さてとうとう憧れの地、人生の夢、ノッティンガム郊外のシャーウッドの森へ向かいます。
電車で行くルートもあるのですが、景色も楽しめるし安上がりなバスで向かいます。
30km、1時間半の道のりを往復チケットで£5.80!
2階建てバスの2階に乗って、ミニチュアみたいな街並みを抜けてまた農耕地帯に入るわけですが、お店の看板に書かれた文字
「We have POKEMON STOP!」
ここにもポケモンGO。
そういえば野生ではヨーロッパでしか手に入らないポケモンがいると聞いていたのですが、結局ろくに起動しないまま道中終えてしまいましたね。
何しろ1時間半の道のりですが、見える景色がどれもかわいらしく眠くなる暇もなく。
大きな分岐点以外街灯があまりなく、道のすぐ近くまで森が迫ってきていたり。
夜間に通ったらどんな景色なんだろうなぁ。
でもイギリスのバスって乗り心地が地元のコミュニティバスのそれなんですよね。
水をなみなみ注いだコップ持って乗ったら、たぶん2/3くらいには減ります。
村から村へとバス停を過ぎ、とうとう着いたこちらが Sherwood Forest Visitor Centre。
ロビン・フッドと副官リトル・ジョンが橋の上で出会うシーンの銅像。
森の入り口にあるビジターセンターは、手持ちの本で読んでいた印象よりもずっと明るくて賑わっていて、展示館やお土産やさんや食べ物やさんがありました。
展示館の入り口には、ディズニーランドとかにあるお土産メダルの本物がありました。
£1と1ペニー硬貨をセットしてガシャコンとやって、自分でハンドルを回してペニー硬貨をメダルに加工します。
日本だと貨幣法的に本物の硬貨を引き延ばすことができないんですよね、確か。
人形展示やパネル展示などあったのですが、じっくり読んでる時間はないのでサラッと行きます。
展示館を出てすぐお土産やさん。
ここでも早速グッズを買い漁る私。
これから森の中を散策するのに、うっかり本とか買います。だって目の前に売ってるんだもん!
ここで手に入れた最高にゴキゲンな代物、それは…
タイトルは変わっていますが、ハワード・パイル著の「ロビン・フッドのゆかいな冒険(The Merry Adventure of Robin Hood)」の原書新版!!!!!
ハワード・パイルのこの書というのは、バラッドとして生まれ吟遊詩人の口伝えで伝承されてきたロビン・フッドの伝説を小気味よくまとめた、1883年出版の近代きってのロビン・フッド物語。
岩波書店から児童文学としても日本語訳版が発売されています。もちろん私の愛読書。
パイルの手になる美しいイラストはなく、文字のみの書籍ですが、この旅最高の買い物。
古いイギリス英語で書かれているから全然読める気がしないけど、気合でなんとかすることにします。
さてさて荷物も重くなったところで森内部へ。
この日の最高気温も26℃とちょうどよく、ホリデー日和のいい天気。
家族連れも多くいます。
ロビン・フッドの時代からしたら森も狭くなり木々も減ったかもしれませんが、ここは紛れもなくシャーウッドの森。
幾度となく「私は今シャーウッドの森を歩いているんだ」と声に出しては感動に浸りながら、有名なメイジャー・オークを目指します。
メイジャー・オークは、ロビン・フッドと仲間たちが集った樫の樹…ではありませんが、長い時間を生きてきた樫です。
ロビン・フッド伝説に興味のない人からしたらただの森でしかないシャーウッドで、唯一にして最大のランドマーク。
道中、「これが本物のツリーハウスだな…」と言いたくなるようなかわいらしい切り株がありました。
さて心地よい森を歩くこと20分少々。
とうとうメイジャー・オーク到着です。
予想していたよりは小ぶりでしたが、それでも立派なたたずまい。
ここは広場になっているのですが、今日はBank Holidayのためか、広場に吟遊詩人や中世の服装をした人が集まり、剣と盾を持った何人かの競技会風の見世物が行われていました。
吟遊詩人が楽器を奏でながら周囲の観客を盛りあげ、歓声を上げながら両者を応援する子供たち。
ロビン・フッド関連の書籍で読んだメイ・フェアのお祭りのような光景!
