関係と思われる。
 
 二字の間に棒記号(|)を用いることもある。
 
 
 [白文]撃破沛公軍。
 [訓読文]撃(二)破ス沛公ノ軍(一)ヲ。
 [読み下し](沛公の軍を撃破す。)

*返り点グループの優先順位について

一・二点、上・下点、甲・乙点、天・人点は優先順位があり、入れ子構造になる。
一・二点は、内側の入れ子であり、天・人点が一番外側の入れ子。

 [数式括弧でグループ分け] [不 + {爲 + (児孫)} + 買 + (美田)]
 
 [訓読文] 不(下) 爲(二)ニ児孫(一)ノ 買(中)ハ 美田(上)ヲ 。

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それにしても、
http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/kuzukago/kundoku.html
は、よくできていますので、参考にしてくださいね。
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[経験論]

漢文の訓読文の発想の延長で、
いちいち戻る方式で英語を勉強すると、
早く読めず、話せなくなります。