2020/10/16
秋の爽やかな空
数えてみたら
幾日もなかった
其々の場所で
見あげる秋の爽
せめて
せめて
心だけは重なりたい
その後…暫く…グレースは店頭に来なかった
あたしは…心配になり
プロダクションの経営者に連絡をした
代表とは本牧時代からの付き合いだったので
女の子達の宝石ショッピング他
個人的な相談事にものっていた
グレースは色々有りながらも元気に
働いていると聞き安堵した
数週間後…別のお客さまと来店したグレース
同じデザインの指輪を
右と左の手の平に乗せて重さを測る
当時のフィリピーナは皆そうしていた
そして…重い方を差し出し
オネエサン…コレ！と顔を上げ差し出す
その時…グレースの左耳下が視界に入った
青アザが見えた
グレース殴られた？と小声で聞いた
大丈夫だぁ！と俯きながら
力無い声で答えるグレース
その歪んだ笑顔に…あたしは…
鼻と眼の奥が…つ〜ん…と…なった
女って…悲しい
生まれて初めて
そう…思った
そろそろ時計が8時を指す
売り場の商品をストッポーチで数える
商品は出勤時…休憩後と様々な場面で数える
そして最終は退勤時
カチカチと刻む音
今夜は小気味よく冴える音だ
その後バックヤードでアイラインと
真っ赤なルージュのヨレをチェックする
突然…Mが扉を開けた
とうこ時間ありますか？
無い！アンド！
さんが無い！と…
あたしは繰り返した
Mは腕を乱暴に引き
あたしの手の平に髪を束ねる
まぁるい黒ゴムを置いた
あの事件の数日後…仕事が立て込みながらも
先日のお礼も兼ねてMと食事をした
河に面した創作料理店
ドレスデンのガラス皿に和と洋が
バランス良く並べられた
美しも…可愛らしい
手毬風のオードブル
しかし数字に追われていた…あたしは
摘む余裕もなくコロナビールに
レモンのスイカ割りを
瓶の口に強引に押し入れながら
一気に呑んだ
疲れからか酔いの回りが速い
そう思いながら…もう一本…呑んだ
その後も…やたら呑んだらしい
静止するMの手を
あの日…その手が
あたしの心まで
掴んだ…と…絡み
そして…水面に浮かぶ
ネオンが綺麗だけど…
あれは女の嘘つき涙だとか
訳の分からぬ愚痴やMの服装チェックを
しながらボロクソに詰り
挙句！
あんた！あたしの！
何を知ってる！
いってごらん！
何も知らないくせに…と
支離滅裂に炸裂しながら
あたしは…いきなり
テーブルに突っ伏し
眠ってしまったらしい
不覚にも覚えが無い
秋の爽
愛でる日も…わずか
どなたと
おこころ
重ねますか？
あたくし
ひ♡み♡つ
♡とうこ♡