偶然とはいえ休日に訪れたのは本当によかったです。
このメイジャー・オークのそばでは、森の中で弓を射る体験ができます。
もちろん私の最大の目的でもあります。
矢6本で£3、15本で£5。
休日で人出の多いこの日は、一律矢6本£3のみでした。
一番遠い的で20ヤードですって。
順番に並び、矢を受け取る。うーん、すでに泣きそう。
ロングボウを手渡されます。
私「私アーチェリーやったことあるよ」
陽気なオッサン「おー、リカーブだねぇ? でもねぇこの弓は全然違うよ」
私「でしょうねーーw でも自信あるよ!」
陽気「おーやってみそやってみそ!」
陽気「射てるところ後ろから写真撮ってあげるよ」
私「おおありがとう」
私「いやー難しかった! 6本中2本しか当たらなかったよー!」
陽気「でも真っ直ぐ飛んだね! 最後の鹿(の置物)狙ったやつは惜しかったよー。はいカメラ」
私「わーいありがとう、どれどれ!」
何撮っとんじゃ
後ろの観光客もノリノリかよwww
最初気づかずに射場を離れて、少ししてから見たのが悔やまれます。
一緒にゲラゲラ笑って来ればよかったなあ。
それにしても、ロビン・フッドに憧れてアーチェリーまで始めた私。
シャーウッドの森の中で木漏れ日を浴びながら弓矢を射るというこの経験。
人生の夢が叶いました。
もう、言葉にできないんですよ。「シャーウッドの森で弓矢を射ました」これしか言えないんです。
思い立ってイギリス旅、とうとう果たすことができて最高に幸せ。
でも叶ってしまった夢はちょっと寂しい。
森の中を満喫したところで、ビジターセンターへ戻ります。
そして知らせれる事実、「え、次のバス? 2分前に出たよ」
またか
もうこの日はバス逃しデーでした。
しかも次のバスはやはり2時間後なので、17時40分シャーウッド発。
いかに念願の地とはいえ、これはきついなーと思っていると、駐車場の係員お姉さんから耳寄り情報が。
私「次のノッティンガム行きバス…2時間後ですよねぇ」
姉「マンスフィールドまで行けば、ノッティンガム行きのバスが30分に1本あるわよ」
私「ほんと!?」
姉「この道を下って商店のある通りに出たら、左側にバス停があるから。そこからマンスフィールドまで行けるわよ」
私「でも、ノッティンガムでシャーウッド行き往復チケット買っちゃったんですけど…」
姉「そのチケットでこの辺全部乗れるわよ。ノッティンガムまで帰れるわ」
私「おお試してみます、ありがとう」
姉「気を付けてね」
いやーいろんな人に聞いてみるものです。
ビジターセンターのインフォメーション係の人に聞いてもわからなかった情報を駐車場でゲットできるとは。
というわけで、Edwinstow High Road まで下る道。
しかしこのあたりで問題を自覚します。
洋画およびTOEIC耳になってきていたので、「聞いた英文のポイントを瞬間的に理解することができるけど、マークシートにマークする数秒後には忘れる」癖があるということを…。
だから道を聞いてもしばらく歩くと「あれ? こっちで合ってたんだっけ」になるという、地図も持たない旅行者としては致命的な欠点。
でもそこは持前の度胸となんとかなるさ精神で、そこらじゅうの人や店で聞き込みまくりの楽しい旅路。
やっぱり一人旅でないとだめですね、私。
そして道を探すうちに素敵な銅像に出会えるのもこの旅のいいところ。
ロビン・フッドとメイド・マリアンのロマンティックな像でした。
そしてようやく探していたバス停がさっき通り過ぎたバス停で合っていたと情報ゲット。
またしてもバスは行ってしまった後。
もう慣れたもので、今度こそ動かずバスを待つことに。
私「次のバスは16時40分(20分後)かー。暇だしソリティアでもやってよう」
私「んーまだ16時35分かー。まだまだ時間あるな」
バス「来たやで」
私「まじか」
うっかりしていてバスのチケットも出していなかったし荷物置いてたし、他のお客さん(1人)が乗り込んでいるうちにもたもたドタバタとスマフォしまって帽子被って…
そして閉まるバスのドア。ドアを叩きながら叫ぶ私
「Wait! Wait for me please!!」
あっこれ映画とかでよくある冴えない主人公がスクールバスに置いて行かれて、ゲラゲラ笑う生徒たちの中で一人同じクラスの女子だけが「ねぇ運転手さん待ってあげて!」って言ってくれて、ようやく乗り込んだ主人公にごみをぶつける同級生たちの間を抜けて女子の隣に座ったら「大丈夫? あいつらのことは気にしないで」とか言われるときの台詞だーーー!!!
それにしてもイギリスのバスって、時刻表に書いてあるよりだいぶ早く通り過ぎてたりするんだけど、これ通常営業なんですかね…
電車に乗るレベルの時間間隔で行ったら確実に乗り遅れるやつですねこれ。
私「(ぜぇはぁ)あ、ありがとう。あの、このチケットで乗れます?」
運♀「(にっこり頷く)」
ひゃーよかった。これでノッティンガムまで帰れるな!
