2020/10/23

ヨコハマは…カタカナ?
と…問われ
あたしは…ええ…
カタカナが…似合う街!
と…答えた
きょうは…
しっとり…しっぽり…
よこはま
ひらがなも…似合う街!
その人は
漢字が似合う街に
住んでいる
不思議と時計の針が
12時を回ると
酔いが醒めてくる
素晴らしい体内時計
今日からクリスマス商戦が始まる
出足が好調だ
店長がケースに合わせ
包装紙を折って待機している
お客さまに商品を確認して頂き
その型どられた包装紙に
スッとケースを入れる
お待ちの間に
カスタマーカードを書いて頂く
その流れ作業は実に
お見事だった
朝礼の挨拶でも21店舗中
トップ以外あり得ない
と…あたしは言う
熱に浮かされ仲間との一体感に
トランス状態になる
今のチームワークは最高だ
店長とMが…イケイケ販売員を支え
完璧に黒子に徹している
その下支えに感謝の日々が続く事だろう
あたしも来年は役職に就く…黒子かぁ
いや…転職も視野に入れねばならない
とりあえず
トップになろう
今夜は…H社長との約束
心が躍る
何かが動く気配
今までも
感を頼りに
生きてきた…あたし
流れに任せよう
その心を見透かすように
Mから置かれた
まぁるい黒ゴム
靄る記憶が鮮明になってきた
あの日…髪を纏めて結ってくれたM
その…あたしの頸に
熱い…吐息とともに
好きだ…と…囁いていた
背中を抱かれ
一瞬…芯が燃えたあたし
違う…
あなたじゃない…と
心が勝った
Mの巻きつく腕をいなし
腑抜けのフリをし
そして…深い眠りについた

化粧鏡を覗きながら
Mが閉じた扉を見つめ
靴音が遠ざかるのを確認する
髪を梳かそうと思い
化粧ポーチの櫛を探す
あたしは今でも他人祖母の形見
つげの櫛を使っている
その櫛は永年の髪の脂を吸い
程よく飴色に変色している
他人祖母は幾夜も恋しい人を待ち
丁寧に髪をすいた事だろう…と
その…すっきりとした
襟足を不意に思い出した

終礼もソコソコに…あたしは
H社長と退勤後に待ち合わせた
最上階のBARに向かう
街には満艦飾のクリスマスツリーが林立し
1980年代定番クリスマスソングが流れている
Wham「Last Christmas」そして
山下達郎「クリスマス・イブ」
どちらの唄も…ノリは軽いが
失恋?から未練の唄
でも…この切なさが好きだ
♪きっと君は来ない…♪
♪ひとりきりのクリスマス・イブ♪
バブル期のクリスマス・イブの過ごし方は
豪華なディナー・シャンパン・ワイン
そして…ホテルに宿泊
割り勘など…とんでもない
また…そんな事を提案する
オトコ達も存在しなかった
正しく♂が最も
頑張った時代だった
程なく待ち合わせのBARに着いた
ネオンが横浜の運河に
ゆらゆらと気紛れに揺れている
即…ボーイが
S野さんでございますか…
あたし・に…近づく
マックスマーラのコートを預けながら
BARのカウンターに視線を向ける
既に…昼間と同じ席に
長い足を組みながら
昼間とは違う
黒のカシミヤジャケットを着た
H社長が座っていた
軽く…腕を上げ…笑うと
柔和に下がる目尻
そして…女性よりも…美しい指
その…醸し出す雰囲気に
あたし・は…何故か
遠い日の
蒼い人の面影を見た
あいする♡みなさま
ヨコハマは一日小雨
すこし蒸し暑いようです
惚れた男
愉しんでくださったら
♡嬉しい♡
♡とうこ♡