「あいつの動きがまるで見えなかった」
「化け物だ。あいつは人間じゃねぇ」
マルオに渡された銀行強盗事件の犯人たちの供述テープ。
「まぁ、確かにイカだったからなぁ」
冗談っぽいマルオのつぶやきに、警部補が反応する。
「冗談を言ってる場合じゃないですよ。彼は何者なんです?屈強な男性4人相手に真正面突破なんて…」
「一歩間違えば人質が危なかったってか?いいじゃねぇか、助かったんだから」
「そういう問題ではないです。次回、お願いするときのためにも知っておきたいんです」
「あいつの能力…か?」
「ええ。過去幾人もの『紹介者』を見てきましたが、彼ほどシンプルに事件を解決する者はいなかった」
マルオは少し椅子を動かして、座り直しながら煙草に火をつけた。
「まぁな。あいつは特別だ。なんたって『国を潰した男』の息子だからな」
「『国を潰した男』?」
「そいつもあいつも一緒。人より少し早く動けるだけなんだがなぁ」
「人より早く…?」警部補の顔は曇ったままだ。
万国死天試合――――――――
10年に一度、本当の強者を決めるべく、
日本政府が影でバックアップをするトーナメント大会。
日本各地で県ごとに予選が行われ、
代表者1名が本戦へと駒を進めることが出来る。
ちなみに、神奈川予選は津久井湖周辺の森の中で行われている。
「だろ?」
「だろ?じゃなくて、それぐらい知ってるのが当然なんだってば」
「それでよくここまで辿り着いたなぁ。カカカ」
速人を囲んで3人の男が笑顔を浮かべている。
「マルオは元気か?」
「ああ。たまに雄二さんのことも話すよ」
「あのハゲ、まだ死んでねぇのか。カカカ」
「そんなこと言ってると罰が当たりますよ、矢部さん」
囲う三人は速人の同業者。
マルオとの親交も深いようだ。
黒いマントに身を包んだ雄二。
笑い声が独特で見た目はヤンキーの矢部。
メガネに真面目な発言のいかにも優等生、鈴木。
全員が闇の世界で活躍する『紹介者』だ。
「今回は王人も参加するようだな」
雄二がその低い声で言葉を浮かべる。
「ああ。そんな噂も飛び交ってるみたいだ」
「伝説の『紹介者』、神王人。見てみたいなぁ」
「カカカカ。なら莫大な高い金払って死天試合を観戦しに行くか…」
全員の目がギラリと光る。
「今日、勝つか、だな」
もう間もなく、予選が始まる。