気持ちの良い景色を見ながらマンスフィールドの街までバス路。
ずんずん進むなぁと思ってたら、途中の誰もいないバス停でバス停車。
どうやら時間調整のためらしいけど、バスの外に出て一服し始める運転手さん。
うーん、自由だなー。
そしてマンスフィールド到着。
どのバスに乗ればノッティンガムまで戻れるか美人の運転手さんに教えてもらい、待つこと20分。どぎついピンク色のバス到着。
なぜか二人とも頭に毛のない、運転手と交代の運転手らしき2名が乗ってました。
自信満々でチケットを見せて乗り込む私。
運1「待ってお姉さん、待って待って」
私「?」
運2「このチケットじゃバス乗れないよ」
私「ファッ!!?」
運1「どこで買ったのこれ。よく見せて」
私「えっえっ、ノッティンガムで…」
運1「Victoriaじゃん。え、どこから来てどこに行きたいの」
私「えっえっ、ノッティンガムからシャーウッドの森に行って、シャーウッドからここに来ました…」
運1「シャーウッドぉ? なんでこのチケット、なぁ?」
私「えっ、でもシャーウッドの森で聞いたんです、このチケットでノッティンガムまで帰れるって… でも別途料金が必要なのであればお支払いします…(財布出しながら)」
運1&2「「あーーーーー」」
私「????」
運2「あいつらいつもそう言うんだよー」
運1「まぁいいさ座りな」
私「えっえっ」
運2「いいからいいから(背中を押して座らされる)」
なんかよくわかんないけど乗せてくれました…
ビクビクしながら座ってたら最後に運転手2さんがバスの外で誰かに「あの人(私)Victoriaからシャーウッド行って云々」って説明してたので、なんかどっかと話通してくれたのかしら…。
そのままバス出発。交代運転手は降り、運転手1さんのみの乗務でした。
そして走り始めてすぐ
運1「♪ラーラララーラーラーララーラーーーーー」
めっちゃ歌う。
運1「♪ラーララララーラーラーラーラー」
運1「♪フンフフーンフーン ♪(口笛)~~~」
(隣の車)\パパーッ/
運1「おおい! 信号が○%#$◆З▽~~!?」(訛ってて聞き取れない)
乗客「\ドッ/」
めっちゃ喋る。
途中のバス停で乗ってきた乗客ともめっちゃ大声で会話して大爆笑してる。
なんだこれ、なんだこのフリーダムっぷりは。ロンドン市内のバスとはまた違って面白いぞこれ。
そんなこんなでノッティンガムのVictoria Bus Station到着。
降りる際に改めてチケットのお詫びと乗せてくれたお礼を申し上げたところ、運転手さん
「It was my pleasure.」
ってサラッと言ってくるのね。おいおいあんなに歌ってたのにかっこよすぎかよ。
禿げ頭とキュートな目がベン・キングスレーに似ててかっこいいですねって言いたかったんだけど、私の語彙力では伝わる気がしなかったので諦めてお礼だけ言って降りました。
なんだかんだ珍道中でしたが、時間もほどよく18時すぎ。
うん、ノッティンガム行きバスをシャーウッドで待つよりずっと早く帰ってこれた。
これならもう一つの目的地も行けそうだな! それは…
Ye Olde Trip To Jerusalem
ノッティンガム城のすぐ下にあるこちら、イングランド最古のパブ(と言われている)パブです。創業1189年。
ロビン・フッド伝説にも出てくる獅子心王リチャード1世が即位した年ですね。
改装中か何かで通常の出入り口は使えなかったので、裏口から入ります。
店の外まで結構賑わっています。
事前の調べではハンバーガーとか頼んでた人もいたけど、ロビン・フッド伝説の土地を訪れているわけだから、タック和尚が食べていたようなミートパイとか、ウィル・スタトレイが注文していたシチューとか、そういうの食べたいなぁ…なんて思っていると店員さんが「こっちのメニューの方が多いよ」と別のメニュー出してくれて。
シチューかパイかそんな感じの食べたいですって聞いたら、ビーフパイをおすすめしてくれたのでそれとラガーを1パイント。
私「あんまり量多いと食べきれないんですけど、パイってどれくらいのサイズです?」※これまでの2日間で学んだ
店員「んーと、これくらいの大きさで、これくらいの高さかな(身振り)」
私「あっそれなら食べられそう。じゃぁそれで!」
店員「チップス or マッシュ?」
私「マッシュで」
私「わくわく」
いやパイの大きさは確かにそうだけどさ
何ですかこのマッシュポテトの量は。芋2個ぶんくらい軽くあるんじゃないの。
しかも生クリーム使ってしっかりマッシュしたとってもおいしいマッシュポテトでクリーミーではないですか…
つけあわせのサラダはベビーキャロット丸ごと5つと大量の豆。
一人旅だと食べ物の量がつらいですな…
でもめちゃくちゃおいしいんですこのビーフパイ。
中のビーフはしっかり味でとろっとろ煮込み。
にんじんも甘くやわらかく、マッシュポテトは前述の通り。
これはいくらでも食べられちゃう!
