2022/10/07


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季節の先回り雨が降る

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氷雨と云うには

あまりに冷たすぎて

時雨と云うには

あまりに切なすぎる

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でも

あたしには…とても似合う雨

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想雨

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*音読み【そうう】訓読み【おもいあめ】*

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秋雨の続くある日U子が遠慮がちに店の

扉を開けた

そぼ降る雨にも扉の鈴は勢いよく鳴り

その当たり前のように

鳴る鈴には開ける人の心模様を移している

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U子は決意を秘めた瞳の色を

剥き出しにしながらカウンターに座る

そんな日

U子は濃いめの珈琲を好む

あたしは既に

スタンバイしているサイフォンにロートを

差し込み火を全開にする

気持ち珈琲の粉を多めに入れ

ロートに湯が上がったら竹ベラで長めに

掻き回す

湿度の重さが珈琲の薫りを沈ませる頃

ロートの差し込み口を

濡れフキンで包み冷やし一気に

落とす

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あたしは琥珀色の珈琲が落ちるさまが好き

雑念を振り払い外連味なく

落ちてゆく

そう

それは一瞬の【刹那の戀】に落ちてゆくさまに

似ているから

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U子は「ありがとう」の言葉と共に

マイカップの取っ手を

品良くつまみ一口すすると話しだした

「ママ結婚っで女中奉公じゃないよね?」

と言いながら

「そろそろ女中奉公も返上するわ」

と言う

あたしは相変わらず「あっ!そう」の

一言だけだ

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そしてU子は

「ママのその一言が聴きたかったの」

と言い

カウンターに千円札を置き

「じゃあ」と

扉の鈴を鳴らした

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数日後U子から手紙が届いた

その内容は

同居していた義母も亡くなり子供達も独立

自分も独立する…だった

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でも…あたしは既に手紙の裏に隠された

心模様を知っていた

それは…ご主人の同級生とU子が恋仲になり

隠れ家レストランを

本牧の山にオープンしていた事を

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更に後日談

その数ヶ月後ご主人が自動車事故で

呆気なく世を去ったの

*事故か?自殺か?未だに謎*

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そして更に更に二人は紙切れ一枚でも

夫婦だったの

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たかが紙切れ…されど紙切れ

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🔷All of you🔷

冷たい雨に人想い

はるかないにしえに心を運んでみたの

たとえ

刹那の戀でも幸せと想えるのは

やはり

佳い刻だった

一瞬の積み重ねこそ永遠

日々は愛おしく日々は奇跡

今日ある日に

《感謝》

♡とうこ♡

あっ🤭だいすきな人

くれぐれも風邪に注意そして今日も

おうどんふうふう

お願い