霧のような雨は朝から止むことを知らない。
路地の埃を含んだようなにおいもいつの間にか消えてしまっていた。
頭の奥がずくずくと違和感を覚えるのは最近髪の結い方を変えたせいではないだろう。
格子窓の間から見えるお向かいの家の前の八仙花をぼんやりと眺めていると玄関の戸が静かに開いた。
 
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「ごめんやす……奥方はんはおられますか?」
 
散切りの頭から雫を垂らす男に見覚えはなかった。
自分のところに訪ねてくる人間など最近はほとんどいない。
せいぜいが近所の噂好きなおかみさんたちくらいなもので、少し身構える。
 
「あの、どちら様でしょうか?」
「藍屋のもんどす。旦那はんがこれを……」
 
訝しげに尋ねると男は上品な和紙に包まれた文をそっと懐から差し出した。
几帳面に折りたたまれたそれを広げると懐かしい手跡が目に飛び込んできた。
懐かしいと胸がじんわりとしたのもつかの間だった。
息災と書かれていた次の文章に息が止まった――
 
* * *
 
「何もそないに血相変えて来ぃへんでも……」
「だって血相変えるなっていうほうが無理に決まってます。藍屋を……藍屋を閉めるだなんて……」
「はは。早々にここを出ていってしもたあんさんに言われたあらへんけど」
「そ、それは……秋斉さんだってあのときは喜んでくれたじゃありませんか」
 
あのときというのは紆余曲折あって旦那さまのところに身請けされたときのこと。
良くしてくれた秋斉に申し訳なくて泣いてしまった私の背中を秋斉さんは優しく押してくれた。
 
―‐つらいときはいつでも戻って来よし。わてはいつでもここにおるさかい。
 
「堪忍。わても気張ったんやけどな。世の中色々と変わってしもたんや。もう藍屋みたいな小さな置屋はようやれへん」
「そんな……」
「せやけどな、店を閉めてもあんさんやほかの娘ぉたちを大切に思う気持ちはちぃとも変わらへん。
それだけは信じといて欲しいのや」
「秋斉さん……」
 
 
◇ ◇ ◇
ほぼ1年ぶりのご無沙汰です。
皆さまお元気にお過ごしでしょうか?
わたしはなんとか生きております。
 
もう御存知だと思いますが「艶が~るサービス終了」のお知らせが出てしまいましたね。
もう何年も更新されていないコンテンツ、正直いつそのお知らせが来てもおかしくないのかなとは
思っていましたがその時がくればやはりショックは大きいものですね。
 
艶ががなければ紫乃としてこのブログを書くことはありませんでしたし
京都や尾張のギャラリーに参加することもなかった。
艶ともさんやわたしのブログを読んでくださった読者の方にも出会えなかったし
本当にたくさんのものを(いい意味でも悪い意味でも)与えてくれたコンテンツでした。
艶がーる、本当にありがとう!
 
終了まではあと半年あるそうです。
運営さんでは要望など受け付けてくださっているようなので
私も少しだけお願いをしてきました。
(シナリオ本、イラスト集を作って欲しいとか}
みんなの声が何かを動かすかもしれません。
もしよろしければこのブログを読んでくださった貴女も送ってみませんか?
 
 
あぁ、それにしても何かしなければと思い久々に5分間センテンスやってみたのですが
文章ダメダメで凹んでますショボーン