わけがない。
次第に圧迫されてくる胃、当たり前のように出てくるパイントのビールって結構多いぜこれ…
最初の笑顔はどこへやら、なんとか口の中に押し込んでいると、話しかけてくる陽気なオッサン。どこに行っても陽気なオッサンだらけだなこの旅。
オッサン1「何食べてんの?」
私「ビーフパイです。めっちゃうまいですよ」
オ1「へー! 頼もうかな」
私「おすすめします」
オッサン2「彼女何食べてるって?」
オ1「何だっけ」
私「ビーフパイです」
オ2「マジか。別なの頼んじゃったな」
オ2「どこから来たの?」
私「日本からです」
オ2「オーー! ジャパーン! ロッポンギーー!」
私「六本木!?」
オ2「イチ、ニー、サン、シー、ゴー、ロク、シチ、ハチ、キュウ、ジュー、Right?」
私「うんあってるあってるどこで覚えたんです?」
オ2「なぁに、以前六本木で酔っ払ったことがあってね」
私「どういうことだ」
割とどこでも酒さえあれば知らないオッサンと仲良くなるスキルがあり、しかも一人旅なので、話しかけられれば弾む会話。
オッサン2「俺たちはカナダから来たのさー!(4人組)」
別グループのオッサン3「僕らはドンカスターからだよ」←誰も聞いてない
オ2「こっち来てもう1杯飲みなよ!」
私「いやもうおなかいっぱいで…」
オ2「ROPPONGIーーー!! KANPAーーーI!!」
私「聞いてねえなおい」
なんだかんだで盛り上がり、ロビン・フッドのファンでさっきシャーウッドの森で弓を射たと情熱込めて話してハイファイブしたり、記念撮影したり、気付けば19時30分すぎ。
今日中にロンドンに戻ってホテルまで帰らなければ。
私「次のロンドン行きの電車何時かわかります?」
オ3「確か20時5分だよ」
私「まだ30分あるな」
オ2「5分も歩けば駅だよ! ん? 5分発の電車に5分で歩いていくんだね!! You go to 5(GO)だね!! ワッハッハッハ!!」
オ2「おい知ってるか日本語で5(five)は5(ご)って言うんだぜ! で彼女は5分の電車に乗るんだ! Go to go! Go to goだよワッハッハッハ!」
私「うんうんナイスジョークナイスジョーク」
他「(シーン)」
オ1「英語どこで覚えたの?」
私「ほとんどハリウッド映画ですよ」
オ1「大したもんだ」
オ2「どっちかっていうとロックスターみたいな喋り方だね!」
私「(あっここは!) Hell no!」
\ドッ/
ぃよっしゃー言ってみたぜ『エンド・オブ・キングダム』でバニングが大統領に向かって言ってた言葉!
なんかウケ方といいあんまりいい言葉じゃない気がするけどみんなゲラゲラ笑ってるからいっか!!
そして19時50分。まだ少々時間の猶予はあったけど、念のため早めに辞去することに。
まだ旅の半分だけど、こんなに盛り上がったお酒の場はここが一番でした。
駅へ向かい、20時ちょうどに到着。発車時刻を見たら次は20時2分。
危ねぇ!!!
ドンカスターのオッサンの言葉を信じて20時5分のつもりで出てたら乗り遅れてたよ!! 次は30分は待たなきゃだよ!!
ギリギリ乗り込んだ電車でロンドンへ戻ります。
ロンドンからノッティンガムに来るときの電車は背中方向に進んだので、ロンドンへ向かう列車は前向きに進むに違いない。
と、思ったんですけどね。
あー、やっぱり後ろ向きに走るんです???
まぁいいんですけどね。
そして行きにはなかった「チケット拝見」。
記念のチケットにボールペンでぐりぐりされたけど、仕方ない。
ロンドンに戻って、電車を乗り継いでホテルに戻ったのは23時。
ずいぶん遅い時間になってしまいました。
明日はもうちょっと早く帰ろうね。